PL法施行の影響と企業の対応策

 

製造物責任(PL)法は、製品の欠陥によって人の生命、身体又は財産に被害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造業者等に対して損害賠償を求めることができるとする法律であり、平成6年7月1日に公布され、平成7年7月1日に施行されました。

(1)PL法施行の影響
今回の法施行によって、一部では、米国のような濫訴や賠償金額の高額化を懸念する声もありますが、米国と我が国では司法制度や社会制度が大幅に異なることから、直ちに我が国が米国と同じ様な状況に陥ることはあり得ないと考えられます。
1988年以降製造物責任法が施行されている欧州諸国では、現在までのところ、それに伴う訴訟件数の増加等の大きな変化は報告されていません。
 したがって、EC型と言われる我が国の製造物責任法が施行されても司法制度等に大きな変更がない限り、短期的に見れば訴訟が大幅に増加するなどの影響はあまり無いと予測されます。
  しかし、製造物責任法の施行に伴うアナウンスメント効果により、消費者の意識は確実に変化していると思われますので、潜在的な製品クレームの顕在化に備え適業として対策を講じることが必要です。

(2)企業において講ずべき対策
上記の海外の施行後の状況を踏まえ、企業は

 

A. PL問題に巻き込まれた場合の損害てん補
B. PL危険回避の対策
C. 消費者クレームに対する社内の対応組織の確率を図る必要があります。

A.については、「国内PL保険(生産物賠償責任保険)」の採用につき検討することが必要となります。なお、PL法においても、従来と同様に企業の損害をカバーすることが可能であり、損害補填措置ととして有効な手段です。
また、B.とC.については、法が施行された欧米諸国でも、製品の取扱説明書の改善や製品回収の件数の増加、製品事故の予防について企業の対応が進んでいることから、日本企業においてもPL予防対策の推進が重要になるのは明らかです

PL判例一覧表

事件名 被告・被控訴人 提訴(控訴等)の内容 判決内容
テレビ出火炎上事件(大阪市) テレビ製造業者 テレビからの出火による火災事故で、娘と財産を失った両親が、製造業者に対し、製造物責任等に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件両親と製造業者との間に直接の契約関係はなく、安全配慮義務違反も認められないから、債務不履行責任は認められない。
②本件テレビの通常有すべき安全性とは、通常の合理的利用期間内に通常の方法で利用している限り発火事故を起こさないような安全性を意味するところ、本件テレビは、本件両親が、その合理的利用期間内に通常の使用方法で使用していたにもかかわらず出火し、その結果本件火災に至ったといえるから、本件テレビは通常有すべき安全性を欠如していたといえ、製造業者には安全性確保義務違反の過失が推認され、同推認は覆らないとして、不法行為責任を認めた。
混合ワクチン(MMR)予防接種禍事件 各事件被告:ワクチン製造者及び国 乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(MMRワクチン)の予防接種を受け、副反応により死亡した被害児1、2の各両親、重篤な後遺障害を残した被害児及びその両親が、国及びワクチン製造者に対し、損害賠償等を求めた事案。 ①訴訟上の因果関係の立証は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつそれで足り、その判断には記録上現れた一切の事情を総合考慮すべきであり、具体的には各被害児らのMMRワクチン接種までの生育状況、MMRワクチン接種後の状況、MMRワクチン接種の副反応等に関する専門的知見等を総合考慮すべきである。
②死亡被害児1は、母親等から感染したインフルエンザに起因するライ症候群により死亡したから、同人の死亡とMMRワクチン接種との間に因果関係は認められないが、死亡被害児2については、MMRワクチンの接種と病変及び死亡との間に経験則上高度の蓋然性を認めざるを得ないとして、因果関係を認めた。
③MMRワクチン接種の14日後の異常発生、その後の重篤な病変発生について、後遺障害被害児の髄液からワクチン株由来のムンプウイルスが検出されたこと等から、後遺障害被害児にはMMRワクチン接種によりその病変が生じたことの高度の蓋然性が認められるとして、因果関係を認めた。
④製造承認を受けた製造方法と異なる製造方法で生ワクチンであるMMRワクチンを製造するという危険な行為をした製造者には、副反応の発生及び重篤結果につき予見可能性があるとして過失責任を認め、また、国は、ワクチン製造者が薬事法により承認を与えた製造方法を遵守してワクチンを製造するよう監督する条理上の義務を怠り、指導監督義務を尽くさなかったとして、指導監督義務違反による副反応の発生による被害の結果につき予見可能性を認め、過失責任を認めた。
⑤は判断せず。
⑥予防接種法16条1項の規定による厚生大臣から受けた認定は、予防接種の違法性とは関係がないから、同認定時点から消滅時効の進行が開始されたとはいえないとして、消滅時効を否定した。
冷凍庫発火事件 電気機器製造会社 電気機器製造会社(本件冷凍庫製造者)が製造販売した業務用冷凍庫(本件冷凍庫)から発火し、レストラン店舗兼居宅が半焼したとして、レストラン経営者らが、本件冷凍庫製造者に対し、損害賠償を求めた事案。 ①本件冷凍庫は、鋼鉄製であり、本来外部からの火で燃える蓋然性の低いものであるのに冷凍庫それ自体が焼損していること等の間接事実から、本件火災は本件冷凍庫を発生源とすることを推認でき、推認を覆すに足りる反証がされていない上、食材の冷凍保存という本来の使用目的に従って使用されていたにもかかわらず発火したものであるから、本件冷凍庫は、本件火災当時、通常有すべき安全性を欠いていたといえる上、特段の事情も認められないから、本件冷凍庫製造者により本件冷凍庫が流通に置かれた時点において欠陥が存在していたものと推認すべきである。
②本件冷凍庫製造者が調査、研究を尽くしてもなお本件火災による損害の発生を予見できなかったと認めるべき特段の事情は存しないから、本件冷凍庫製造者は本件火災による損害の発生について予見可能であったと認められ、本件冷凍庫について流通に置かれた時点において欠陥が認められる以上、本件冷凍庫製造者が本件冷凍庫を流通過程に置くに際して、安全性確保義務の過失があったものと推定でき、推定を覆すに足りる特段の事情は認められないから、本件冷凍庫製造者には安全性確保義務に違反した過失がある。
漁船ソイルタンク中毒死亡事件 漁船所有会社及び船舶用浄化槽製造会社 ソイルタンク修理中に硫化水素中毒により死亡した被害者の遺族らが、漁船の所有会社及び本件ソイルタンクを設計、製造した製造会社に対し、主位的に共同不法行為に基づく損害賠償を、予備的に、所有会社に対し、安全配慮義務違反による損害賠償を求めた事案。 ①本件事故は、本件船舶の消毒室排出弁、接触酸化槽排出弁及び仕切弁の各取替えによる本件ソイルタンクの不具合に起因するもので、同タンク内の汚泥水から致死量の硫化水素ガスが発生したことにより被害者がガス中毒になって死亡したものである。
②本件事故は、硫化水素発生の危険性につき本件船舶の安全担当者に十分な安全教育を施さなかった所有会社の組織としての落ち度と安全担当者の不適格性があいまって生じたものであるとして、同社の不法行為責任を認める一方、本件ソイルタンク自体に当初から設計・構造上の欠陥があったとはいえないなどとして、製造会社の不法行為責任を否定した。
③異常事態発生にもかかわらず、担当者に報告をせず漫然と作業を継続しようとして本件事故に遭遇した被害者にも若干の過失があったとして、10%の過失相殺を相当とした。
血液製剤移植片対宿主病罹患死亡事件 血液製剤の供給等を行う法人A、患者が手術を受けた病院を開設、経営する医療法人B及び医療法人Bの理事長C 冠動脈バイパス手術等に際して輸血を受けた患者が手術から25日後に移植片対宿主病(GVHD)により死亡したことについて、患者の遺族らが、輸血として投与された濃厚血小板に放射線照射をしなかったことによりGVHDが発症し、これが原因で患者が死亡したものであるとして、放射線照射をしないで血液製剤を供給した法人Aに対し不法行為責任を、照射をしない血液製剤を輸血した医療法人B及び医療法人の理事長Cに対し診療契約上の債務不履行ないし不法行為責任をそれぞれ求めた事案。 ①血液製剤に放射線照射をすべきか否かは、医療行為として医療現場における担当医師の判断に任せられるべきであるから、Aにおいて、血液製剤に放射線照射すべき法的義務及びBに照射をした血液を供給すべき法的義務があるとはいえない。
②少なくとも本件患者のようなハイリスク患者に輸血をする際には、放射線照射を実施すべきか否かを判断すべき注意義務があるところ、本件患者の主治医は本件手術当時、本件放射線照射の必要性の判断を怠った過失があり、その結果、放射線照射が実施されない血液製剤が本件患者に輸血されたことにより患者が死亡したから、主治医の過失と本件患者の死亡との間には相当因果関係があり、Cは主治医の使用者として、又は死亡患者の遺族らと診療契約を締結した当事者として、またBは、債務を承継したものとして、遺族らに対し損害を賠償する義務を負う。
③B及び主治医は、輸血後GVHDの危険性及びその予防法につき十分な知見と認識を有していたにもかかわらず同医師の判断で本件患者の輸血血液に放射線照射をしなかったのであるから、Aが輸血後GVHDの危険性についての警告表示義務を怠ったとはいえないのみならず、義務違反があったとしても、これによって本件輸血後GVHD発症との因果関係も認められない。
集塵機出火炎上事件 本訴被告:PL保険契約上の被保険者の地位を取得した機械製造販売業者
反訴被告:PL保険契約を締結した保険会社
機械製造販売業者が製造販売した集塵機の納入先で発生した火災事故につき、同事故発生を原因として中小企業PL保険契約に基づく保険金請求権が発生しているか否かをめぐり、保険会社が本件業者に対して債務不存在確認を求め(本訴)、本件業者が保険会社に対して保険金の支払を求めた(反訴)事案。 ①本件火災は、本件集塵機の内部発火を原因として発生したものであると認める余地はない。
②③は判断せず。
航空機墜落事故死傷事件 事故機運航会社(台湾法人)及び事故機製造会社(フランス法人) 台北から出発した旅客機が目的地である名古屋空港への着陸降下中、同空港誘導路付近着陸帯内に墜落して機体が大破し、乗客及び乗員が死傷し、手荷物等が滅失した事故について、死亡した乗客及び乗員の遺族並びに生存被害者1名が、事故機運航会社(台湾法人)に対しては、ワルソー条約17条、18条による損害賠償請求権又は不法行為に基づき、事故機製造会社(フランス法人)に対しては、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件事故被害者の本件運航会社との運送契約につき、ワルソー条約の適用があり日本以外の国が管轄地となる場合であっても、本件運航会社にとって、併合審理がされることで多くの国で応訴する負担が減少することからすれば、ワルソー条約は併合管轄を原因とする国際裁判管轄につき一般の国際裁判管轄法理に委ねているといえるから、民訴法上の併合請求の裁判管轄が日本にあり、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に合致する事情のある本件では、日本の裁判所に国際裁判管轄があるということができるし、本件運航会社との運送契約につきワルソー条約の適用がない場合であっても、不法行為地は日本であるから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらすであろう特段の事情のない本件では、日本の裁判所に国際裁判管轄があるといえる。
②本件製造会社に対する訴えは本件事故機に欠陥があったとして製造物責任に基づく損害賠償を請求するものであり、不法行為に関する訴えに該当するところ、本件における不法行為地は日本国内であるから、裁判管轄は日本にあると認められ、わが国の国際裁判管轄を認めることによりかえって当事者間の公平、裁判の適正・迅速といった民事訴訟の理念に反する結果を生ずることになるような特段の事情は認められないとして、国際裁判管轄を認めた。
③本件事故による損害は、本件運航会社乗員らの無謀にかつ損害が生ずるおそれがあることを知りながら行った行為により生じたと認められるから、改正ワルソー条約25条の適用により、本件運航会社は本件事故により生じた損害全額を賠償する責任がある。
④本件運航会社との間の運送契約に改正ワルソー条約の適用がない場合であっても、本件事故は本件運航会社乗員らの無謀かつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った行為によって生じたものであることが認められるのであるから、本件運航会社の過失及びその過失と損害との因果関係は当然に認められ、本件運航会社は不法行為責任を負う。
⑤本件事故機に設計の欠陥があるといえるか否かについては、資格を有する者であれば当然有する操縦に関する最低限の基本的知識及び技能に基づいて操縦されることを前提にして、通常有すべき安全性を欠いているかどうかによって判断すべきところ、本件事故機の採用する設計が内包するアウトオブトリムの状態を招くという危険は、航空機の墜落という重大な結果を生じる可能性があるものの、そのような重大な結果に至る蓋然性は極めて低く、通常は、操縦に関する最低限の基本的知識及び技能を有する者であれば重大な結果を防止することも可能であるから、本件設計が欠陥であるということはできない。
⑥本件事故機は、操縦輪の重さがアウトオブトリムの状態の発生を示すものであるところ、アウトオブトリムの状態を知らせる方法としては十分なものというべきであり、また、操縦輪の重さがアウトオブトリムの状態を操縦士に知らせる最も直接的で有効な警告であるということができるから、本件事故機は通常有すべき安全性を有しており、本件事故機について、機体がアウトオブトリムに陥るような危険な状態を操縦士に的確に伝達する機能が欠けているという欠陥は認められない。
航空機墜落死亡事件 航空会社及び航空機製造会社 墜落して大破した航空機に搭乗していて死亡した者の妻子が、航空会社に対しては、事故機の乗員らの過失により墜落したとして不法行為に基づく損害賠償を、航空機製造会社に対しては、本件事故機には欠陥があるとして製造物責任に基づく損害賠償を求めた事案。 ①不法行為地が我が国であることは明らかであり、わが国の国際裁判管轄権を認めることでかえって当事者間の公平、裁判の適正・迅速といった民事訴訟の理念に反する結果を生ずるような特段の事情は認められないとして、製造会社に対する訴えにつき我が国の国際裁判管轄権を認めた。
②航空会社及び本件乗員らが、損害防止に必要なすべての措置をしたこと又は同措置をすることが不可能であったことを証明したとはいえないから、ワルソー条約17条所定の過失推定は覆らないとした上で、本件事故及び損害は、副操縦士の運転行為により生じたとして因果関係を認め、航空会社の不法行為責任を認めた。
③副操縦士の運転行為は、無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った行為といえ、改正ワルソー条約25条が適用されるから、同条約22条の責任制限規定は適用されない。
④本件設計は他の採りうる設計と比較しても不合理とはいえず、最も直接的で有効な警告機能も認められることなどから、本件事故機に欠陥は認められない上、製造会社としては、本件副操縦士がしたような異常で無謀な過失行為の発生まで考慮して航空機の安全を確保するよう設計、製造をすべき義務はないとして、同社の責任を否定した。
学校給食O157食中毒死亡事件 市の設置管理する小学校に在学していた児童が、学校給食を喫食した結果、病原性大腸菌O157に感染して死亡したとして、死亡した児童の両親が市に対して製造物責任法3条、債務不履行責任、国家賠償法1条ないし憲法29条3項の類推適用に基づく責任等を原因として、損害の賠償を求めた事案。 学校給食が学校教育の一環として行われ、児童側にこれを食べない自由が事実上なく、何らかの瑕疵等があれば直ちに生命・身体へ影響を与える可能性があること等からすれば、学校給食について、児童が何らかの危険の発生を甘受すべきとする余地はなく、学校給食には極めて高度な安全性が求められており、学校給食の安全性の瑕疵によって食中毒を始めとする事故が起きれば、給食提供者の過失が強く推定されるところ、本件児童に提供された給食は提供時点においてO157に汚染されており、その安全性に瑕疵があり、それを喫食したことによって本件児童は死亡したのであるから、市には過失が推定され、他に過失の推定を覆すに足りる証拠はないとして、市に国家賠償責任を認めた。
プロパンガス漏れ火災事件 プロパンガス装置設置供給業者 ガスボンベ工事における過失により、ガスコンロに点火したところ元栓口付近から火が広がり、戸外ガスボンベが爆発して自宅が全焼したとして、自宅所有者が、本件工事を行ったプロパンガス装置設置供給業者に対し、債務不履行責任、製造物責任等のいずれかに基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件火災は、ガス漏れの詳細こそ不明であるが漏れたガスに引火して生じたものと認められる。
②ガス漏れ警報器とガスメーターに関する本件工事をした訴外会社は本件装置設置供給業者の履行補助者であり、訴外会社の担当者の不注意により本件火災が発生したと推認されるから、本件装置設置供給業者は債務不履行責任を負う。
③土地工作物に瑕疵があったとの主張を裏付ける証拠はないとして本件装置設置供給業者の土地工作物責任を否定。
④製造物責任を認めるに足る的確な証拠はないとして本件装置設置供給業者の製造物責任を否定。
⑤本件担当者らは本件装置設置供給業者の下請けである訴外会社の従業員として本件工事をしたものであるところ、注文者である本件装置設置供給業者に民法716条但書所定の過失があったことの主張立証はなく、本件工事の施工の際、同担当者らが民法715条所定の「業務の執行」についてなしたことの立証もないとして、本件装置設置供給業者の使用者責任を否定した。
食品容器裁断機リフト頭蓋(がい)底骨折死亡事件 甲事件被告:油圧裁断機製造業者
乙事件被告:死亡した女性を雇用していた合成樹脂成型加工販売業者
プラスチック製食品容器を裁断して自動搬送する油圧裁断機による裁断作業従事中に、女性が食品容器を積み重ね搬送するリフト上のコンベアと天井部分との間に頭部を挟まれ死亡した事故につき、同人の内縁の夫とその子供らが、油圧裁断機製造業者に対しては製造物責任法3条に基づく損害賠償を求め(甲事件)、同女性を雇用していた合成樹脂成型加工販売業者に対しては債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償を求めた(乙事件)事案。 ①本件裁断機につき、荷崩れを直す対策があること等からすると、直ちに欠陥があるとはいえないこと、また、リフト付近にセンサーを設置などすることまで本件製造業者に法的に要請されていたとはいえないこと、さらに、本件取扱説明書は、表示ないし警告上の安全性を欠くとはいえないことからすると、本件裁断機は通常有すべき安全性を欠くとはいえないとし、製造物責任法上の欠陥を否定した。
②本件雇用会社には、荷崩れについて事前対策を十分せず、対処方法、安全教育等について作業者に十分な指導・教育をしていなかった注意義務違反(過失)が認められ、同過失が一因となり本件事故が発生したとして、本件雇用会社の不法行為責任を認めた。
③本件事故は、被害女性が本件リフトの上昇直前に同リフト上に上半身を入れた行為と本件雇用会社の過失が重畳的に作用して生じたものであること、被害女性は本件リフトの上昇につき当然熟知していたと推認されるから上半身を入れないよう注意すべきであったことなどから、7割の過失相殺を認めた。
人工心肺装置ポンプチューブ亀裂事件 市及び装置製造販売会社 市が設置した病院において心臓の手術を受けた際、使用されていた人工心肺装置を構成する送血ポンプ内チューブに亀裂が生じ、そこから空気が血液に混入して脳梗塞を引き起こし脳機能障害等の後遺障害を負ったのは、ポンプを操作していた病院の臨床工学技士の注意義務違反と装置の製造販売会社の過失が競合した結果であるとして、障害を負った男性患者が損害賠償を求めた事案。 ①本件ポンプ製造販売会社はその安全性の確保について高度の注意義務を負っており、チューブに亀裂が生じ得ることが予測できたのであるから、亀裂が生じにくいものに改良する等すべき注意義務があったにもかかわらず、本件ポンプの構造に何ら改良を加えることなく放置した結果、本件事故を招来したものとして注意義務違反を認め、本件ポンプ製造販売会社の責任を肯定した。
②本件ポンプを操作する臨床工学技士に対し、チューブに亀裂が生じることがあることを予見して、そうした事態が生ずることがないようチューブ等を操作することを期待することは極めて困難であり、臨床工学技士に責任は認められないとして市の責任を否定した。
湯沸器不完全燃焼一酸化炭素中毒死事件 湯沸器製造販売業者、ガス供給業者、湯沸器の設置点検業者2社及びアパート賃貸人(一審被告ら) アパートの賃借人が、湯沸器の不完全燃焼により一酸化炭素中毒死した事故に関し、その相続人が、湯沸器の製造販売業者、ガス供給業者、湯沸器の設置点検業者2社、賃貸人に対して損害賠償を求めたことにつき、本件供給業者以外の責任を否定した第一審に対する控訴審の事案。 ①本件湯沸器は別会社製造であり、本件製造業者は販売しただけであるから製造物責任は問題とならず、本件湯沸器の販売当時に瑕疵があったとは認められないから同社に販売者としての賠償責任はない。
②排気扇が停止した場合におけるガス供給自動遮断装置の設置につき実質的な点検・調査義務を負っていた本件供給業者は、極めて容易に確認できる点検を怠っており過失があるから、賠償責任が認められる。
③設置当時に本件湯沸器の強制排気装置に不作動の瑕疵があったとは認められず、また、本件湯沸器の設置点検に関係した事実もないから、本件点検業者らに賠償責任はない。
④本件賃貸人に、使用期間が長期であることを理由として当然にガス器具買替義務があるとはいえず、本件供給業者の点検が不十分であることを認識できた等の特段の事情がない本件では、入居者が変わったことを本件供給業者に連絡し、同社に点検・調査してもらうことによって安全配慮義務を尽くしているといえるから、本件賃貸人に賠償責任はない。
コンクリートポンプ車ブーム折損負傷事件 コンクリートポンプ車の製造会社 コンクリートポンプ車のブームが折損して落下し作業員が受傷する事故が発生したため、保険契約に基づき、同車の運転手が作業員に対して負担すべき損害賠償金を支払った保険会社の管財人が、本件車の製造会社に対し、求償金を求めた事案。 本件ブームが折損したのは溶接の欠陥が原因である蓋然性が高い上、もともとコンクリートポンプ車のブームが製品としての安全性を備えていると期待されていることによれば、折損した本件ブームを製造した本件製造会社には、民法709条の過失がある。
異物混入ジュース喉頭(こうとう)部負傷事件 飲食物製造販売(ファーストフード)会社
オレンジジュースを飲んだ際、その中に入っていた異物によって喉に傷を負ったとする女性が、製造物責任、債務不履行(売買契約における安全配慮義務違反)、不法行為に基づいて、ジュースの製造販売会社に対して損害賠償を求めた事案。 吐血を訴えた直後の本件女性を診察した医師が、救急車を呼んで国立病院に受診するよう勧めていること、国立病院の医師も、喉頭ファイバースコープで粘膜の下に出血を認めて診断書を書いていることから、本件女性は診断書記載の咽頭出血の受傷をしたと認められる。
②本件受傷は本件ジュースに混入していた異物を原因としており、本件ジュースを飲んだ人の喉に傷害を負わせるような異物が混入していたということはジュースが通常有すべき安全性を欠いていたということであるから、本件ジュースには製造物責任法上の「欠陥」があると認められる。
輸入漢方薬腎不全事件(1) 医薬品等輸入販売業者 主婦らが、内科医から処方された冷え性患者に効能があるという漢方薬を服用したところ、慢性腎不全に罹患(りかん)したとして、同漢方薬を輸入販売した医薬品等輸入販売業者に対し、主位的に製造物責任に基づき、予備的に不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件主婦らに対する本件製造物たる漢方薬の投与期間の日数比率は低いから、本件主婦らが腎不全に罹患したことが本件製造物の服用のみに起因するとはいい難く、本件製造物を服用しなければ腎不全に罹患しなかったともいい難いとして、本件製造物の服用と腎不全の罹患との間の因果関係を認めず、製造物責任法上の責任を否定した。
②本件業者は、本件主婦らによる漢方薬服用開始時までに、同漢方薬の服用による腎機能障害の発生につき有効な調査・研究をせず、長期使用による腎機能障害の発生可能性につき添付文書に記載するなどの指示・警告もしておらず、予見義務及び結果回避義務を尽くしていなかったといえるから、本件主婦らが服用した漢方薬を輸入・販売するに当たり、安全性確保義務を怠ったといえ、不法行為責任が認められる。
輸入瓶詰オリーブ食中毒事件 第1事件被告:オリーブ輸入会社、レストラン経営者
第2及び3事件被告:オリーブ輸入会社
レストランにおいて瓶詰オリーブを食した客らがボツリヌス中毒に罹患したため、客の1人がレストラン経営者及びオリーブ輸入会社に対し、債務不履行又は製造物責任法に基づき(第1事件)、レストラン客及びレストラン経営者らが、輸入会社に対し、製造物責任法に基づき(第2事件)、レストランが、輸入会社に対し、製造物責任法に基づき(第3事件)、損害賠償を求めた事案。 ①酸素があると増殖できないかあるいは死滅するというボツリヌス菌の特徴や、本件オリーブから検出されたB型ボツリヌス菌は我が国ではほとんど検出されていないことなどを考慮すると、本件オリーブから検出されたB型ボツリヌス菌及びその毒素は、本件瓶の開封後に混入したものではなく、本件瓶の開封前から存在していたものと推認するのが相当であり、本件オリーブは、食品として通常有すべき安全性を欠いていたといえる。
②レストラン経営者は一応の注意を払った上で本件オリーブの提供に臨んだことが認められ、レストラン客はレストラン経営者の注意義務違反を基礎付ける具体的事実について、何ら主張立証していないから、注意義務違反は認められない。

土壁内竹組害虫発生事件 竹材販売会社 新築建物の所有者らが、同建物に害虫が大量発生し食害が発生したのは、本件建物の土壁の下地とされた竹材である丸竹に原因があるとして、同人らに本件丸竹を販売した竹材販売会社に対し、製造物責任等に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件会社では、保管している竹材に、カビ止めや防虫のため丸竹状態で山積みにしたまま薬剤を散布等しており、本件竹材に加工したといえるから、本件竹材は製造物責任法2条所定の製造物といえる。
②本件会社では、竹材を野ざらしで置いており、防虫対策としては丸竹を山積みのまま薬剤を散布等するだけであるなど、竹材販売業者に通常要求される防虫対策としては不十分といえるから、本件竹材には一般の社会通念に照らして竹材に要求される防虫対策が講じられておらず、竹材に当然備えられているべき安全性を欠いているといえるとして、製造物責任法2条の欠陥を認めた。
③は判断せず。
資源ゴミ分別機械上腕部切断事件 甲事件被告兼乙事件反訴被告:飲料缶選別機を製造納入した廃棄物再生処理業者
乙事件本訴被告:飲料缶選別機を購入した一般廃棄物処理業者
甲事件:飲料缶選別機のローラーに付着した異物を手で除去しようとしてローラーに巻き込まれ右上腕部を切断した一般廃棄物処理業者の元役員が、同機械を製造、納入した廃棄物再生処理業者に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案。
乙事件:一般廃棄物処理業者に飲料缶選別機を販売した廃棄物再生処理業者が、売買代金の支払を求めた(本訴)のに対し、一般廃棄物処理業者が、本件機械の瑕疵を主張して、本訴で相殺主張した残代金の支払を求めた(反訴)事案。
稼働中の本件機械の掃除口に手を挿入して回転中のローラーに付着した缶をつかみ取ろうとした本件元役員による本件誤使用は、通常予見しうる使用形態、すなわち、本件機械の特性やその使用形態に照らして合理的に予見可能な範囲の誤使用とはいえず、本件事故は、本件機械が通常有すべき安全性を欠いていたことにより生じたものとはいえないことなどから、本件機械に製造物責任法3条の欠陥は認められない。
②本件廃棄物再生処理業者従業員による実習指導の終了日には、本件売買契約書所定の双方立会いの上、本件機械が良好な状態にあることを確認したといえるから、同日、本件機械の稼働確認を終了したと認められ、弁済期が到来したといえる。
③本件機械が、取引上、一般に期待される品質、性能を欠いていると認めることはできないことなどからすると、本件機械に「瑕疵」があるとは認められない。
治験薬投与虚血性心不全死亡事件 第1事件:死亡男性が治療を受けた病院
第2事件:死亡男性の担当医及び治験薬開発製造会社
虚血性心不全で死亡した男性の妻及び子供が、治験薬開発製造会社の治験薬には心臓に対する副作用があり、本件男性には心臓等に異常が認められたにもかかわらず、担当医によって本件治験薬を処方されたために本件男性が死亡したとして、担当医に対しては不法行為責任に基づき、本件男性が治療を受けた病院に対しては、担当医の行為についての使用者責任ないし担当医を履行補助者とする債務不履行責任に基づき、治験薬開発製造会社に対しては、治験薬に係る製造物責任ないし不法行為責任に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件男性の妻らが提出した鑑定意見書の検討、本件治験薬の開発製造会社による治験手続結果、本件男性の身体の状態などからすれば、本件治験薬に心刺激性があり、心筋梗塞を生じさせるものであると認めるに足りる証拠はなく、本件治験薬が本件男性の死亡に影響を与えたとは認められない。
②本件治験薬が本件男性の死亡に影響したとは認められない上、担当医は、本件男性の妻の立会いの上で本件治験薬投与についての
同意書を取っており、本件治験薬の心刺激性及び本件男性の死亡前に心疾患の徴候を認めることはできない以上、担当医による本件治験薬の投与に係る説明について、担当医及び本件病院に不法行為ないし債務不履行責任を認めることはできない。
③本件治験薬に心筋梗塞を惹起せしめるような心刺激性を認めることはできず、本件男性の死亡との間の関連性を認めることができないから、本件治験薬の開発製造会社に製造物責任ないし不法行為責任を認めることはできない。

フロントガラスカバー金属フック左眼突刺重傷事件 フロントガラス等の凍結防止カバー製造業者 凍結防止カバー製造業者が製造販売したフロントガラス等の凍結防止カバーを自動車に装着しようとして左眼を負傷した者が、本件製造業者に対し、損害賠償を求めた事案。 ①本件製品の設計には、フックが使用者の身体に当たって傷害を生じさせる事態を防止するための配慮はほとんどされていないから、本件製品は設計上の問題として通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法3条の「欠陥」を有しているといえる。
②被害者は、フックの装着具合を確認するためかじかんだ手でゴムひもを触ったところ、たまたまゴムひもを上から下に押す形になったもので、通常の予測の範囲を超えた行為に出たものとは認められないとして、過失相殺を否定。
エステ施術重度アトピー罹患(りかん)事件 エステティックサロン経営会社 エステ会社製造の美容器具を使った顔面エステ施術を受け続けたアトピー性皮膚炎の罹患歴を有する女性が、重度のアトピー性皮膚炎に罹患したとして、エステ会社に対し、不法行為、債務不履行又は美容器具の欠陥に対する製造物責任に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件女性のアトピー性皮膚炎の発症及び悪化の原因は、本件会社のエステ施術を継続的に受けたためであり、同社従業員らは、エステ施術に際し本件女性が皮膚障害を発症、悪化させることのないよう配慮すべき注意義務に違反し、過失による不法行為責任を負うから、本件会社は使用者責任を負う。
②③は判断せず。
④本件女性は、初回のエステ施術翌日に顔面の皮膚障害を発見した時点で前日のエステ施術が原因であると疑ったのであるから、直ちにエステ施術を中止して医師の診察を受けるべきであったにもかかわらず、エステ施術を継続してアトピー症状を悪化させたとして、30%の過失相殺を認めた。
カテーテル破裂脳梗塞(こうそく)障害事件 カテーテル輸入販売業者、病院設置大学 大学病院で脳動静脈奇形(AVM)の塞栓手術中、カテーテル輸入販売業者の販売したカテーテルが破裂したため、脳梗塞による後遺障害を負ったとして、被害男性が、同輸入販売業者に対しては製造物責任に基づき、本件病院の設置大学に対しては使用者責任に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件破裂事故直前において、本件カテーテルが異常屈曲していた状態にあったとは認め難いから、カテーテルの異常屈曲発生を前提とする担当医らの注意義務違反の事実は認められず、また、担当医が、特段の事情もないのに、経験上体得した通常予想される使用形態を越え、あえて過剰な加圧をしてはならないという注意義務に違反した事実もないとして、病院の過失を否定した。
②本件破裂箇所は、術者が経験上体得した通常予想される使用形態を越え、あえて過剰な加圧でもしない限り、破損しないような強度を備えていなかったと推認されるから、本件カテーテルには通常有すべき安全性を欠いた欠陥が存在していたといえる。
磁気活水器養殖ヒラメ全滅事件 磁気活水器製造業者 ヒラメ養殖業者が、磁気活水器製造業者の製造販売する磁気活水器を養殖池の給水管に設置したところ、同池の養殖魚が全滅したことから、本件装置に欠陥があったとして、本件装置の製造販売会社に対して製造物責任ないしは不法行為に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件装置を給水管に取り付けた結果、その磁力の作用によって水質に変化が生じ、それがヒラメの生態に強く影響して生け簀で養殖されていた全てのヒラメを死に至らしめたという因果関係を事実上推認することができ、これを覆すに足りる証拠はないとして、因果関係を肯定。
②本件装置には海水使用の場合に安全性を欠いており、いわゆる設計上の欠陥があると認められ、また、本件装置は安全性について厳格なテストを行わないまま商品として実用化されて流通に置かれていたものであって、海水使用の場合に生体に悪影響を及ぼすおそれがあったのにこれを看過し、その点の注意、警告がまったくなされていないことから、警告上の欠陥があることが明らかである。
プール消毒液皮膚炎事件 市及び塩素系剤製造販売会社 市が設置管理する小学校在学中にプールの清掃作業を行った小学生が、塩素系剤製造販売会社が製造販売する水溶液によってプール消毒の際に右手首から肘にかけてやけど様の傷害を負ったとして、その損害賠償を請求した事案。 ①負傷した小学生の症状は基本的には本件塩素系剤による接触性皮膚炎であるが、本件小学生の体質及び金たわしで患部付近を擦ったことが影響している可能性が大きい。
②プール清掃の際に使われる本件塩素系剤の3%程度の水溶液は一定の皮膚に対する有害性を備えていると考えられるから、皮膚が敏感な者等にとってはより重大な影響を及ぼす可能性があり、本件製造販売会社はプール清掃の場合の水溶液の使用方法について製品の袋若しくは製品自体に付属する説明書・注意書きにより警告すべき注意義務があると考えられるところ、本件製造販売会社は警告・注意を行うべき義務を怠ったとして、同社の製造物責任を認めた。
③本件塩素系剤の比較的高濃度の水溶液に直接素手で触ることが皮膚に影響を与えることは予見可能性があるといえ、プール清掃の適切な方法についても、本件製造販売会社から配布されているリーフレットをプール講習会参加者に配る正式な書面に加えるなど周知徹底させるべきであったが、市はその実施を怠ったとして、市の賠償責任を認めた。
カラオケ店立体駐車場脳挫傷(ざしょう)死亡事件 立体駐車装置の製作販売会社 立体駐車装置を購入したカラオケ店経営会社が、車の方向を変えるための同装置内のパレットの回転により被害者がパレットと壁面の支柱との間に頭部を挟まれ脳挫傷により死亡したという事故につき、同装置には必要な人的センサがないなどの欠陥がある上、同装置の製作販売会社から本件装置を購入時にその旨の説明をされなかったなどとして、製造物責任法及び売買契約上の債務不履行責任(説明義務違反)に基づき、カラオケ店経営会社が本件死亡事故の被害者の相続人らに支払った和解金等の損害賠償を求めた事案。 ①は判断せず。
②本件装置は負傷若しくは本件のような死亡事故が発生する危険性があるから、本件装置の構造について特別の知識を有しないカラオケ店経営会社に本件装置を販売する製作販売会社は、本件装置の危険性とその安全装置であるセンサの内容等について、カラオケ店経営会社に具体的に説明すべき信義則上の義務があったにもかかわらず、本件装置の危険性と同危険性を回避又は軽減するためのセンサの内容等について説明せず、注意義務違反があったと認められる。
③本件取扱説明書には本件装置の操作は教育を受けた者が行うこと等の安全上の注意事項が記載され、カラオケ店経営会社はその説明を受けていたにもかかわらず、同社では採用後間もない従業員に対して本件装置の操作方法や注意事項を指導する従業員も定めなかったなどの事情に照らせば、カラオケ店経営会社側に重大な過失があるとして、損害の3分の2につき過失相殺による減額を認めた。
食品容器裁断機リフト頭蓋(がい)底骨折死亡事件 油圧裁断機製造業者(一審被告)、死亡した女性を雇用していた合成樹脂成型加工販売業者(一審被告)、油圧裁断機による裁断作業に従事していた際に死亡した女性の内縁の夫とその子供ら(一審原告)


合成樹脂型加工販売業者に雇用され、油圧裁断機を操作して、プラスチック製の食品容器(フードパック)の裁断作業に従事していた女性が、裁断したフードパックを積み重ねて搬送するリフト上のコンベアとその天井部分に頭部を挾まれて死亡した事故につき、同人の内縁の夫と子が、油圧裁断機製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、死亡女性を雇用していた合成樹脂成型加工販売業者に対しては債務不履行ないし不法行為に基づき損害賠償を求めたことにつき、油圧裁断機製造業者に対する請求を棄却し、合成樹脂成型加工販売業者に対する請求については不法行為責任を認めたものの、死亡女性にも過失があったとして7割の過失相殺を認めた第一審に対する控訴審の事案。 本件油圧裁断機で予定されていた荷崩れ品の排除策は不適切であり、機械を停止せず、作業効率を犠牲にせずに、しかも安全に荷崩れ品を排除することは、十分に可能であったものと認められるところ、適切な排除策が講じられていなかった点で本件機械は通常有すべき安全性を備えておらず、欠陥があったものと認めるのが相当であって、仮にそうでないとしても、本件のような不適切な排除策を前提に本件機械を設計しておきながら、リフト上に手や身体が入ったときに本件機械が自動的に停止するような対策が講じられていなかった点で、本件機械には欠陥があったものと認めることができるとして、製造物責任を肯定。
②死亡女性に本件機械の操作に従事させるにあたって、荷崩れに関する事前対策を十分行わず、その対処方法、安全教育について十分な指導・教育等を施さなかった注意義務違反があるとして、死亡女性を雇用していた合成樹脂成型加工販売会社の責任を肯定。
③死亡女性にも、本件機械を停止させず、作動したままのリフト上に身体を入れて、荷崩れしたフードパックを取り除こうとした過失等があることから、死亡女性の過失割合を5割と認定。

プロパンガス漏れ火災事件 被控訴人:全焼した自宅所有者(一審原告)
附帯被控訴人プロパンガス装置設置供給者(一審被告)
ガス設備工事の不手際によるガス漏れのため火災が発生し家屋が焼失したとして、焼失した家屋の所有者が、プロパンガス装置設置供給者に対し、損害賠償を求めたことにつき、一部認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①プロパンガスの特性、本件自宅所有者やその妻が供述する本件火災の状況を前提としても、その原因がガス漏れによるものであるとは直ちに認め難いし、当時のガスの利用状況も証拠上明らかとはいえないから、本件火災の原因がガス漏れであるとは認められない。
②本件火災の原因はガス漏れではないとして、プロパンガス装置設置供給者の責任を否定。
ピアノ防虫防錆剤(ぼうせいざい)液状化事件 本訴被告:ピアノ用防虫防錆剤製造業者
反訴被告:ピアノ用防虫防錆剤販売業者
ピアノ用防虫防錆剤製造業者から納入を受けた本件錠剤を販売していたピアノ用防虫防錆剤販売業者が、本件錠剤にはピアノ内部で使用中に液状化するという設計上の欠陥及び液状化の可能性についての指示・警告上の欠陥があったとして、ピアノ用防虫防錆剤製造業者に対して、製造物責任法に基づき損害賠償を求めるとともに、同欠陥は債務不履行に該当するから、債務不履行に基づき売買契約を解除したとして、原状回復請求として支払済み売買代金等の返還を求めた(本訴)のに対して、ピアノ用防虫防錆剤製造業者が、本件錠剤販売業者に対して、売買契約に基づき本件錠剤の売掛残代金及び本件錠剤納入以前から納入していた商品の代金の支払を求めた(反訴)事案。 本件錠剤の性質からすれば、本件錠剤が故障の原因になるおそれが十分あったにもかかわらず、本件製造業者が設計段階において本件錠剤の液状化を防止するための工夫等を施した形跡は窺われないから、本件錠剤は、設計上、通常有すべき安全性を欠いた製品であったと認めるのが相当であり、また、本件製造業者は効用との関係で除去し得ない危険性の発現による事故を防止・回避するに適切な情報を与えなかったといえるから、本件錠剤には、指示・警告上の欠陥があったものと認められる。
②本件販売業者は納入された本件錠剤を化粧箱に入れて商品化するだけであり、化粧箱に入れることは「製造」にも「加工」にも該当しないから、化粧箱に入れたものを本件錠剤とは別個の他の製造物ということはできないとして、部品性の抗弁を否定。
③ソルビットを76~87パーセント含有する本件錠剤が空気中の水分を吸い、溶けて液状化するということが、本件製造業者が本件販売業者に本件錠剤を引き渡した当時の科学技術水準では知悉し得ない事実であるとは認められないとして、開発危険の抗弁を否定。
④営利を目的とする企業において、ある商品を販売できなくなった場合に代替品を販売すること等は当然であり、これが本件製造業者に賠償を請求することを妨げるほどの事情とはならないとして、権利濫用の抗弁を否定。
⑤本件販売業者が本件錠剤の液状化が発覚した後、漫然と事態を放置していたとは認められず、被害拡大について本件販売業者に過失があったと認めることはできないとして、過失相殺の抗弁を否定。

食品容器裁断機リフト頭蓋(がい)底骨折死亡事件 油圧裁断機による裁断作業に従事していた際に死亡した女性の内縁の夫とその子供ら(控訴人兼被控訴人(一審原告)) 油圧裁断機による裁断作業従事中に女性が死亡した事故につき、同人の内縁の夫とその子供らが、油圧裁断機製造業者に対しては製造物責任法3条に基づき、同女性を雇用していた合成樹脂成型加工販売業者に対しては債務不履行ないし不法行為に基づき、それぞれ損害賠償を求めたことにつき、油圧裁断機製造業者の製造物責任を否定する一方、合成樹脂成型加工販売業者の注意義務違反を認めた第一審、油圧裁断機製造業者の製造物責任を認めるとともに、合成樹脂成型加工販売業者の注意義務違反を認めるなどした控訴審に対する上告審の事案。  
人工心肺装置ポンプチューブ亀裂事件 脳機能障害等の後遺障害を負った男性患者(一審原告)、装置製造販売会社(一審被告)、市(一審被告) 市立病院で心臓手術を受けた患者が、人工心肺装置中の送血ポンプのチューブの亀裂、破損により脳梗塞を発症し、脳機能障害等の後遺障害を負ったとして、市に対しては臨床工学技士の操作過誤を、ポンプを製造した装置製造販売会社に対しては安全な製品の製造を怠った過失等を主張して損害賠償を求めたことにつき、人工心肺装置の製造に過失があったとして本件製造会社に対する請求のみ一部認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①本件技士による本件ポンプへの当初のチューブ設定の仕方がチューブ亀裂等の原因になったと推認でき、同人の本件設定行為は患者血流への空気流入の危険を招くものであって安全性保持義務違反に当たり、また、同義務から生ずる本件ポンプを含む人工心肺装置等の機器監視義務違反、交換用チューブの備え付けを怠ったという被害拡大防止義務違反も認め、市の債務不履行責任を認めた。
②本件ポンプに通常有すべき安全性が欠如していたとはいえないが、製造販売会社が事故発生の具体的危険を指摘する説明、警告をしていれば本件技士の過誤を防止し得たといえるから、製造販売会社には具体的危険を指摘する説明ないし警告をすべき注意義務違反が認められるとして、同社の不法行為責任を認めた。
ガラスコーティング剤白濁事件 本訴被告:工業薬品等輸出入会社
反訴被告:ガラスコーティング剤を販売した自動車用品販売会社
ガラスコーティング剤を工業薬品等輸出入会社から購入したと主張するガラスコーティング剤販売会社が、ガラスコーティング剤に瑕疵があったとして、工業薬品等輸出入会社に対して、主位的に売主としての債務不履行責任、予備的に不法行為責任ないし製造物責任に基づき、損害賠償を求めた(本訴)のに対し、工業薬品等輸出入会社が、本件コーティング剤以外の商品取引に係る売掛金の支払を求めた(反訴)事案。
①本件コーティング剤を製造するに際しては、本件コーティング剤を工業薬品等輸出入会社の名義ではなく、本件コーティング剤販売会社から発注を受けた訴外会社名義で納品していること等から、本件コーティング剤の製造・供給が、本件コーティング剤販売会社と訴外会社との間で行われており、工業薬品等輸出入会社は訴外会社の信用不安解消のために両社の間に介入していたにすぎないとして、工業薬品等輸出入会社の売主としての立場を否定。
②本件コーティング剤販売会社は本件コーティング剤製造の発注先である訴外会社といわば共同事業としてその製造・販売を行っており、発注先の信用不安解消のために工業薬品等輸出入会社が本件コーティング剤の製造供給に介入していたに過ぎないことは当然に了解し得るところであるとして、工業薬品等輸出入会社の不法行為責任を否定。
③工業薬品等輸出入会社の売主の立場としての製造物責任は認められない。
骨接合プレート折損事件 甲事件被告:プレート輸入販売業者
乙事件相手方:上肢用プレートシステムを用いた骨接合手術を受けた男性、プレート輸入販売業者
丙事件反訴被告:骨接合手術をした医療法人
医療法人が開設する病院で、骨折した左腕上腕骨に上肢用プレートを装着する骨接合手術を受けた男性が、金属疲労により同プレートが折損したため再手術を余儀なくされたとして、同プレートの輸入販売業者(本件輸入販売業者)に対し、製造物責任に基づく損害賠償を求めるとともに(甲事件)、本件医療法人に対し、診療契約の債務不履行に基づく損害賠償を求めた(丙事件)ところ、本件医療法人が、本件男性及び本件輸入販売業者に対し、本件プレートの破損につき損害賠償債務の不存在確認を求めた(乙事件)事案。 ①本件プレートが、要求される程度の強度を欠くとは認められず、むしろ当該製造物の通常予見される使用形態に従ったものでなかった本件男性の使用方法により本件プレートが折損したと認められるから、同プレートに製造上の欠陥は認められないとし、また、本件プレートの使用方法、注意点等につき、本件輸入販売業者が患者に直接交付すべき警告文書を作成しなかったからといって警告上の欠陥に当たるとはいえず、本件輸入販売業者は、医師に対して必要な使用上の注意、警告を過不足なく提供しており、警告としては必要十分なものを示しているから警告上の欠陥はないとして、本件輸入販売業者の製造物責任を否定した。
②担当医に手術前の説明義務違反の事実はなく、本件プレートの使用を選択したことをもって医師の施術選択の誤りともいえず、医師らによる指示説明は患者に対する指示説明としては十分であって文書で指示しなかったことをもって術後の説明不十分の過失があるともいえない上、担当医が術後の処置を理学療法士に任せきりにしたとはいえず、本件男性が他院に転院したと考えて診察等を中止したのはやむを得ない措置といえるから、過失はないとして、医療法人の債務不履行責任を否定した。
パチスロ機電源火災事件 甲事件被告:電源開発業者、電源製造者表示業者及び電源納入業者
乙事件被告:遊技機器製造販売業者
電源開発業者及び電源製造者表示業者の製造に係るパチスロ機用の電源に欠陥があり、そのために本件電源を使用したパチスロ機に火災が生じたとして、電源納入業者から本件電源の納入を受けた遊技機器製造販売業者が、主位的に、電源納入業者、電源開発業者及び電源製造者表示業者に対して債務不履行に基づき、予備的に、電源開発業者及び電源製造者表示業者に対して、製造物責任法に基づき損害賠償を求め(甲事件)、パチスロ機焼損事故の発生を受けて同遊技機器製造販売業者の協力会社らに交換用の電源を納入した同電源製造者表示業者が、本件電源に欠陥がない以上、同遊技機器製造販売業者は交換用電源を無償で取得できる法律上の根拠はないなどとして、同遊技機器製造販売業者に対し、納入された電源の売買代金相当額の不当利得返還を求めた(乙事件)事案。 ①遊技機器製造販売業者と電源開発業者及び電源製造者表示業者との間の本件電源の特性に関する合意内容は、過電流保護機能に係る本件特性を前提とする受領用仕様書及び最終サンプルどおりの内容であったというべきであるから、本件電源が本件特性を有することが電源開発業者らの債務不履行に当たるとはいえない。
②遊技機器製造販売業者内に、電源知識保有者がいたと推認されることを前提とすれば、電源製造者表示業者による本件電源に関する情報提供の内容及び態様に照らすと電源開発業者らが遊技機器製造販売業者に対する説明義務を果たしていないということはできないなどとして、電源開発業者らの説明義務違反を否定した。
③は判断せず。
④電源開発業者らに債務不履行がなく、かつ、本件電源に欠陥が認められない以上、電源納入業者には責任主体性は認められない。
⑤本件電源は通常予見される使用形態とはいえない形態で使用されており、また、本件特性は電源の過電流保護機能としての機能を果たしていることから、本件電源自体が通常有すべき安全性を欠いているとは認められず、本件電源に製造物責任法上の欠陥があるということはできない。
⑥本件電源に欠陥が認められない以上、本件電源の欠陥と遊技機器製造販売業者の損害との因果関係は認められない。
⑦電源製造者表示業者が遊技機器製造販売業者に対し交換用電源を納入し始めた段階において本件電源に欠陥等があることを電源製造者表示業者が認めていなかったことを遊技機器製造販売業者が認識していたこと、同遊技機器製造販売業者が交換用電源の大部分について代金を支払っていることなどからすれば、両者の間には交換用電源の無償提供の合意が成立していたと認めることはできない。
自動車用燃料添加剤エンジン不調事件 電子材料セラミックス製造販売会社 所有していた軽自動車に、電子材料セラミックス製造販売会社製造の自動車用燃料添加剤を使用したところ、同車のエンジン不調といった故障が生じエンジン、燃料タンクの交換が必要になったとして、運送業を営む者が、本件会社に対し、製造物責任法又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めた事案。 本件車のエンジン不調は全気筒のボア内壁及び全ピストンリングの異常摩耗によるものと認められ、投入された本件添加剤が、一定条件の下、異常摩耗に関係していたと推認できるところ、本件会社が、頻回の長距離走行では本件添加剤によりエンジン不調をもたらすことがある旨警告していなかった以上、本件異常摩耗を原因とするエンジン不調の発生は、本件添加剤が長距離走行に耐え得る性能を有していなかったからといえ、本件添加剤は自動車燃料添加剤として通常有すべき安全性を欠いていたとして、製造物責任を認めた。
イシガキダイ料理食中毒事件 割烹(かっぽう)料亭経営者 料亭で料理されたイシガキダイに含まれていたシガテラ毒素が原因で食中毒に罹患(りかん)し、下痢、嘔吐等の症状が生じた客らが、料亭経営者に対し、製造物責任又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件調理行為は製造物責任法上の「加工」に該当し、本件料理は加工された動産として製造物に該当するところ、食品は無条件的な安全性が求められる製品であるから、本件料理がシガテラ毒素を含んでいたことは製造物の欠陥に当たる上、既存の文献を調査すれば判明するような事項については開発危険の抗弁による免責を認める余地はないことなどから、製造物責任を認めた。
②は判断せず。
カーオーディオスイッチ設計欠陥事件 電化製品・機械部品製造販売業者 音響機器製造販売業者が電化製品・機械部品製造販売業者の製造するFTスイッチを使用してカーオーディオを製造、販売したところ、本件FTスイッチの一部が常時短絡して通電するようになり、これに起因して本件FTスイッチ使用のカーオーディオ製品を設置した自動車のバッテリーが上がるなどの事故が多発したとして、製造物責任法又は不法行為に基づき、本件機械部品製造販売業者に対して損害賠償を請求した事案。 本件FTスイッチは仕様書記載の保証範囲の範囲内で短絡事故を発生し、その原因は銀マイグレーション現象によるものであって、銀マイグレーション現象自体はよく知られた現象であり、接点の銀メッキを金メッキにするなどすれば本件短絡事故は発生しなかったのであるから、本件FTスイッチは設計上の欠陥のために通常有すべき安全性を有していなかったものと認められる。
車両噴射ポンプ欠陥衝突事件 自動車製造業者及び自動車販売業者 自動車運転者が先行車2台を追い越すために加速して対向車線に出て追越しを行ったところ、本件自動車のアクセルレバーが全開状態となる等の異常が発生し、本件自動車は、安定性を失いながら減速し、最終的には進行方向と逆向きの形になったところで対向車両と衝突したため、自動車運転者及び同乗者が、自動車の製造業者及び販売業者に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案。 本件運転者が法定速度を大幅に超える速度で追越しを開始したとか、無謀な追越し行為を行ったなどの事実は認めることができないし、本件事故を惹起した最大の原因は、本件自動車のワックスレバーが破断して、エンジンが高回転を続けるような状態が一定時間持続するなどといった異常事態の発生によるところ、こうした非常事態に直面した本件運転者の運転操作がとりたてて不適切であったとは言えないなどとして、過失相殺の適用を否定。
②自動車販売業者が本件自動車の実質的な製造業者(製造物責任法2条3項3号)に該当すると認めるに足りる証拠はなく、同社は製造物責任法3条の損害賠償責任を負わない。

外国製高級車発火炎上事件 自動車輸入会社及び自動車販売会社 リコール2回を含む8回の修理を受けた外国製高級車で高速道路を走行中、オイル漏れのためエンジンルームから発火、炎上し、車両前部が焼失して廃車となり、また、心的外傷後ストレス傷害を負ったとして、本件自動車運転者が、本件自動車の輸入会社(本件輸入会社)に対して製造物責任法に基づき、本件自動車の販売会社(本件販売会社)に対して主位的に債務不履行、予備的に不法行為に基づき損害賠償を請求し、本件自動車を所有していた法人が、本件輸入会社に対して製造物責任法に基づき、本件販売会社に対して債務不履行に基づき、損害賠償を請求した事案。 ①本件販売会社は、ドイツ製自動車の正規販売店として本件自動車のリコールによる修理を行っており、その際本件事故の出火原因となったオイル漏れの箇所付近を修理点検していること、本件自動車は法人が所有しているものの、実際には法人の理事長である本件自動車運転者において専用使用しており、本件販売会社もそのことを認識していたことなどの事情に照らせば、本件自動車の使用者である運転者に対して本件自動車の点検・修理等の不具合から生じた損害について債務不履行責任を負う。
②は判断せず。
③本件自動車運転者の日常生活及び社会生活、本件事故の際の状況等からすれば、診断書の記載によっても後遺障害として心的外傷後ストレス障害に罹患しているとは認め難い。
人工呼吸器換気不全死亡事件(1) ジャクソンリース回路製造販売会社、気管切開チューブ輸入販売会社、病院設置地方自治体 公立病院でジャクソンリース回路に気管切開チューブを接続した呼吸回路による用手人工呼吸を行おうとしたところ、回路閉塞により男児が換気不全となり死亡したため、男児の両親が、両器具の欠陥の存在、病院担当者らによる両器具の欠陥不確認の過失を主張して、ジャクソンリース回路製造販売会社及びチューブ輸入販売会社に対しては製造物責任又は不法行為責任に基づき、病院設置自治体に対しては不法行為責任又は債務不履行責任に基づき、損害賠償を求めた事案。 本件ジャクソンリースと本件気管切開チューブ(本件チューブ)には、使用者に対し、本件ジャクソンリースと本件チューブ等の呼吸補助用具との接続箇所に閉塞が起きる組合せがあることを明示し、同組合せで本件ジャクソンリースを使用しないよう指示警告する等の措置を十分に採らなかった点で指示・警告上の欠陥があったとして、2社の製造物責任を認めた。
②は判断せず。
③ジャクソンリース回路と呼吸補助用具の組合せ使用をする医師は、各器具の基本的部分を理解して各器具を選択し、相互に接続された状態で安全に機能するかという事前点検注意義務を負うところ、本件担当医が両器具の構造上の基本的特徴を理解し認識していれば、同担当医は本件事故発生を予見でき、安全点検を行えば本件組合せ使用を中止することで本件事故を回避できたと認められるから、安全点検を怠って本件組合せ使用をした本件担当医には過失が認められるとして、自治体に使用者責任を認めた。
プロパンガス漏れ火災事件 プロパンガス装置設置供給業者(控訴人兼附帯被控訴人(一審被告)) ガスボンベ工事における過失により家が火災にあったとして、全焼した自宅所有者が、工事を行ったプロパンガス装置設置供給業者に対し、損害賠償を求めたことにつき、プロパンガス装置設置供給業者の責任を認めた第一審、プロパンガス装置設置供給業者の責任を認めなかった控訴審に対する上告審の事案。  
レンジつまみ過熱事件 住宅設備会社 住宅設備会社が輸入した外国製ガスオーブンレンジを購入した主婦が、同オーブンには金属性つまみの過熱により人体にやけどを負わせるような欠陥があり、取扱説明書にも警告がないなど、同社は製品の安全性を確保すべき注意義務にも違反しているとして、同社に対し、製造物責任又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。 人体が触れることが当然の前提となっている本件オーブンのつまみの温度が消火後に80度に達する点については、火傷の危険があること、日本工業規格によれば金属製のつまみ類の温度は60度以下とされていることによれば、本件オーブンは製品が通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法上の欠陥があるといえ、また、調理時につまみの温度がどの程度になるかの調査は住宅設備会社において容易にできるにもかかわらず、同社は製品の安全性を確保すべき注意義務を怠り、問題点のある本件オーブンを特段の措置を施すことなく流通においているから、この点で過失が認められる。
資源ゴミ分別機械上腕部切断事件 飲料缶選別機を製造納入した廃棄物再生処理業者(一審甲事件被告兼一審乙事件本訴原告兼同事件反訴被告) 飲料缶選別機のローラーに付着した異物を手で除去しようとしてローラーに巻き込まれ右上腕部を切断した一般廃棄物処理業者の元役員が、同機械を製造、納入した廃棄物再生処理業者に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求め(甲事件)、一般廃棄物処理業者が、本件機械の瑕疵を主張して瑕疵により被った損害のうち乙事件本訴で相殺の主張をした残代金支払を求めた(乙事件反訴)ことにつき、本件機械には設計上及び指示警告上の欠陥もないなどとして各請求を棄却する旨判断した第一審に対する控訴審の事案。 通常予見される使用形態とは、製造物の予定された適正な用途、使用態様のみならず、その製造物であれば通常合理的に予期、予見される用途、使用態様も含まれるものであり、使用者の誤使用であっても、通常合理的に予期、予見される使用形態であれば、製造物の欠陥の有無の判断に当たっては適正使用とみられることになる。本件一般廃棄物処理業者は一般廃棄物処理業を始めたばかりで、元役員の本件機械の使用方法は通常の使用形態を著しく逸脱したものとはいえないし、本件一般廃棄物処理業者は初めて一般廃棄物処理業に携わり、本件機械について専門的知識を有していなかったのであるから、本件廃棄物再生処理業者は本件機械の仕様、性能、危険性について具体的、詳細に説明し、その危険性について警告をすべきである。本件廃棄物再生処理業者がこれを怠ったため本件事故が発生したものであって、元役員の誤使用ではあるが、なお本件廃棄物再生処理業者にとって通常予期、予見され得る使用形態というべきである。そして、スチール缶が選別機から漏れてアルミ選別機コンベア内に進入し、本件ローラーに付着しやすいということとあいまって、本件機械には製造物責任法に定める「欠陥」があったと認めることができる。
②契約当事者である本件一般廃棄物処理業者と本件廃棄物再生処理業者との間で、本件機械の稼働確認を終了した日に、本件機械の残代金の弁済期が到来したと認められる。
③本件一般廃棄物処理業者が本件機械の瑕疵と主張する箇所について、アルミ缶選別機の欠陥を除いて、瑕疵とは認められない。
自動車ギア発火炎上事件 自動車製造会社、自動車販売修理会社、自動車整備会社 高速道路で運転中に所有自動車自体から出火炎上する事故に遭った被害男性が、自動車製造会社に対しては、不適切なタイヤ交換による車両火災発生可能性につき取扱説明書に記載がないなどとして製造物責任(指示・警告上の欠陥)に基づき、自動車販売修理会社に対しては、タイヤ交換の注意義務を怠ったなどとして債務不履行又は不法行為に基づき、自動車整備会社に対しては、リアデファレンシャルギアが異常過熱しないよう自動車部品を装着すべき契約上の義務に違反したとして、債務不履行に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件事故は、4輪駆動車の前輪2輪のみタイヤ交換をしたため前後輪間に外径差が生じたことが少なくとも一因となって発生した。
②本件事故との関係において、4輪とも同一パターンのタイヤを装着し摩耗差の著しいタイヤを使用しないようにする旨の記載が取扱説明書になかったことをもって指示・警告上の欠陥があったとはいえず、また、同説明書には不適切なタイヤ交換につき注意書があったから、車両火災の危険につき記述がなかったことをもって指示・警告上の欠陥があったとはいえないなどとして、本件製造会社の製造物責任を否定した。
③本件販売修理会社が、本件車の前所有者との間の売買契約により、直接の契約関係にない転得者に一定の説明をすべき債務を負うことはないから、債務不履行は認められないが、4輪駆動車の2輪だけタイヤ交換したことの安全性を問われた本件販売修理会社の従業員としては、同質問に対して適切に対応すべき職務上の注意義務を負うから、安全上の問題がある旨回答しなかった本件販売会社の従業員には注意義務違反が認められるとして、同社の使用者責任を認めた。
④本件整備会社は、本件車の前所有者との契約に基づいて本件自動車部品を装着したのであり、本件男性とは直接の契約関係にないから、同社の債務不履行は認められない。
幼児用自転車バリ裂挫傷(れつざしょう)事件 自転車製造会社 幼児用自転車に乗っていた事故当時5歳の女児が、ペダル軸の根元から飛び出ていた針状の金属片により膝窩部(しっかぶ)裂挫傷の傷害を負い傷跡が残ったため、自転車の製造会社に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案

①ペダル軸とギアクランクに硬度差が生じることはやむを得ないこと、ギアクランクのねじ穴の角度とペダル軸の角度の不一致は製造上不可避的に発生すること、製造会社が組立マニュアルで明記している締め付けトルクで取り付けていたならば本件事故程度の針状の金属片(ばり)が発生することはないことを総合勘案すると、ばり発生の可能性があったことをもって本件製品に設計、製造上の欠陥があったとまではいえない。
②製造会社の自転車組立マニュアルには、締め付け過ぎによるばり発生の危険につき注意を促し、組立後の点検時にばりを除去するよう指導する記載はなく、同マニュアル交付により同社がなすべき指示、警告の措置を講じたとはいえないから、指示・警告上の欠陥があるとして、製造物責任を認めた。
輸入漢方薬腎不全事件(2) 医薬品等輸入販売業者 医薬品等輸入販売業者の輸入した医療用漢方薬を服用した女性が、本件漢方薬によって腎不全に罹患したとして、本件漢方薬の輸入販売業者に対して製造物責任法に基づき損害賠償を請求した事案。 本件漢方薬の効能に比し本件漢方薬を長期間服用することによる腎障害という副作用の重篤さは顕著であり、本件漢方薬の輸入販売業者は本件漢方薬に含まれる成分であるアリストロキア酸を漢方薬として使用した場合に腎障害が発症することを知り得たにもかかわらず、本件漢方薬には副作用として腎障害があることが表示されていない上、本件漢方薬の効能はアリストロキア酸を含まない他の漢方薬によって容易に代替できることが認められるから、本件漢方薬は製造物責任法上の欠陥を有する。
②本件漢方薬服用者が罹患した本件腎障害は、長期間にわたる本件漢方薬の継続的な服用によるものと推認するのが相当であるから、本件漢方薬服用者が罹患した本件腎障害と本件漢方薬の服用との間には相当因果関係があると認めることができる。
③本件漢方薬服用者が被った損害のうち、治療費立替分については、医薬品機構から「医薬品の副作用による疾病」を「間質性腎炎」、「副作用の原因と考えられる又は推定される医薬品」を本件漢方薬であるとして医療費等の支給決定を受けているのであるから、遅くとも本件支給決定時点で本件漢方薬服用者は損害及び賠償義務者を知ったものと認められ、本件漢方薬服用者の治療費立替分に関する損害賠償請求権は本件支給決定時点から3年経過時点で時効消滅している。
土壁内竹組害虫発生事件 竹材を使って建てた家屋の所有者2名(一審原告) 家屋建物に竹材の害虫が大量発生し、本件建物の土壁の下地とされた竹材(下地用竹材)等に食害を与えたため、本件建物の所有者らが、本件下地用竹材の材料である丸竹を販売した竹材販売会社に対して、本件食害が発生したのは本件丸竹が通常有すべき安全性を欠いていたことに原因があるとして、主位的に製造物責任に基づき、予備的に債務不履行責任(不完全履行)に基づいて損害賠償を求めたことにつき、製造物責任に関する本件建物の所有者らの主張を全面的に認めた第一審に対する控訴審の事案。
①下地用竹材として販売される竹材は、害虫の発生を防止するための防虫処理が施されており、かかる防虫処理により建築用材として使用し得る竹材としての属性又は価値が付加されるのであるから、本件丸竹は、製造物責任法2条にいう「製造物」に該当すると認められる。
②竹材販売会社は本件丸竹を建築資材として使用されるものとして本件建物の所有者らに売り渡したものの、本件丸竹には十分な防虫処理が行われておらず、また、引渡しに当たっては、防虫処理の状況、程度及び害虫による加害が発生する危険性等について格別告げることがなかったのであるから、本件丸竹は建築資材として使用される竹材としての通常有すべき安全性を欠いており、製造物責任法2条2項の「欠陥」を有すると認められる。
③は判断せず。
収納箱児童窒息死事件 被参加事件被告:収納箱輸入業者から営業及び商号の譲渡を受けた会社
独立当事者事件被告:収納箱の中で窒息死した子の両親
自宅の居間に置かれていた収納箱の中で窒息死した子の両親が、本件事故は本件箱に製造物責任法にいう欠陥があったために発生したとして、本件箱を輸入した会社から営業及び商号の譲渡を受けた会社に対し、損害賠償を求めた(被参加事件)ところ、同輸入会社が、本件事故について、製造物責任法に基づく損害賠償債務を負わないことの確認を求めて独立当事者参加した(独立当事者参加事件)事案。  
パワーリフトプラットホーム傾斜負傷事件 パワーリフト製造会社及び修理業者 5トントラックのパワーリフトを使用中に同リフトのプラットホームが突然傾斜し負傷した被害者が、同リフトの製造会社に対しては同リフトの安全性確保義務違反を主張して、不法行為に基づき、また、本件事故前に本件リフトを修理した修理業者に対しては、修理契約上の注意義務違反を主張して、債務不履行に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①被害者が傾斜地で本件パワーリフトのプラットホームを下降、上昇させたために、カムピンがカム顎部の角部に接した状態となっていたところ、本件事故原因は、カム顎部の角部分が摩耗して変形しカムピンがカム顎部から外れやすくなっていたため、傾斜地で本件パワーリフトのプラットホームを上下させたこと、先端荷重かつ片荷荷重であったことも相まってプラットホームの下降直後にカムピンがカム顎部から外れてプラットホームが傾いたことにあると推認できる。
②カム等に対する定期的な点検整備をせず、傾斜地において先端荷重かつ片荷荷重の状態で本件パワーリフトを作動させた被害者の利用方法は合理的利用の範囲外であるから、本件パワーリフトが、社会通念上製品に要求される合理的安全性を欠き、不相当に危険であったとは評価できず、また、同リフトのカム部分の構造自体に設計上の欠陥があったとか製造会社に安全性確保義務違反があったとは認められないとして、同社の責任を否定した。
③修理業者は本件プラットホームが突然傾いた原因に気づかず、他の事象を原因と即断、軽信し、調整等を行ったのみで被害者に引き渡し、結果、本件事故が発生したから、修理業者は修理義務を尽くしたとはいえないとして賠償責任を認める一方、本件事故の発生には、被害者が定期的な点検整備を怠ったこと、被害者による問題のある利用方法が寄与しているとして5割の過失相殺をした。
イシガキダイ料理食中毒事件 被控訴人兼附帯控訴人:食中毒を発症した8名(一審原告) 料亭で料理されたイシガキダイに含まれていたシガテラ毒素が原因で食中毒に罹患(りかん)し、下痢、嘔吐等の症状が生じた客らが、料亭経営者に対し、製造物責任又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件料理がシガテラ毒素を含んでいたことは製造物の欠陥に当たる上、既存の文献を調査すれば判明するような事項については開発危険の抗弁による免責を認める余地はないなどとして、製造物責任を認めた第一審に対する控訴審の事案。 ①製造物責任法の適用要件につき、製造物による事故が製造又は加工の複雑化、高度化、技術化によるものに限られるといった解釈を求められる文言はなく、被害者保護を図るという製造物責任法の趣旨からしても、本件に同法の適用を認めるべきではない旨の料亭経営者(本件経営者)の主張は採用できないとした。
②製造物責任法の加工とは、原材料の本質は保持させつつ新しい属性ないし価値を付加することで足りるから、本件調理行為は加工に当たらない旨の本件経営者の主張は採用できないとして、本件経営者の調理行為を製造物責任法上の加工と認めた。
③製造物責任法及び開発危険の抗弁の趣旨によれば、開発危険の抗弁を広く解釈することは相当でなく、また、開発危険の抗弁は、当該製造物の安全性の判断に影響を与える世界最高水準の科学知識又は技術知識をもってしても、その危険の認識ができなかった場合にのみ製造物責任が免責されるものと解されることなどからすると、本件経営者の製造物責任は免責されない。
トレーラータイヤ直撃死亡事件 車両製造会社及び国、(トレーラー所有会社) 走行中の大型トラクタ(トレーラー)から脱落した車輪が歩行中の主婦にあたり死亡したため、主婦の母が、本件事故車両を製造した車両製造会社に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求め、運輸行政を担う国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案。 ①行政指導をなし得る立場にある国のリコール対策室が、本件D型ハブの欠陥による国民の身体・生命に対する危険の切迫を知り又は容易に知り得べかりし情況にあったとはいえないから、リコール対策室が改善措置を講じなかった不作為は、国家賠償法上違法とは評価できない。
②リコール対策室は、同種事故の原因が本件D型ハブの欠陥による事故と認識しておらず、走行中の車輪脱落による生命、身体に対する危険が発生していたことを認識していたとは認められないから、国が、新たにハブを自動車検査の検査項目と定めるという条理上の行政指導をしなかった不作為は国家賠償法上違法とは評価されない。
③民事訴訟における損害賠償の目的は発生した損害の補償であり、事実上慰謝料の効果として制裁的機能や抑制的機能が認められることが否定されるわけではないにしても、処罰を目的とする制裁的慰謝料を認めることは我が国のそもそもの法制と調和しないし、現在において制裁的慰謝料の概念が成熟した裁判規範として受容されているとも認めがたい。したがって、制裁的慰謝料を課すことは認められない。
無許可添加物混入健康食品慰謝料請求事件 平15(ワ)3166号事件:健康食品製造販売会社及び同製品通信販売会社
平15(ワ)3583号事件:健康食品製造販売会社及び同製品通信販売会社
健康食品製造販売会社及び同製品通信販売会社が、健康食品製造販売会社のホームページで各種製品を販売したところ、本件各製品には、食品衛生法6条により食品への添加が認められていないエトキシキンが含まれていたとして、本件各製品の購入者らが、本件各製品の製造販売会社及び通信販売会社に対し、宣伝内容の商品を販売すべき債務があるのに宣伝内容とは異なる本件各製品を販売したことによる債務不履行、宣伝内容の真実性を確かめずに宣伝し、本件各製品を点検すべき注意義務を怠り本件各製品を製造、販売したことによる不法行為及びエトキシキンが含まれた本件各製品を製造したことによる製造物責任に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件各製品にエトキシキンが含まれていたことにより、本件各製品を摂取した者の身体に障害を与える可能性はなかった上、本件各製品の製造販売会社の調査内容、認識からすれば、本件各製品の製造販売会社が本件各製品を流通に置くに際しエトキシキンの混入につき調査しなかったことが製造者としての食品の安全性の調査義務に違反するとは認められず、また、ホームページ上の記載により、消費者をして本件各製品の購入の判断に影響する重要事項につき誤認させたとはいえないとして本件各製品の製造販売会社の不法行為責任を否定した。
②本件各製品を含む販売用パンフレット、各製品の代金払込取扱票の加入者名欄等によれば、本件各製品の製造販売会社が本件各製品の売買契約の当事者ではないため、本件各製品の製造販売会社は債務不履行責任を負わない。
③本件各製品の購入により、購入者らの生命、身体又は財産が侵害された事実はなく、製造物責任法3条の要件を欠くから、本件各製品の製造販売会社が製造物責任法により損害賠償責任を負うことはない。
④本件各製品の製造販売会社の行為に違法性は認められないから、本件各製品の通信販売会社が本件各製品の製造販売会社との共謀による不法行為責任を負うことはない。
⑤本件各製品の販売用パンフレットの記載は各種健康食品が、健康に効果があることを強調するものであり、本件各製品の購入者も、本件各製品が自然物から作り出されて健康に効果があると認識して購入するものと思料されることなどから、エトキシキンの混入した本件各製品の引渡しは本旨に従った履行といえず、本件各製品の通信販売会社は債務不履行責任を負う。
⑥本件各製品の通信販売会社は、本件各製品につき、製造物責任法3条の製造業者等に該当しないから、製造物責任を負わない。
輸入馬肉O157事件 畜産物輸出入会社 畜産物輸出入会社が輸入したカナダ産馬肉を馬刺しに加工製造した食肉加工販売会社及び同馬刺を販売した販売会社が、同馬刺の一部からO157(腸管出血性大腸菌)が検出されたため、回収、廃棄、謝罪広告の掲載等の損害を受けたなどとして、輸出入会社に対し、製造物責任に基づく損害賠償を求めた(第2事件)ところ、輸出入会社が、販売会社に対し、馬肉の売買代金の支払を求めた(第1事件)事案
本件馬肉がO157に感染していた事実を認めるに足りる証拠はない。
外国製高級車発火炎上事件 自動車輸入会社(一審被告)、自動車販売会社(一審被告) リコール2回を含む8回の修理を受けた外国製高級普通車のエンジンルーム内から火災が発生し廃車となった事故に関し、同車の運転者及び同車を所有していた医療法人が、同車を輸入した自動車輸入会社に対しては製造物責任法に基づき、同車を販売・修理した自動車販売会社に対しては債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を求めたことにつき、各社の賠償責任を認めて各請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①原判決を引用して債務不履行責任を認定した。
②引用した原判決では判断していない。
③原判決掲記の各証拠に照らせば原判決の事実認定は正当として是認でき、また、鑑定書も、現状では、「心的外傷後ストレス障害の症状がいまだ操作的診断可能なほど前景に出ていない」とし、発症を予防すべきとしているから、運転者が既に心的外傷後ストレス障害に罹患しているとは認められない。
④我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではないから、本件自動車輸入会社らに対して制裁的な損害賠償責任を課すべきであるとする主張は採用することができない。
泡立器金属棒失明事件 泡立器製造販売等会社 泡立器製造販売会社の製造した泡立器の金属棒が調理中に外れて眼に突き刺さり失明した主婦が、夫とともに、本件会社に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案 (損害額のみ)
踏切電車衝突死亡事件 踏切の設置所有者 当時12歳の男児が踏切を自転車で通行しようとしたところ同所に差し掛かった電車と衝突して死亡した事故に関し、死亡した男児の両親が、同踏切には設置、保存上の瑕疵があるとして、本件踏切設置所有者に対して民法717条1項に基づき損害賠償を求めた事案。 本件踏切は、本件事故当時、少なくとも電車が踏切に接近すると警報音を鳴らして電車の接近を警告する警報機を設置するのでなければ、踏切道としての本来の機能を全うし得る状況にはなく、本件踏切についての踏切警標、踏切注意柵、線路侵入防止柵等の設置状況を考慮に入れても、警報機の保安設備を欠いていた本件踏切には、本件事故当時、設置上の瑕疵があったものというべきである。
轟音(ごうおん)玉爆発手指欠損事件 火薬・花火類製造販売業者 男性が火薬・花火類製造販売業者の製造した動物駆逐用花火を用いようとしたところ、本件花火が右手内で爆発して右手指の欠損、聴力障害の後遺障害が生じたため、事故の原因は本件花火の欠陥にあるとして、本件花火の製造業者に対して製造物責任法に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件花火は、設計仕様どおりに約15秒で爆発するように製造されていたから、製造上の観点から見て通常有すべき安全性を欠いていたとはいえず、本件花火に製造上の欠陥を認めることはできない。
②本件花火の特性や使用形態、使用目的に照らすと、本件花火の設計上、爆発までの残り時間を視覚的に予測することが不可能な構造の導火線が用いられていたとしても、そのことをもって、本件花火が通常有すべき安全性を欠いているということにはならず、本件花火に設計上の欠陥があったと解することはできない。
③本件花火の製造業者は、本件花火の点火確認後直ちに投げるように注意を促すのみでは足りず、消費者が点火できたかどうか疑問を持って本件花火を手に持ち過ぎることがないよう、点火の確認ができなくても直ちに投げるように警告すべきであったから、本件花火は警告上の観点から見て通常有すべき安全性を欠いていたと認められ、本件花火の製造業者は本件男性に対して製造物責任法に基づく責任を負う。
④本件男性は過去の本件花火の使用経験から点火後爆発までに時間的余裕があると考えて、点火確認の上で速やかに投げ入れるよう記載された本件取扱説明書記載の警告を無視し、危険な状況を作ってしまったこと等の事情を考慮して、本件男性の過失割合を90%とする過失相殺を認めた。


ガラスコーティング剤白濁事件 不明
(一審本訴被告兼反訴原告:工業薬品等輸出入会社)
ガラスコーティング剤を販売した自動車用品販売会社(本件販売会社)が、工業薬品等輸出入会社(本件輸出入会社)が製造し、本件販売会社に供給(販売)したという本件ガラスコーティング剤に瑕疵があったために損害を被ったと主張して、本件輸出入会社に対し、損害賠償を求めた(本訴)のに対して、同社が、本件販売会社に対し、本件コーティング剤以外の商品取引に係る売掛金の支払を求めた(反訴)ことにつき、本訴請求を棄却し、反訴請求を認容した第一審に対する控訴審の事案。  
カテーテル破裂脳梗塞(こうそく)障害事件 不明
(一審被告:カテーテル輸入販売業者、病院設置大学)
カテーテルを用いた塞栓手術をして後遺障害が生じた男性が、本件カテーテルを輸入販売した会社に対しては製造物責任に基づき、本件手術を行った病院を設置運営する大学に対しては使用者責任に基づき、損害賠償を求めたことにつき、病院の過失を否定する一方、本件カテーテルの欠陥を認めて輸入販売業者の損害賠償責任を認めた第一審に対する控訴審の事案。  
折りたたみ自転車転倒傷害事件 折りたたみ自転車製造会社 折りたたみ自転車製造会社製造の折りたたみ自転車に乗車中、前輪がずれハンドルがとられたため転倒し傷害を負った妻とその夫が、本件会社に対し、製造物責任を理由にそれぞれ損害賠償を求めた事案。 ①弁論の全趣旨等から、本件転倒事故の発生状況を認定した。
②本件折りたたみ自転車には、小径車としての欠点はあるものの、走行安定性に欠けるとかタイヤが横滑りするといった通常有すべき安全性を欠いた構造上の欠陥があるとは認められない。
③は判断せず。
IHクッキングヒーター内インバータユニット通信エラー発生事件 日本法により設立された住宅機器等製造販売会社 韓国法により設立された電子機器製造業者(本件製造業者)が、日本法により設立された住宅機器等製造販売会社(本件販売会社)に対し、IHクッキング・ヒーター用のインバータユニット等を売り渡したなどとして、未払代金の支払を求めた(本訴)のに対し、本件販売会社が、本件製造業者に対し、納品された本件インバータユニットには通信エラーが発生するなどの瑕疵、欠陥があるとして債務不履行、製造物責任、不法行為等に基づく損害賠償を求めた(反訴)事案。 ①合意に従って製造した本件製造業者に債務不履行はないことなどからすると、本件インバータユニットが本件販売会社の評価試験基準を満たさないとしても、本件製造業者に債務の本旨に従った履行がなかったとはいえないから契約責任は認められないとし、また、本件では、訴外会社と本件販売会社が直接の契約関係にあり、本件製造業者と本件販売会社間で直接契約が締結されたとは認められないとし、さらに、両社間で製品の品質につき協議したことはないから、本件製造業者が本件インバータユニットについて品質保証したとも認められないとした。
②本件インバータユニットは、IHクッキング・ヒーターという一般家庭で利用される調理用器具の部品であって安全性確保が要求されるにもかかわらず、全く過電流防止措置がないために一定の使用形態をとれば過電流が発生して絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)破壊が発生するのであるから、通常有すべき安全性を欠くものとして製造物責任法2条の「欠陥」があるといえ、本件製造業者は製造物責任を負う。
③第4、第5期で納品された本件インバータユニットは、過電流防止回路(サブ回路)を装着する際に従前シリアル通信の監視用として使用していた51ピンを使用せず製造されたもので、これは仕様違反に当たるところ、本件仕様違反は過電流防止回路(サブ回路)そのものの問題とは異なるから免責合意の対象とはならないが、第6期納品の本件インバータユニット及び第7期納品のCPUは、両社間で合意した対応策に従った修正をしてもなお通信エラー発生可能性があるところ、その原因は過電流防止回路(サブ回路)そのものに起因するから、本件免責合意の対象となる。
④もともと試作品の納品を受けた際に過電流が検知されることがあることが判明していたにもかかわらず、量産仕様の決定をして本件製造業者に本件インバータユニットを発注した上、IGBT破壊が問題となった後もその原因が未解明の段階で製造を再開させて納品を受けたという本件販売会社の対応が損害拡大を招いたとして、2割の過失相殺を認めた。
混合ワクチン(MMR)予防接種禍事件 被控訴人:国(一審被告)、MMRワクチンの予防接種の副作用により死亡した被害児2の両親及び重篤な後遺障害を残した被害児並びにその両親(一審原告)
附帯被控訴人:国(一審被告)
乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(MMRワクチン)の予防接種を受け、副反応により死亡した被害児1、2の両親、重篤な後遺障害を残した被害児及びその両親が、国及びワクチン製造者に対し、損害賠償等を求めたことにつき、死亡した被害児2の両親及び重篤な後遺障害を残した被害児並びにその両親の請求を一部認容した一審に対する控訴審の事案。 ①原判決を引用して、各被害児らのMMRワクチン接種までの生育状況、MMRワクチン接種後の病変の発生過程及び状況、MMRワクチン接種の副反応等に関する医学的ないし専門的知見をそれぞれ認定し、これらを総合して判断する。
②原判決を引用等して、死亡被害児1の症状が急激に悪化し、死亡に至った病変とMMRワクチン接種との間に因果関係は認められないが、死亡被害児2が死亡に至った病変とMMRワクチン接種との間に因果関係を認めた。
③原判決を引用等して、後遺障害被害児の病変とMMRワクチン接種との因果関係を認めた。
④原判決を引用等して、本件製造者の過失責任を認めた。
⑤国による本件製造者に対する指導監督は不十分であり、国(厚生大臣)は指導監督義務に違反したと認められ、製造方法の無断変更の危険性が高いことによれば国も薬事法による規制をすべきであり、指導監督義務違反による副反応の発生による被害について予見可能性もあるから、国には、被害児2の死亡、後遺障害を負った被害児の病態等につき、過失責任が認められる。
⑥原判決と同じく判断せず。
⑦原判決を引用して、消滅時効の成立を否定した。
食肉自動解凍装置バリ付着事件 ポンプ製造業者、バルブ製造業者(一審被告ら)
ポンプ製造業者製造のポンプ及びバルブ製造業者製造のバルブを使用して食肉自動解凍装置を製造し食品会社に納入した食肉自動解凍装置製造業者が、解凍食肉に装置の金属異物が付着する事故が発生したため、本件事故は本件ポンプ及びバルブのバリが原因で発生したものであるから同製品は欠陥商品であるとして、同製品の製造業者2社に対し、共同不法行為及び製造物責任に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件事故の原因は本件ポンプ及びバルブのバリであるものの各製品に欠陥は認められないとして各請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。 ①本件装置における解凍食肉に付着した金属異物は、ポンプ製造業者の本件ポンプ及びバルブ製造業者の本件チャッキバルブのバリによるものと推認すべきである。
②本件ポンプ及び本件チャッキバルブの残留バリの種類、各製品製造業者らにおける本件ポンプ及び本件チャッキバルブのバリ取りの方法等、また、本件ポンプや本件チャッキバルブのパンフレットにバリ等の異物に配慮すべき警告が記載されていないことによれば、本件ポンプ及び本件チャッキバルブに切削バリが存在したことは、本件ポンプ及び本件チャッキバルブとして通常有すべき安全性を欠いていたといえるとして、欠陥の存在を認め、製造業者2社の製造物責任を認めた。
チャイルドシート着用乳児死亡事件 加害者の相続人5名及びチャイルドシート製造会社 子を後部座席のチャイルドシートに乗せていた母運転の普通車が、反対車線から逆走してきた加害者運転の普通車と正面衝突した際、子に着用させていたシートベルトの肩ベルトが外れ子が投げ出され死亡し、母も負傷したことから、加害者の相続人らに対し、母が不法行為及び自賠法に基づく損害賠償を、亡子の両親が不法行為及び自賠法に基づき発生した損害につき相続人としての損害賠償等を求めるとともに、両親が、本件チャイルドシートには瑕疵があったとして、チャイルドシート製造会社に対し、製造物責任法による損害賠償を求めた事案。 日本工業規格に適合するチャイルドシートは、特段の事情がない限り、一応その拘束性において欠陥のない製品であると推測されるところ、国交省の基準試験の結果とされた事項のみから本件チャイルドシートの肩ベルトカバーの製造・設計に欠陥があったとはいえないことなどによれば、本件推測を覆すに足りる特段の事情が認められない本件では、本件チャイルドシートに欠陥があるとはいえない。
骨接合プレート折損事件 プレート輸入販売業者、骨接合手術をした医療法人
(一審甲事件被告:プレート輸入販売業者
一審乙事件相手方:上肢用プレートシステムを用いた骨接合手術を受けた男性、プレート輸入販売業者
一審丙事件反訴被告:骨接合手術をした医療法人)
上肢用プレートシステムを用いた骨接合手術を受けた男性が、本件プレートが破損したことについて、本件プレートの輸入販売業者に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めるとともに(一審甲事件)、同手術を施術した医療法人に対し、診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償を求め(一審丙事件)、同医療法人が、手術を受けた男性及び輸入販売業者との間でそれぞれ損害賠償債務のないことの確認を求めた(一審乙事件)ことにつき、一審甲事件及び同丙事件の請求を棄却し、一審乙事件の請求を認めた第一審に対する控訴審の事案 ①本件男性に装着されていた本件プレートが、要求される程度の強度を欠くものであったとは認められないこと、本件男性の使用方法は本件プレートの通常予見される使用形態ではなかったこと、本件男性の行動形態の下で、本件プレートに過度な応力が頻回加わり、荷重が繰り返されることで金属疲労を起こし破損に至った可能性が高いことなどによれば、本件プレートが通常有すべき安全性を欠いているとか、製造上の欠陥があったとは認められないとし、また、本件プレートは医療用具であるから、医師に対して必要な使用上の注意、警告を与えれば十分であるところ、本件輸入販売業者のパンフレットは本件プレートを処方する医師に過不足なく情報を提供するものであるから警告としては必要十分であり、本件プレートには警告上の欠陥もないなどとして、本件輸入販売業者の製造物責任を否定した。
②本件プレートによる内固定の方法を試みることは、施術の選択として合理性があるから施術選択の誤りは認められないとし、また、三角巾による緩やかな固定を選択したことに誤りがあるとはいえず、骨癒合が生じにくい可能性や三角巾の使用期間につき説明しなかったことが過失に当たるとする本件男性の主張を退けた上、本件男性に文書で指示しなかったことをもって説明不十分の過失があるとはいえないとし、さらに、医師が術後の処置をリハビリ担当の理学療法士に任せきりにしたとか、リハビリを漫然と進めていたとはいえないことから術後の措置に関する義務違反も否定し、本件医療法人の債務不履行責任を否定した。
送風機損壊事件 本訴被告:産業廃棄物処理業者
反訴被告:送風機製造販売会社
産業廃棄物処理業者(本件産廃業者)から注文を受けて焼却プラントに据え付ける送風機を製造、納入したとして、送風機製造販売会社(本件製造販売会社)が請負代金の支払を求めた(本訴)のに対し、本件産廃業者が、本件送風機の欠陥のため納入後に送風機が損壊して焼却プラントの操業ができなくなったとして、不法行為又は製造物責任法に基づく損害賠償等を求めた(反訴)事案。 ①本件製造販売会社は、本件送風機が高度の腐食環境下で使用されることを知らなかったことなどによれば、本件送風機は、腐食環境下で間欠運転がされるという本来的な利用態様とは大きく異なる環境下で使用された結果、応力腐食割れにより破損したと解されるから、送風機として通常有すべき安全性を欠いていたとまではいえず、また、本件悪条件下で使用される前提で本件送風機を製造し引き渡したとも認められないから、本件製造販売会社の過失も認められない。
②は判断せず。
航空機墜落事故死傷事件 事故機運航会社(台湾法人)(一審被告)、事故機製造会社(フランス法人)(一審被告)及び死亡した乗客の遺族2名(附帯被控訴人:一審原告)
台北から出発した旅客機が目的地である名古屋空港への着陸降下中、同空港誘導路付近着陸帯内に墜落して機体が大破し、乗客及び乗員が死傷し、手荷物等が滅失した事故について、死亡した乗客及び乗員の遺族並びに生存被害者1名が、事故機運航会社に対しては、ワルソー条約17条、18条による損害賠償請求権又は不法行為に基づき、事故機製造会社に対しては、不法行為に基づき、損害賠償を求めたことにつき、本件運行会社に対する請求を一部認容し、本件製造会社に対する請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。 ①法例11条1項の「その原因たる事実の発生したる地」には、当該不法行為による損害の発生地も含まれると解すべきであるから、本件には日本法が適用されるなどとして日本の裁判所に国際裁判管轄を認めた。
②副操縦士は、着陸のための進入時においてオートパイロットに対する指示と矛盾し、かつ、操縦輪が異常に重い状態でこれを押し続けたのであるから、深刻なアウトオブトリムになること、その場合に墜落の危険のある状態に至ることを十分認識していたというべきであって、改正ワルソー条約25条の適用により責任制限はなされず、本件運航会社は本件事故により生じた損害全額を賠償する責任がある。
③本件製造会社は運航マニュアルの記載等によって危険性の発生を予防すべき義務は果たしており、異常で無謀な行為の発生まで考慮に入れて航空機の安全を確保すべき義務を負うとはいえず、本件製造会社に製造物責任は認められない。
ポンプ欠陥係留船沈没事件 ポンプ製造会社 係留船にたまった雨水等の排水目的で設置したポンプ製造会社製造のポンプにつき、当該ポンプの欠陥又は瑕疵が原因で同ポンプの部品であるナットが外れて排水作動しなかったため、同船が沈没し引き揚げ費用等が発生したとして、回漕会社代表者が、ポンプ製造会社に対し、製造物責任又は不法行為責任に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件ポンプ内の六角ナットが外れたためインペラが脱落し、本件ポンプが作動しなくなって排水されなくなったことが本件船舶の沈没原因と認められるところ、本件六角ナットの設計上のトルク値は合理的な設定がされており、本件ポンプに設計上の欠陥があると認めるに足りる証拠はない。
②本件六角ナットの実際のトルク値は設計値を満たしておらず、設計値を相当程度下回っていた可能性が強く推認されるから、本件六角ナットには締め付けトルクが不足するという製造工程上の欠陥があったと認められる。
③は判断せず。
④本件ポンプにおける六角ナットの締め付けトルク不足という製造工程上の欠陥により、六角ナットが外れインペラが脱落して排水ができず、本件船舶が水没したと推認されるから、本件欠陥と本件水没事故との因果関係が認められる。
⑤洗濯用水等の清水、農業用水を主な対象とする本件ポンプは、回漕会社代表者の使用目的に対し、必ずしもよく適合しているとは言い難いとして、2割の過失相殺を認めた。
腹部エステ施術色素沈着事件 美容器具製造販売会社 美容器具製造販売会社製造の美容器具を使用した腹部エステ施術を受けた主婦が、同施術により水ぶくれの状態となり、その後リング状の色素沈着が残ったとして、同社に対し、製造物責任法3条又は民法709条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件主婦の腹部に生じた水ぶくれは、本件美容機器の電気刺激(火傷)により生じたものと推認され、また、本件会社の従業員から説明されたとおりの方法で本件美容機器を使用したにもかかわらず水ぶくれができるなどしたことによれば、本件美容機器には設計上の欠陥があった可能性が認められ、さらに、使用することで火傷が生じるおそれがあった本件美容機器を製造した本件会社には、使用者に対し、書面をもって本件美容機器の使用による火傷のおそれがあることを警告するとともに、火傷が生じないよう使用者が注意すべきことを明らかにする義務があったにもかかわらず、本件美容機器に添付されていた取扱説明書には火傷に関する注意が十分記載されていなかったと推認されるから、本件美容機器は通常有すべき安全性を欠いた欠陥が認められ、本件会社は製造物責任を負う。
②は判断せず。
メッキ装置内ヒーター爆発事件 メッキ装置に使用するヒーターの納入会社 メッキ装置に使用するヒーターを組み込んだ無電解すずメッキ装置を顧客に納品した無電解すずメッキ装置設計製作会社が、本件ヒーターが爆発して本件メッキ装置の処理槽等が破損するという事故が発生したとして、本件ヒーターの納入会社に対し、製造物責任法3条、瑕疵担保責任又は債務不履行に基づいて損害賠償を求めた事案。 ①製造物責任法は損害賠償請求権の主体となり得る被害者につき何ら制限を設けていないし、同法の目的に照らしても、被害者が自然人か法人か、又は消費者か事業者かにより、同法の適用の有無を分けるべき理由は見当たらないから、本件メッキ装置製作会社も被害者として同法に基づく損害賠償請求権の主体となり得る。
本件ヒーターには、密閉型の外管にしたという外管の構造上の欠陥が存在し、また、本件ヒーターの外管内部に液体が異常浸入等した場合を想定して、漏電を起こすことで電気の供給が停止する構造を採用しなかったという製造上の欠陥があったと認められる。
③本件ヒーターの設計は本件メッキ装置製作会社と本件ヒーターの納入会社とが共同で行ったものであり、本件ヒーターの欠陥は専ら本件メッキ装置製作会社の行った設計に関する指示に本件ヒーターの納入会社が従ったことにより生じたものとはいえないから、本件ヒーターの納入会社には免責事由(製造物責任法4条2号)は認められない。

轟音(ごうおん)玉爆発手指欠損事件 不明(一審被告:火薬・花火類製造販売業者) 動物駆逐用花火が右手内で爆発したために、右手指の欠損、聴力障害の後遺障害を生じた男性が、本件事故の原因は同花火の欠陥にあると主張して、同花火を製造した火薬・花火類製造販売業者に対し、損害賠償を求めたことにつき、本件花火の警告上の欠陥を認めるなどした第一審に対する控訴審の事案。 ①原判決を引用して、本件花火に製造上の欠陥、設計上の欠陥は認められないとした。                                                    ②本件花火の点火確認後直ちに投げるように注意を促すのみでは足りず、点火しても火が導火線を伝って燃え進むのを外観上認識できないことを説明し、点火の確認ができなくても直ちに投げるように警告すべきであったから、本件花火は、警告上の観点からみて、通常有すべき安全性を欠いていたと認められる。                                                 ③本件花火に、外観上導火線が燃え進んでいかないので点火口を擦ったらすぐに投げるべきことについての警告がされていれば、本件事故は発生しなかった蓋然性が高いと認められるから、本件花火の警告上の欠陥と本件事故との間には、相当因果関係があると認められる。                                                                                      ④本件男性が、本件取扱説明書に記載された警告に反するような行動をとったこと、一定程度の火薬類の知識を有しており、本件花火購入の際に店員から事故例も聞かされていたこと、本件事故発生前までに本件花火を使用した経験を有していること等考慮して、本件男性の過失割合を90%とする過失相殺を認めた。
肺がん治療薬死亡等事件(大阪) 各事件被告:肺がん抗がん剤輸入販売会社及び国 肺がん抗がん剤輸入販売会社が輸入販売した非小細胞肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に副作用である間質性肺炎を発症して死亡した各患者らの遺族及び間質性肺炎を発症した患者本人が、本件会社に対しては製造物責任法等に基づく損害賠償を求め、国に対しては適切な規制権限の行使を怠ったとして国賠法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件抗がん剤承認当時及び現在において、本件抗がん剤はセカンドライン治療及びファーストライン治療における有効性に比して危険性が上回るとはいえないから、有用性が認められる。
②本件抗がん剤は承認時及び現在において、セカンドライン治療及びファーストライン治療で有用性が認められるから、本件抗がん剤に設計上の欠陥(有用性の欠如)は認められないものの、本件会社は、第1版添付文書の重大な副作用欄の最初に間質性肺炎を記載して注意喚起すべきであったから、注意喚起が図られないまま販売された本件抗がん剤は抗がん剤として通常有すべき安全性を欠き、承認当時の本件抗がん剤には指示・警告上の欠陥があったとして製造物責任を認める一方、本件会社に過失責任はないとして不法行為責任を否定した。
③薬事法等の各法令の規定、目的などによれば、厚生労働大臣に本件抗がん剤承認時の義務違反や承認後の安全性確保義務違反(規制権限の不行使)は認められない。
④本件会社が適切な警告をせずに本件抗がん剤を販売したことと、間質性肺炎の発症等による死亡及び間質性肺炎の発症との間の因果関係があるというためには、本件抗がん剤を投与されなかったならば間質性肺炎等の発症等により死亡することはなかったこと又は間質性肺炎等を発症しなかったこと、本件会社による指示・警告がなされていれば本件患者らに対して本件抗がん剤が投与されなかったことという要件が満たされる必要があるところ、本件では各要件を満たすといえるから、損害との間の因果関係が認められる。
健康食品呼吸器機能障害愛知事件 健康食品製造会社、健康食品販売会社、雑誌発行会社及び記事公表者 雑誌発行会社発行の雑誌上で、健康食品製造会社が製造し、健康食品販売会社が販売する健康食品(あまめしば)に関する記事を読んで本件あまめしばを購入・摂取した母娘が、閉塞性細気管支炎等の呼吸器機能障害を発症したとして、健康食品製造会社に対して製造物責任法3条に基づき、健康食品販売会社に対して同法3条又は不法行為に基づき、本件健康食品に関する記事を掲載した雑誌発行会社及び本件記事を公表した者に対して不法行為に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案。 ①本件あまめしばを1回につきスプーン1杯を目安として摂取するという通常予見される使用方法に従って使用した場合にも閉塞性細気管支炎が生じうることが認められるし、本件母娘が本件あまめしばを最初に購入した段階以前に、本件製造会社があまめしばにより閉塞性細気管支炎を来した症例を知ることは可能であったから、本件あまめしばは通常有すべき安全性を欠いており、製造物責任法上の欠陥を有する。
②本件母娘が本件あまめしばを最初に購入した段階以前に、各種の医学雑誌において、あまめしばの摂取により閉塞性細気管支炎を来した症例を知ることは可能であったから、その知見は本件あまめしばの欠陥の有無を判断するに当たり影響を受ける程度に確立された知識であったということができ、本件製造会社は本件あまめしば引渡し当時、本件あまめしばに欠陥があることを認識できたのであるから、開発危険の抗弁は成立せず、本件製造会社は本件母娘に対して製造物責任法に基づく責任を負う。
③本件販売会社は、本件あまめしばの製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて本件あまめしばにその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者に該当し、製造物責任法2条3項3号による製造業者等であると認められる上、本件あまめしばは製造物責任法上の欠陥を有するから、本件販売会社は本件母娘に対して製造物責任法に基づく責任を負う。
④本件雑誌にはあまめしばの効用のみを強調する内容の記事が掲載され、あまめしばの摂取と閉塞性細気管支炎との関連性は触れられていなかったことからすれば、本件記事は実質的には本件母娘への本件あまめしばの販売を促進し、本件母娘に本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させたと認められるものの、本件雑誌発行会社にはあまめしば摂取による重篤な肺疾患発症の予見可能性はなかったというべきであるから、本件雑誌発行会社に過失は認められず、不法行為責任は認められない。
⑤本件記事はあまめしばの摂取と閉塞性細気管支炎との関連性について触れた部分がないことからすれば、本件記事公表者は本件あまめしばにより健康になることはあっても病気になることはないと本件母娘に誤信させ、本件母娘への本件あまめしばの販売を促進し、本件母娘に本件あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎を発症させたと認められる上、本件記事公表者は医学博士の肩書を示して本件記事を執筆しており、あまめしば摂取による閉塞性細気管支炎の発症という危険性を予見でき、その危険性を警告することによって本件母娘の閉塞性細気管支炎発症を回避することも可能であることなどからすれば、本件記事公表者には不法行為責任が認められる。
焼却炉燃焼爆発工場全焼事件 焼却炉製造販売業者 焼却作業中に木製サッシ製造販売会社の従業員が焼却炉製造販売業者製造の焼却炉の灰出しロの扉を開いたところ、焼却炉の欠陥によりバックファイヤー(燃焼爆発)が発生し、本件従業員に火傷を負わせ、舞い上がった火の粉によって火災を発生させたとして、木製サッシ製造販売会社及びその従業員が焼却炉製造販売業者に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件焼却炉は改正基準に適合した焼却炉であり、燃焼中に灰出し口の扉を開けると外気が急激に流入してバックファイヤーが発生し炉外に火炎が噴出する可能性があることは、やむを得ないものであるものの、焼却後に灰を取り出すために灰出し口を設置すること自体は必要であるから、燃焼中に灰出し口の扉を開けるとバックファイヤーが発生して火炎が炉外に噴出することがあるとしても、これをもって本件焼却炉に設計上の欠陥があるということはできない。
②本件焼却炉はその取扱いに詳しくない一般の人が使用する場合には燃焼中に灰出し口の扉を開ける可能性も考えられることからすれば、本件製造販売業者が、燃焼中に灰出し口の扉を開けるとバックファイヤーが発生して火炎が炉外に噴出する危険性を予見することは可能であったから、本件製造販売業者は木製サッシ製造販売会社に対して同危険性があることを指示、警告する措置を講じる義務があったにもかかわらず、同危険性を指摘したマニュアルを交付せず、口頭で同危険性につき指示、警告すること等もなかったのであって、本件焼却炉には指示・警告上の欠陥があったといえる。
自動車シートベルトエアバック欠陥事件 交通事故の加害者及び自動車製造会社 交差点を直進しようとする被害女性運転の自動車と対向車線から右折する加害者運転の自動車が衝突した事故につき、被害女性が、交通事故の加害者に対しては不法行為に基づき、被害車両である本件自動車の製造会社に対してはシートベルト及びエアバック等に欠陥があったとして製造物責任または黙示の安全保証義務の違反に基づき損害賠償を求め、被害女性を雇用している会社が、交通事故の加害者に対しては不法行為に基づき、同自動車製造会社に対しては製造物責任に基づき、損害賠償を求めた事案。 被害女性は本件事故により右脇腹部の肋骨骨折の怪我を負い、下腹部にシートベルト(腰ベルト)によるものと思われる圧迫痕ないし擦過痕が生じていたところ、それらの形状からすれば、被害女性の下腹部の圧迫痕ないし擦過痕は、本件シートベルトのロック機能が作動し、同部がシートベルト(腰ベルト)で固定され続けたため、加害車との衝突及び歩行者用信号機の支柱との衝突を通じて荷重がかかり形成されたものと認めるのが相当であるから、本件シートベルトのロック機能が正常に作動しない欠陥があったとはいえない。
②本件事故における本件自動車と加害車の衝突形態は前面衝突ではないから、クラッシュ・パルスが基準値に達しなかったためETR及びエアバッグが作動しなかった可能性があり、本件自動車が加害車と衝突したにもかかわらずETR及びエアバッグが作動しなくても、そのことから直ちにETR及びエアバッグに欠陥があるということはできないし、本件事故の衝突形態は本件自動車の一部が極端に変形するような衝突の場合にあたるから、ETR及びエアバッグが作動しなくても、そのことから直ちにETR及びエアバッグに欠陥があるということもできず、本件自動車のETR及びエアバッグが作動しなかったことは欠陥にあたらないため、製造物責任は認められない。
③本件事故の態様からすれば、過失割合は、本件自動車につき20、加害車につき80とするのが相当であるとして、過失相殺を認めた。
④被害女性の後遺障害については、右下眼瞼、鼻孔下部及び鼻背を中心とする線状痕(右頬部の知覚鈍麻を含む。)については後遺障害等級7級12号に該当し、外傷性嗅覚障害については嗅覚脱失に至っているから後遺障害等級12級相当に該当するので、後遺障害の程度はこれらの後遺障害を併せて後遺障害等級併合6級に該当すると認められる。
肺がん治療薬死亡事件(東京) 各事件被告:肺がん抗がん剤輸入販売会社、国 肺がん抗がん剤輸入販売会社(本件会社)が輸入販売した肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に死亡した各患者の遺族らが、同社に対しては製造物責任法等に基づく損害賠償を、国に対しては適切な規制権限の行使を怠ったとして国賠法に基づく損害賠償を求めた事案。 本件抗がん剤は、承認当時、「手術不能又は再発非小細胞肺がん」について効能、効果を有するといえ、その効能、効果に比して著しく有害な作用を有することにより医薬品として使用価値がないとは認められないから、有用性が認められる。
②本件添付文書第1版の記載では、本件抗がん剤を使用する医師等に対する間質性肺炎の副作用に係る安全性確保のための情報提供として不十分であったから、厚生労働大臣は本件抗がん剤の輸入承認に当たり、本件会社に添付文書の記載を改めるよう指導すべく権限を行使すべきであったのであり、他に安全性確保のため十分な措置が講じられたなどの特段の事情も認められない本件では、同大臣の権限不行使は国賠法上違法といえるが、同大臣による本件添付文書第3版のとおり記載する旨の指導により、同権限不行使による違法状態は解消されたと認められる。
③現在の知見において、本件抗がん剤は副作用による有害性が著しく有効性を考慮してもなお使用価値がないものとはいえず、設計上の欠陥はないものの、本件添付文書第1版の記載では安全性確保のための情報提供として不十分であるから、本件抗がん剤には指示・警告上の欠陥があり、通常有すべき安全性を欠くとして製造物責任を認め、また、本件添付文書第3版への改訂により、同指示・警告上の欠陥は消滅したとした上、広告宣伝上の欠陥、販売上の指示に関する欠陥は否定した。
④本件会社は、本件抗がん剤販売開始当時、本件添付文書で有効性及び安全性が確立していない旨の注意を記載しており、このような指示・警告は当時の医学的、薬学的知見に基づくものであったとして、適応限定義務を否定し、また、本件添付文書第3版は安全性確保のための情報提供として十分なものであるから指示・警告義務違反はなく、さらに、本件抗がん剤承認当時では使用可能な医師や医療機関を限定することや、全例登録調査が必要であったとは認められず、本件会社に販売上の指示をすべき義務はないとした上、本件添付文書第1版の記載は安全性確保のための情報提供としては不十分であったが、本件添付文書第3版の記載は安全性確保のための情報提供としては十分であるから、改訂により本件抗がん剤の指示・警告上の欠陥は消滅したとして、承認後の指示・警告等の安全性確保義務を否定し、本件会社の不法行為責任を否定した。
⑤本件添付文書第1版時に本件抗がん剤を投与された患者については、本件抗がん剤投与と本件抗がん剤の副作用である間質性肺炎による死亡との間の因果関係を認めることができるが、第3版改訂後に本件抗がん剤投与を開始した患者については、医師から本件抗がん剤による間質性肺炎が致死的となり得ることの説明を受けた上で本件抗がん剤による治療に同意していたと認められるとして、投与と死亡との間の因果関係を否定した。
⑥消滅時効の起算点は、遺族が、患者の死亡事実のほか、同患者が本件抗がん剤による間質性肺炎で死亡した事実を認識したことを要するところ、本件では、本件患者が本件抗がん剤による間質性肺炎で死亡した事実を本件遺族が知った時点によれば、消滅時効期間は経過していないとして、消滅時効を否定した。
卓球台転倒受傷事件(1) 卓球台輸入会社、地方自治体 折りたたんだ状態の卓球台を開こうとしたところ、卓球台が倒れこんできて足を挟まれ、中足骨骨折など受傷した。  
卓球台転倒受傷事件(2) 卓球台輸入会社、地方自治体 折りたたんだ状態の卓球台を動かしたところ、卓球台が倒れこんできて足首を挟まれて負傷した。  
光モジュール出力劣化事件 光学電子部品開発製造米国法人、光学電子部品開発製造台湾法人 光学電子部品開発製造台湾法人(台湾法人)が製造し、光学電子部品開発製造米国法人(米国法人)の旧商号を表示するロゴマークが付された光モジュール(電気信号と光信号を相互に変換するための電子部品)を組み込んだ自社製品を販売していた電気通信装置等開発製造販売会社が、本件モジュールに搭載されたレーザーダイオード(LD)に活性層の結晶欠陥という隠れた瑕疵が存在し、これにより光出力劣化を生じており保証品質を備えていないとして、台湾法人に対しては、瑕疵担保責任、製造物責任等に基づき、米国法人に対しては、製造物責任等に基づき、損害賠償を求めたところ、各法人が本件訴訟の管轄は我が国の裁判所にないとする本案前の答弁を主張した中間判決の事案。 我が国の裁判所に管轄を肯定するために必要な客観的事実関係及び併合請求の裁判籍を検討するなどして、電気通信装置等開発製造販売会社の台湾法人に対する各請求につき国際裁判管轄を認めるとともに、米国法人は、自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標、その他の表示をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者に当たるなどとして、電気通信装置等開発製造販売会社の米国法人に対する請求についても国際裁判管轄を認めた。
無許可添加物混入健康食品慰謝料請求事件 健康食品製造販売会社(一審被告)、同製品通信販売会社(一審被告)、健康食品購入者2名(一審原告) 健康食品製造販売会社製造の本件各製品を同製品通信販売会社から通信販売で購入した者らが、同製品には、食品衛生法6条により食品への添加が認められていないエトキシキンが含まれていたとして、各社に対し、製造物責任等に基づく損害賠償を求めたことにつき、製造販売会社の製造物責任を否定する一方、通信販売会社の債務不履行を認めるなどした第一審に対する控訴審の事案。 ①本件購入者らが本件各製品を摂取し、エトキシキンが体内に入ったことにつき、発がん性などの危険性は認められないから、本件製造販売会社に不法行為責任は認められない。
②本件製造販売会社と本件通信販売会社とは本件各製品の販売に関して同一体とはいえず、本件製造販売会社が本件購入者らに本件各製品を販売したとは認められないから、同社に債務不履行責任は認められない。
③製造者が製造物責任を負うには、引き渡した製造物についての欠陥により他人の生命、身体等を侵害したことを要するところ、エトキシキンを混入している本件各製品の摂取により本件購入者らに発がんなどの危険性が生じたとは認められないから同人らの身体を侵害した事実はなく、また、単に精神的苦痛が発生しただけでは身体の侵害があったとはいえないから、本件製造販売会社に製造物責任は認められない。
④本件製造販売会社に不法行為責任が認められない以上、同社との共謀を前提とする本件購入者らの主張は採用できず、本件通信販売会社に不法行為責任は認められない。
⑤本件購入者が健康に効果があると認識して本件各製品を購入するものと思料されることなどによれば、同人らは、債務の本旨の履行としてエトキシキンの混入していない商品の引渡しを請求できるところ、同人らが購入した製品は当時出荷停止及び製造中止となっており、同債務の履行をすることは社会通念上不可能であったから、本件通信販売会社は債務不履行責任を負い、本件購入者らは債務不履行による損害賠償を請求できる。
⑥本件製造販売会社に製造物責任が認められない以上、同社との共謀を前提とする本件購入者らの主張は採用できず、本件通信販売会社に製造物責任は認められない。
折りたたみ足場台脚部座屈傷害事件 足場台製造会社、足場台販売会社 足場台販売会社から購入した足場台製造会社製造の折りたたみ足場台の上で修理作業をしていた男性が、突然足場台脚部最下段の桟が座屈したため転落し、外傷性気胸及び肋骨(ろっこつ)骨折の傷害を負ったとして、販売会社に対しては瑕疵担保責任に基づき、製造会社に対しては製造物責任に基づき、損害賠償を求めた事案。 男性が本件足場台購入後、同足場台を通常の用法に従い使用していたと推認される一方で、本件製造会社による納入当時から、本件足場台に本件変形の原因となる不具合があったと推認されることなどからすれば、本件足場台には製造物責任法上の欠陥及び隠れたる瑕疵があったと認められる。
食肉自動解凍装置バリ付着事件 食肉自動解凍装置製造業者(控訴人(一審原告)) 食肉自動解凍装置を稼働させた際に解凍食肉に金属異物が付着するという事故に関し、食肉自動解凍装置製造業者が、同装置に使用したポンプ及びバルブに欠陥があるとして、ポンプ製造業者及びバルブ製造業者に対し、製造物責任法3条等に基づいて損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審、本件ポンプ及び本件チャッキバルブが通常有すべき安全性を欠いていたとした控訴審に対する上告審の事案。  
食肉自動解凍装置バリ付着事件 食肉自動解凍装置製造業者(控訴人(一審原告)) 食肉自動解凍装置を稼働させた際に解凍食肉に金属異物が付着するという事故に関し、食肉自動解凍装置製造業者が、同装置に使用したポンプ及びバルブに欠陥があるとして、ポンプ製造業者及びバルブ製造業者に対し、製造物責任法3条等に基づいて損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審、本件ポンプ及び本件チャッキバルブが通常有すべき安全性を欠いていたとした控訴審に対する上告審の事案。  
パチスロ機電源火災事件 電源開発業者(一審甲事件被告)、電源製造者表示業者(一審甲事件被告兼一審乙事件原告)、電源納入業者(一審甲事件被告)
電源開発業者及び電源製造者表示業者の製造に係るパチスロ機用の電源を使用したパチスロ機に火災が生じたことにつき、パチスロ機等の遊技機器製造販売業者が、電源納入業者、電源開発業者及び電源製造者表示業者に対し、損害賠償を求め(甲事件)、パチスロ機焼損事故の発生を受けて同遊技機器製造販売業者の協力会社らに交換用の電源を納入した同電源製造者表示業者が、本件電源に欠陥がない以上、遊技機器製造販売業者は交換用電源を無償で取得できる法律上の根拠はないなどとして、不当利得の返還を求めた(乙事件)ことにつき、甲事件の請求を棄却し、乙事件の請求を認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①原判決を引用するなどしたほか、電源開発業者及び電源製造者表示業者と遊戯機器製造販売業者との間の契約内容、本件電源開発に係る経緯、本件電源が荷電流保護機能に係る本件特性を備えていたことと本件事故との因果関係が明らかでないこと等から、本件電源が通常有すべき安全性を欠いているともいえないなどとして、電源開発業者らの債務不履行を否定した。
②③判断するまでもないとした原判決を引用して判断せず。
④電源開発業者らの債務不履行が認められないから判断するまでもないとして否定した。
⑤原判決を引用して無償提供の合意の成立を否定した。
収納箱児童窒息死事件 収納箱輸入業者から営業及び商号の譲渡を受けた会社(被参加事件一審被告)及び収納箱輸入業者(独立当事者参加一審参加人) 児童が自宅の居間に置かれていた収納箱に入って遊んでいるうちに、蓋が閉まった際に留め金がかかり、その中で窒息死したのは、本件箱に製造物責任法の構造上の欠陥及び表示上の欠陥があったためであるとして、死亡した児童の両親が収納箱輸入業者及び同社から営業及び商号の譲渡を受けた会社に対して、商法26条1項により、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件箱に製造物責任法にいう欠陥があったとはいえないとして請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。 本件児童はかくれんぼ遊びのため本件箱に自ら入ったこと、本件箱の本来の使用用途、本件箱の大きさや性状からして児童が誤って本件箱に入るとは通常考え難いこと、本件箱の現実の使用状況等を勘案すると、本件児童がかくれんぼ遊びのために本件箱の中に自ら入ったことは、通常予見される使用形態を超え、その用法を逸脱して使用したものであって、通常人がかかる使用形態を合理的に予見することができたとはいえず、本件箱は通常有すべき安全性を欠いていたとは認められないし、本件箱について、子どもが本件箱の中に入った際に蓋が閉まると内側から開けられなくなり、短時間で酸欠に陥って窒息死するという客観的危険性があり、それを設計、製造の段階で容易に除去しうるとしても、ただちに製造物責任法の欠陥に当たるとはいえない。
トラック欠陥放置事件 トラック等の開発製造会社 本件自動車会社製造のトラック18台を本件販売会社から購入した産業廃棄物等の収集運搬業者が、本件各車両には各欠陥が存在するところ、本件自動車会社及び本件販売会社は本件各車両について設計、製造及び修理等を適切に行わず、また、本件欠陥を認識していたにもかかわらず適切な対策をとらなかったなどとして、本件自動車会社及び本件販売会社の権利・義務を承継したトラック等の開発製造会社に対し、不法行為又は売買契約に付随する安全確保義務若しくは修理契約に基づく適正修理義務の債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件産廃業者主張の不具合の一部を認めた。
②上記①で認めた不具合のうち、リコールの対象車両における同リコールの対象部位に生じた不具合は、同リコールが想定する欠陥に基づくものであることが強く推認できるなどとして、同車両には製造物が通常有すべき安全性を欠くものというべき欠陥があるとした。
③本件製造会社が製造・販売する車両に関するクレーム情報をユーザーに知り得る形で公開し、又は、同情報に基づくリコール届出を行い、かつ、本件産廃業者が同情報を知った時点を起算点とすると消滅時効は完成していない。
④本件製造会社の行ったトランスミッションの修理の一部について同社の修理義務違反(債務不履行)を認めた。
⑤本件産廃業者のいう本件販売会社の安全確保義務違反に基づく損害賠償請求における債務不履行及び損害の内容は、不法行為に基づく損害賠償請求における販売上の過失及び損害の内容と共通するから、不法行為に基づく損害賠償請求における認容額を超えるものではない。
⑥本件販売会社による債務不履行に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、本訴提起時点で消滅時効が完成している。
電気ストーブ化学物質過敏症事件 ストーブ販売会社(一審被告) ストーブ販売会社が販売した電気ストーブから有害化学物質が発生したため中枢神経機能障害、自律神経機能障害を発症し化学物質過敏症になったとするストーブ使用者が、両親とともに、同社に対し、不法行為、債務不履行又は製造物責任法に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件使用者の症状と本件ストーブから発生する化学物質との因果関係を否定して請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。 ①本件使用者の本件症状は、本件ストーブから発生した化学物質により生じたものであり、同人は、慢性症状として化学物質に対する過敏症を獲得したと認められる。
②本件販売会社には、化学物質発生に関する予見義務及び検査確認義務を尽くし、本件同型ストーブを購入する顧客に対し、使用により健康被害が生じないよう結果発生を回避すべき義務があったにもかかわらずこれらを怠り、特段の対応をしなかったのであるから、本件使用者の本件症状発生につき注意義務違反による過失があるとして、不法行為責任を認めた。
③両親の債務不履行責任の主張につき、契約当事者でないか、慰謝すべき精神的損害が発生していないとして、本件販売会社の同人らに対する債務不履行責任を否定した。
④両親の製造物責任の主張についても、慰謝すべき精神的損害は認められないとして、本件販売会社の同人らに対する製造物責任を否定した。
旋回ベアリング取付ボルト折損クレーン旋回台落下事件 A事件被告:クレーン製造業者
B事件被告:下請会社
C事件被告:下請会社から請け負った工事中にクレーンの旋回台が台車から落下するという事故にあった孫請会社
孫請会社が、下請会社から発注された基礎工事にクレーン製造業者製造のクレーンを使用していたところ、同クレーンの旋回台と台車を結合している旋回ベアリング取付ボルトが全て折損し、旋回台が台車から落下する事故が生じたため、クレーン製造業者に対し、製造物責任に基づく損害賠償を求める(A事件)とともに、下請会社に対し、請負代金の支払及び本件事故による孫請会社の債務不存在確認を求め(B事件)、本件事故による損害を賠償した元請会社に求償金を支払った下請会社が、孫請会社に対し、求償金の支払を求めた(C事件)事案 ①孫請会社は、本件事故時、過負荷状態が警告されていたにもかかわらず、これを無視して過負荷状態が頻発、連続する条件下で本件クレーンを継続的に使用していたから、孫請会社の本件クレーン使用形態は「通常予見される使用形態」ではなかったといえる。
②本件クレーンの使用形態が定格総重量を遵守した「通常予見される使用形態」であれば、本件ボルトの破断という本件事故は発生せず、本件事故は、定格総重量を超えた使用を間断なく連続し、本件ボルトが規定トルクよりも緩んだ状態となっていたことと相まって発生したと認められるから、本件クレーンには設計上の欠陥も、指示・警告上の欠陥もない。
③本件事故は、孫請会社が定格総重量を超えた使用を間断なく連続し、本件ボルトが規定トルクよりも緩んだ状態となっていたことと相まって発生したものであるから、もっぱら孫請会社の帰責事由により発生したものである。
電気ストーブ化学物質過敏症別訴事件 ストーブ輸入販売会社 ストーブ輸入販売会社(本件会社)が輸入した電気ストーブから有害化学物質が発生したため中枢神経機能障害、自律神経機能障害を発症し化学物質過敏症になったとするストーブ使用者が、両親とともに、本件会社に対し、製造物責任又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件使用者が本件ストーブから暴露した有害化学物質の量は、人体に影響を生じ得る程度の量であったと認められるから、同人の本件症状は、本件ストーブにより発生した化学物質を原因とするものと推認される。
②本件ストーブは、ガード部分が加熱されることで有害な化学物質を発生させるものであったと認められるから、通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法上の欠陥が認められる。
③本件会社の過失に関する主張は製造物責任法4条1項の主張とみる余地があるところ、本件会社は、本件ストーブから有害化学物質が発生し健康被害を引き起こす可能性を認識し得たと認められ、本件ストーブ引渡時における科学又は技術に関する知見によれば、当該製造物に欠陥があると認識できなかったとはいえないから、製造物責任が認められる。
④本件会社は、発症要因を本件ストーブの使用と判断できるとした意見書を出した医師による最初の診断時から、時効が進行すると主張するものの、同時点で同医師は断定的な話をしていなかったから、消滅時効の主張は採用できない。
⑤本件使用者に損害の拡大に寄与した遺伝的要因や身体的要因があったとは認められない上、本件使用者は本件ストーブを使い続けるうちに同ストーブの異臭が気にならなくなったのであり、同人に使用中止や換気をする義務があったとは認められないから、過失相殺は認められない。
焼肉店無煙ロースターダクト発火事件 本訴被告:韓国料理経営会社
反訴被告:燃焼器具販売業者
韓国料理経営会社(本件会社)が経営する焼肉店で発生した火災の修復工事等を請け負った燃料器具販売業者(本件業者)が、工事代金の支払を求めた(本訴)のに対し、本件会社が、本件火災は本件業者が製造販売設置したダクト式無煙ロースターの欠陥等により発生したとして、製造物責任法又は不法行為に基づく損害賠償を求めた(反訴)事案。 ①本件火災の出火原因は、本件会社が本件ロースターの点検清掃を怠ったことにより同ロースターのダクト部点検口及びダクト内に大量の油脂が付着し、当該ダクト内の防火ダンパーが正常に機能せず、吸い込まれた炭化物が付着した油脂に着火してできた火炎が防火ダンパーで遮断されずにダクト内を火炎伝送したことによるものと認められる。
②本件火災の出火原因は本件会社が本件ロースターの点検清掃を怠ったことにあり、同ロースターやダクト等の附属設備の欠陥によるものでないから製造物責任は認められない。
③本件火災は本件ダクト又は防火ダンパーの瑕疵により発生したものではない上、本件会社主張の本件業者の故意又は過失と本件火災の発生との間にはそもそも因果関係がないから、本件業者に不法行為責任は認められない。
軽貨物車燃料ホースクラック出火事件 自動車製造業者 運送業者の従業員が運転していた自動車のエンジンルーム付近から出火する事故につき、運送業者が自動車製造業者に対して、不法行為あるいは製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めた事案。 本件燃料ホースは、定期点検における交換が予定されていない部品であること、本件燃料ホースのクラックの発生は、燃料もれを起こしたり、もれた燃料に引火するなどして容易に本件事故のような火災の原因ともなりうるものであることなどからすれば、自動車製造業者には、本件車両全体の耐久期間内の合理的な使用という範囲内において高度の安全性を実現する義務があるところ、本件燃料ホースはその安全性を実現するに足りる性能を備えていないのであるから、自動車製造業者は同義務に違反し、過失が認められる。
  
焼却炉燃焼爆発工場全焼事件 木製サッシ製造販売会社(一審原告) 焼却作業中に焼却炉製造販売業者製造の焼却炉の灰出しロの扉を開いた際、同焼却炉の設計上の欠陥又は指示・警告上の欠陥による燃焼爆発(バックファイヤー)により火の粉が飛散し、木製サッシ製造販売会社所有工場を全焼させ、同社作業員に火傷を負わせたとして、同社及び同作業員が、本件業者に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めたことにつき、請求を全部認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①本件業者は、本件会社が従前の焼却炉の使用方法に従って本件焼却炉燃焼中に灰出し口の扉を開いてバックファイヤーを招く危険性を予見し、燃焼中に灰出し口を開けてはならないこと及び開けた場合の危険性につき指示、警告する必要があったにもかかわらずこれを怠ったから、指示・警告上の欠陥が認められる。
②本件焼却炉設置個所の天井の材質及び高さによれば、本件会社の従業員が2階床下からの出火を予想して2階床下まで水を撒くべきであったとはいえず、また、同社従業員が適切な監視を行っていても、本件火災発生を回避できたとはいえないから、本件焼却炉の欠陥と本件火災との間には因果関係が認められる。
③本件バックファイヤーの主たる原因は、本件焼却炉の指示・警告上の欠陥にあり、本件バックファイヤー発生に関する本件会社の過失は15%にとどまる。 
カプセル玩具誤飲高度後遺障害事件 カプセル入り玩具製造業者 カプセル入り玩具のプラスチック製球状カプセルを2歳10か月の男児が飲み込んで低酸素状態となり脳に重度の後遺症が残ったため、男児及びその両親が、本件カプセル入り玩具の製造業者に対し、本件カプセルには設計上及び表示上の欠陥があったとして、製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件カプセルの表面にある削られた跡は、医師が男児の口腔から事故原因カプセルを除去する際に使用したコッヘルによるものと認められるから、事故原因カプセルは、本件製造業者製造の本件カプセルと同一物といえ、本件製造業者が事故原因カプセルの製造業者であると認められる。
②本件カプセルは、3歳未満の幼児が玩具として使用することが通常予見される使用形態であるのに、幼児の口腔内に入る危険、口腔内に入ると除去や気道確保が困難になり窒息を引き起こす危険があるもので設計上通常有すべき安全性を欠いており、欠陥が認められるとして、製造物責任を認めた。
③男児らは本件窒息事故発生日には、賠償義務者が本件製造業者であると知ったから、男児の後遺障害による損害以外については同日から時効期間が進行し、時効消滅したといえるものの、後遺障害による損害については症状固定時から時効が進行するから、消滅時効は完成していない。
④本件窒息事故のような自宅内での幼児の窒息事故を防止する注意義務は、一次的には男児の両親らにあるところ、同両親らは、男児が本件カプセルで遊んでいるのを漫然放置し、十分な管理、監督を怠って同注意義務を十分果たさなかったとして、7割の過失相殺を認めた。
ノートパソコンディスプレーゆがみ事件 電気機械器具製造業者(一審被告) 電気機械器具製造業者製造のノートパソコンを購入した者が、本件パソコンのディスプレーはくさび形Vの特異形状をしているため、開閉時にゆがみ、ディスプレーに均等に配分されない内力が生じる欠陥を有しており、同欠陥による故障のために折りたためなくなり持ち運びできなくなったから、通常有すべき性能を欠くとして、また、本件業者から悪質な対処を受けたとして、製造物責任法3条又は民法709条、715条による損害賠償を求めた事案。 ①いかなる原因で本件購入者主張の本件故障が発生したのかを特定することはできないから、本件パソコンに欠陥があるとはいえない。
②本件欠陥の存在は認定できない上、本件欠陥が原因で本件故障が発生したと断定することも困難であるから、売買目的不達成に係る本件購入者の主張は理由がない。
③本件業者が悪質な対処をしたとする本件購入者の主張は、本件全証拠によっても本件パソコンにつき本件欠陥による本件故障を認定できない以上、前提を欠き理由がない。
収納箱児童窒息死事件 不明
(被控訴人:収納箱輸入業者から営業及び商号の譲渡を受けた会社(被参加事件一審被告)及び収納箱輸入業者(独立当事者参加一審参加人))
自宅の居間に置かれていた収納箱の中で窒息死した子の両親が、本件箱に製造物責任法にいう欠陥があったためであるとして、本件箱を輸入した会社から営業及び商号の譲渡を受けた会社に対し、損害賠償を求めた(被参加事件)ところ、同輸入会社が、本件事故について、製造物責任法に基づく損害賠償債務を負わないことの確認を求めて独立当事者参加した(独立当事者参加事件)ことにつき、両親の請求を棄却し、輸入会社の請求を認容した第一審、控訴を棄却した控訴審に対する上告審の事案。  
トレーラータイヤ直撃死亡事件 不明
(一審被告:車両製造会社、国、なお、トレーラー所有会社(一審被告)とは第一審で和解)
走行中の大型トラクタ(トレーラー)から脱落した車輪と衝突して死亡した主婦の母が、本件車両の製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、運輸行政を担う被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めたことにつき、製造会社に対する請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案。  
電気ストーブ化学物質過敏症事件 不明
(被控訴人:ストーブ販売会社(一審被告))
本件ストーブを使用していて中枢神経機能障害及び自律神経機能障害を発症し、さらには化学物質過敏症の後遺症が生じたとして、本件ストーブを使用していた者とその両親が、同ストーブを販売した会社に対し、製造物責任法3条等に基づき損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審、販売会社が予見義務、検査確認義務及び結果回避義務を怠った過失を認めてストーブ使用者の請求を一部認容した控訴審に対する上告審の事案。  
ヘリコプターエンジン出力停止墜落事件 ヘリコプターエンジン製造業者 自衛隊の対戦車ヘリコプターがホバリング中、突然エンジン出力を失って約25フィート(約7.62メートル)の高さから墜落し、機体下部等を損壊して乗員2名が重傷を負った事故につき、本件事故原因は、事故機搭載エンジンの燃料制御装置内コンピュータ・アセンブリに組み込まれたN1ガバナー・サーボ・バルブ・アセンブリに装着されていたサファイアの脱落にあり、同エンジンには通常使用してもサファイアの脱落によるエンジン出力低下という欠陥があったなどとして、国が、同エンジンの製造業者であるヘリコプターエンジン製造業者に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①製造物責任法1条及び3条は損害賠償請求の主体について何ら限定しておらず、同法には他に請求主体を限定する規定も存在しない上、同法の立法過程、立法趣旨等によれば、同法の「人」、「他人」、「被害者」には法人も含まれ、法人には国も含まれるから、国は同法3条に基づく損害賠償請求の請求主体となり得る。
②本件事故機は、通常どおりの飛行をしていたにもかかわらず、突如本件エンジンが停止状態になって落着したのであり、このような事故発生は通常予想できないのに加え、本件エンジン停止に至ったのは本件コンピュータ・アセンブリ内の本件サファイアの脱落が原因であると判明しており、「欠陥」部位や態様等も特定されているから、本件サファイア脱落に至った科学的機序までは明らかでないものの、本件エンジンには「欠陥」があると認められる。
③部品等製造業者に対する指示が「設計に関する指示」といえるには、当該部品・原材料の設計自体を指定する内容であるか、又は同設計に具体的な制約をもたらすことを要するところ、本件における国の指示は設計自体に関する指示とはいえず、設計に具体的な制約をもたらす指示ともいえない上、指示と欠陥との間の因果関係も認められないから、製造物責任法4条2号の適用又は類推適用は認められない。
④特段の事情のない限り、防衛庁が本件製造請負契約の締結に当たり、製造物責任法の適用を排除する旨の合意をする意思を有していたと推認するのは相当でないところ、本件で主張された各事実をもって特段の事情に当たるとはいえないから、合意の存在は認められない。
⑤本件特約は、その文言からして請負人の瑕疵担保責任を定めるものであり、製造物責任とは法的性質を異にすること、本件契約には製造物責任に基づく損害賠償請求についても本件特約が適用される旨の定めはされていないことなどによれば、特段の事情もない本件では、製造物責任に基づく損害賠償請求についても本件特約が適用されるとは解されない。
⑥本件エンジンの欠陥が国の指示又は指図によって作出されたとは認められないから、民法636条の適用又は類推適用の主張は前提を欠き、認められない。
⑦本件サファイアの脱落原因は証拠上明らかでなく、国の指示・指定と本件エンジンの欠陥との間の因果関係も認められないこと、本件事故機が本件事故当時、本件事故の発生原因となるような飛行をしていたとはいえないことなどによれば、過失相殺は認められない。
トランス用乾燥装置発火事件 乾燥装置製造販売会社 熱風循環式乾燥装置一式を購入したトランス製造販売会社が、同社の工場において、本件乾燥装置の発火を原因とする火災により本件工場及び隣家が全半焼する事故が発生したため、本件事故の原因は本件乾燥装置の製造物責任法上の欠陥にあるなどとして、乾燥装置製造販売会社に対し、損害賠償を求めた事案。 ①本件乾燥装置の発火原因は、本件乾燥装置の温度制御プログラムが異常を生じ、過昇温防止装置が正しく作動しなかったか、もしくはその信号によりヒーター電源が遮断されなかったため本件乾燥装置内部が高温となり、その状態が相当時間継続して、本件乾燥装置内部のワニスなどに引火する等したことにあり、本件乾燥装置は通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法上の欠陥があるといえる。
②製造物責任法に基づく損害賠償に失火責任法の適用がないことは文理上明らかであるし、製造物責任法は、業として製造物を製造した製造業者に特別の責任を課すものであって、一般の失火の場合と同列に論じることはできないから、製造物責任法において失火責任法の適用は認められない。
③防爆扉の不存在と本件乾燥装置が使用不能となったこととの間には相当因果関係はなく、本件装置製造販売会社の不完全履行は認められない。
④トランス製造販売会社は、本件乾燥装置の回路が故障する可能性のあることを認識していたにもかかわらず、本件乾燥装置の点検を怠っていたことは明らかであるものの、本件乾燥装置の取扱説明書における点検・設備方法についての記載は極めて抽象的であるから、トランス製造販売会社の手落ちを過大視するのは相当ではなく、3割の割合をもって過失相殺をするのが相当である。
折りたたみ足場台脚部座屈傷害事件 不明
(一審被告:足場台製造会社、足場台販売会社)
足場台から落下して傷害を負った男性が、足場台製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、足場台販売会社に対しては瑕疵担保責任に基づき、損害賠償を求めたことにつき、本件足場台に欠陥及び隠れたる瑕疵があったなどとして、足場台製造会社及び足場台販売会社の損害賠償責任を認めて請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案。  
灯油配管フレキシブルメタルホース破損漏出事件 各種ラセン管等製造販売会社 病院施設の新築工事のうち空調設備等の工事を施工した冷暖房等装備施工業者(本件施工業者)が、同施設内に灯油を流すための配管を設置するに際し、各種ラセン管等製造販売会社(本件製造会社)製造のフレキシブルメタルホース(本件製品)を使用したところ、このうち1本が破損し破損箇所から灯油が漏出する事故が発生したことにつき、本件事故は本件製品の製造上又は指示、警告上の欠陥により生じたものであるなどとして、本件製造会社に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①破損したフレキシブルメタルホース(本件事故品)が本件製品の予定しない用途、態様で使用されたとはいえず、また、本件事故品の破損は設置後約1年3か月目に生じており、このような短期間で危険物の配管に用いられる本件製品が破損することは通常想定されていないから、本件事故品は、引渡し時点において本件製品の特性や本件製品が通常予見される使用形態に照らして通常有すべき安全性を欠く欠陥があったとして、本件製造会社の製造物責任を認めた。
②は判断せず。
③本件欠陥と結果との間には相当因果関係が認められる。
④本件は明示的一部請求の訴えが提起された場合であり、残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情もないから、本件訴えの提起は残部についても裁判上の催告としての消滅時効の中断の効力を生じ、本件施工業者が請求の拡張申立てを行ったことにより当該申立てに係る部分についても消滅時効は確定的に中断したとして、消滅時効の成立を否定した。
⑤本件病院の開設から灯油流出発見時まで1年5か月程度しか経過していないから、灯油使用量の推移からより早期に灯油流出を疑えたとはいえず、また、損害の発生及び拡大について本件施工業者に故意又は重過失があるとは認められないとして、過失相殺を否定した。
トレーラータイヤ直撃死亡事件 不明
(一審被告:車両製造会社、国、なお、トレーラー所有会社(一審被告)とは第一審で和解)
走行中の大型トラクタ(トレーラー)から脱落した車輪と衝突して死亡した主婦の母が、本件車両の製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、運輸行政を担う被告国に対しては国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めたことにつき、製造会社に対する請求を一部認容した第一審、控訴を棄却した控訴審に対する上告審の事案。  
海藻メカブ加工品金属片混入事件 海産物輸入会社 中国所在の訴外会社及びその傘下の企業が製造した海藻のメカブの加工品を海産物輸入会社が継続的に輸入し、同社が訴外おつまみ製造販売会社に売り渡していたところ、本件加工品を袋詰めする作業の際の検査において本件加工品の中から多数の金属片が発見されたことから、訴外おつまみ製造販売会社が本件加工品を袋詰めして製造販売していた商品を回収、廃棄し、保管していた袋詰め前の本件加工品を廃棄するなどしたことにつき、訴外おつまみ製造販売会社との間の生産物品質保険契約に基づいて保険金を支払った保険会社が、訴外おつまみ製造販売会社に代位して、海産物輸入会社に対し、製造物責任又は債務不履行に基づき、支払った保険金額と同額の損害賠償等を求めた事案。 Aグループ加工品については、訴外袋詰め会社の検査を通過しており、製造物責任法にいう欠陥としての金属片混入があったとは認められず、Aグループ加工品自体に係る製造物責任は問題にならない。
②Bグループ加工品は製造物であって、通常有するべき安全性を欠いているから欠陥があるといえ、これが輸入される前の中国の工場段階で金属片が混入し、混入したままで輸入されたと認められるから、海産物輸入会社が「製造者等」に当たるということができるものの、Bグループ加工品による損害は当該製造物それ自体にとどまり、拡大損害は発生していないから、製造物責任法3条ただし書にいう損害が当該製造物についてのみ生じたときに当たり、海産物輸入会社は同法の賠償責任を負わない。
③Cグループ加工品については、検査を受けていない状態のもので、製造物責任法にいう欠陥としての金属片混入があったとは認められず、Cグループ加工品自体に係る製造物責任は問題にならない。
④Bグループ加工品の欠陥である金属片の混入それ自体から、Aグループ加工品及びCグループ加工品に金属片の混入があったと推認することはできず、また、Bグループ加工品の欠陥自体から、Aグループ加工品及びCグループ加工品の回収及び廃棄が当然に行われるべきものであるということもできないから、Aグループ加工品及びCグループ加工品の廃棄等は、Bグループ加工品の欠陥による拡大損害にあたるとはいえない。
⑤製造物責任法に基づく損害賠償請求において主張立証すべき事実関係と債務不履行に基づく損害賠償請求において主張立証すべき事実関係は、大かたの事実関係を共通するものということができるから、債務不履行に基づく損害賠償請求を時機に遅れた主張として排斥するまでのことはないと考えるのが相当である。
⑥海産物輸入会社は中国側が訴外おつまみ製造販売会社の技術指導を守って本件加工品の製造を実行するよう指導監督を行うという義務、及び、異物混入が発生した場合、その原因を中国側に調査報告させ、対応策を講じさせる義務を負っていたにもかかわらず、これに反して中国側を適切に指導監督せず、本件混入が見つかった後の調査報告義務についてもこれを尽くしていなかったといわざるを得ないから、海産物輸入会社は義務違反に基づき債務不履行責任を負う。
⑦訴外おつまみ製造販売会社と海産物輸入会社との役割分担等に照らすと、最も重要な品質管理について訴外おつまみ製造販売会社社員の厳格さを欠いた技術指導等は十分にその義務を果たしていたとはいえないから、この点を訴外おつまみ製造販売会社側の過失として斟酌し、3割を過失相殺するのが相当である。
不正改造ガス湯沸器不完全燃焼一酸化炭素中毒死傷事件 ガス器具製造会社及びガス器具販売会社 ガス湯沸器の不完全燃焼を原因とする一酸化炭素中毒による死傷事故について、死亡した者の相続人ら及び本件事故により意識を失った者らが、本件事故の原因は本件ガス湯沸器に欠陥があったことにあるなどとして、ガス器具製造会社及びガス器具販売会社に対し、共同不法行為に基づき損害賠償を求めるとともに、死亡した者の相続人らが、更にガス器具販売会社に対し、同社の従業員がガス湯沸器の不正改造を行ったことが本件事故の原因であるとして、使用者責任及び不法行為に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件各湯沸器の製造・販売時点において同湯沸器に欠陥があったと認めることはできず、ガス器具製造会社らには欠陥製品を製造・販売してはならない義務違反があったとはいえない。
②ガス器具製造会社らは、修理業務に携わる者らに対して安全装置の機能を失わせる不正改造を行わないように注意を喚起すべき義務を負っていたというべき
ところ、ガス器具製造会社らは不正改造をしないように積極的な働きかけをしていたことが認められるから、ガス器具製造会社らには保守管理義務(不正改造防止義務)違反は認められない。
③本件各湯沸器自体に欠陥があったとは認められない上、本件事故以前の事故の発生場所はいずれも北海道内に限られており、それ以外の地区で本件不正改造が報告されたという証拠はなく、また、ガス器具製造会社らは、不正改造による一酸化炭素中毒事故の再発を防止するため、修理に携わる者に対して注意文書を配布して注意喚起を行い、本件事故発生後にはトレーナー制度を創設し、修理技術の向上に努めるなどしていたことからすると、本件事故が発生した当時、事故の発生した県内で一斉点検等を行うまでの義務や、日本全国の消費者に対して、本件各湯沸器と同種の機器に危険性があること等を告知するまでの義務があったものとは認められない。
④本件死亡事故について、湯沸器のコントロールボックスの配線の改造はガス器具販売会社の従業員が行ったことが推認されるところ、同従業員は湯沸器の修理を依頼された以上、本来の正しい配線を行うべき注意義務があったことは明らかであるから、結果として誤った配線を行ったことについて少なくとも過失が認められるし、電源プラグがコンセントに差し込まれていない状態で本件湯沸器を使用した行為の介在をもって相当因果関係は否定されず、本件従業員の行為と一酸化炭素中毒による死亡の結果との間には相当因果関係があると認めるのが相当であって、本件従業員の行為がガス器具販売会社の事業の執行について行われたことは明らかであるから、ガス器具販売会社は使用者責任を負う。

メッキ装置内ヒーター爆発事件 不明
(一審被告:メッキ装置に使用するヒーターの納入会社)
納入されたヒーターを組み込んだ無電解すずメッキ装置を顧客に納品した無電解すずメッキ装置設計製作会社が、製造上の欠陥を原因として本件ヒーターが爆発したことにより、その対応に要した費用及び顧客に対する損害賠償の支払等の損害を受けたとして、同メッキ装置に使用したヒーターの納入会社に対し、製造物責任法3条等に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件ヒーターの製造物責任法上の結果を認めた第一審に対する控訴審の事案。  
自転車フレーム破断転倒傷害事件 自転車製造業者 被害者が自転車製造業者(本件業者)製造の自転車で走行中、同車両のハンドル部分と車体部分の接合部の溶接箇所が突然折れたため転倒し、顔面を12針縫う傷害等を負ったとして、本件業者に対し、製造物責任法及び不法行為に基づく損害賠償を求めた事案 ①本件事故態様は、当時被害者が救急隊員や医師に説明した内容に概ね沿う内容のものであって、本件自転車で歩道を走行してきた被害者が、同歩道入口部分の車止めの柵に衝突したものである。
②本件自転車には、生産当時から本件溶接部分の母材間に隙間が存在し同部分に溶接割れが認められ、本件溶接部分の溶接不良により通常生じない本件破断に至ったと認められるから、通常有すべき安全性を欠く欠陥が認められる。
③被害者の傷害は被害者の運転上の過失と本件溶接不良とが競合して生じたもので、本件破断との間には因果関係が認められるから、本件業者には製造物責任があるものの、本件破断と相当因果関係ある損害は被害者に生じた損害の2分の1である。
デリック(貨物積卸用装置)ワイヤーロープ破断死亡事件 造船会社及びデリック製造業者 造船会社の建造船を購入した所有会社及び同社から同船の管理を受託した管理法人が、同船上に艤装されたデリック(貨物積卸用装置)製造業者製造の本件デリックのワイヤーロープ破断による死傷事故は、同デリックの欠陥によるものであるとして、造船会社及びデリック製造業者に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案 ①本件事故は、本件中央滑車ベアリング内のグリース欠乏状態に伴ってワイヤーロープが破断して発生したものであるところ、本件グリース欠乏状態の原因は、本件三連滑車に給油しても本件中央滑車ベアリング内にグリースが充填しないという製造物の欠陥が原因であるから、本件デリックには本件中央滑車のベアリングへの給油が事実上困難な構造となっていた製造物の欠陥があったといえる。
②適切なグリース給油及び取扱説明書記載の点検要領とおりの点検をしていることを前提に、更にどの状態となれば交換が必要で、どの現象が生じれば損壊の危険があり使用中止すべきかにつき、常に取扱説明及び保守・点検要領に指示・警告すべきとはいえないから、指示・警告上の欠陥はない。
③本件三連滑車のグリース給油をした本件船舶管理法人の従業員は、本件中央滑車の脇からグリースがあふれ出たことを確認しておらず、同確認をしていれば異常を発見できたと考えられるから同法人には過失が認められ、同法人に管理を委託した本件所有会社の帰責事由にもなるとして、3割の過失相殺を認めた。
携帯電話低温やけど事件 携帯電話製造会社(一審被告) 携帯電話製造会社製造の携帯電話をズボン前面ポケット内に入れて使用していた男性が、同携帯電話機の欠陥により左大腿部に熱傷を負ったとして、携帯電話製造会社に対して製造物責任法3条又は不法行為に基づき損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。 ①本件男性はズボン前面左側ポケットに本件携帯電話を入れ、被害部位である左大腿部と接触する状況にあったこと、本件携帯電話の位置、形状と本件熱傷の位置、形状はほぼ一致すること、本件熱傷は低温熱傷であること、本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度に発熱する状態(異常発熱)になることは十分あり得ること、ほかに本件熱傷の原因となり得る事由は見当たらないことなどの諸事情を総合考慮すると、本件熱傷は、本件携帯電話が低温熱傷をもたらす程度に異常発熱したために生じたもの(本件熱傷が本件携帯電話に起因すること)と推認することができる。
②本件男性は本件携帯電話をズボンのポケット内に収納して携帯するという通常の方法で使用していたにもかかわらず、その温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し、それが相当時間持続する事象が発生して本件熱傷という被害を被ったのであるから、本件携帯電話は通常有すべき安全性を欠いているといわざるを得ず、本件携帯電話には設計上又は製造上の欠陥があると認められる。
折りたたみ足場台脚部座屈傷害事件 不明
(一審被告:足場台製造会社、足場台販売会社)
足場台から落下して傷害を負った男性が、足場台製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、足場台販売会社に対しては瑕疵担保責任に基づき、損害賠償を求めたことにつき、本件足場台に欠陥及び隠れたる瑕疵があったなどとして、足場台製造会社及び足場台販売会社の損害賠償責任を認めて請求を一部認容した第一審、一審認容額を変更した控訴審に対する上告審の事案。  
岩盤浴設備高湿度卒倒事件 加湿器製造販売会社 岩盤浴設備経営会社が、加湿器製造販売会社の製造した湿度調整器の欠陥及び不適切な対応を原因として、経営する店舗の岩盤浴室内が異常な高湿度状態となり、卒倒事故が発生するなどの悪評が立って店舗の経営を軌道に乗せることができなかったなどとして、加湿器製造販売会社に対し、製造物責任又は不法行為に基づき損害賠償を求めた事案。 本件岩盤浴室内で発生した高湿度状態は、本件岩盤浴室には適していない定格動作条件の湿度調整器が設置されたことに原因があったものと推認するのが相当であり、定格動作条件に合った使用をする限りにおいては本件調整器自体には欠陥はなかったものと認められるから、本件調整器を製造した加湿器製造販売会社は製造物責任を負わない。
②加湿器製造販売会社には、本件岩盤浴室に設置するものとして同浴室に適していない本件調整器を選定して推薦したこと、本件調整器を別型式のものと交換するまで本件高湿度状態を解消できなかった対応の遅れにつき過失が認められるから、不法行為責任を負う。

エアバッグ暴発手指等負傷事件 自動車輸入業者 信号待ちのために停車していたところ、突然エアバッグが暴発して、左指等を負傷した自動車運転者が、本件自動車を輸入した自動車輸入業者に対し、本件事故の原因は同車のエアバッグの欠陥にあるとして、製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件自動車が信号待ちのために停止中、何ら衝撃がないのに、運転席側の本件エアバッグが急に作動して暴発したが、本件自動車の助手席側のエアバッグは全く作動していないこと、エアバッグには2段階のインフレーターがあり、通常瞬時に2度爆発するように設計されているにもかかわらず、本件では1回目の爆発から約2、3分後に2度目の爆発が起きていることなどからすれば、本件自動車のエアバッグ・システムは通常有すべき安全性を欠いているというべきであって、本件自動車には製造物責任法3条の欠陥があるといえる。
②本件運転者についての治療経過、治療期間、病院における検査方法、本件事故の状況等に照らせば、本件運転者は左第1指MP関節側副靱帯損傷を負ったものの、左第1指MP関節側副靱帯断裂を負ったことを認めるに足りる証拠はなく、変形性頸椎症及び左肩関節周囲炎と本件事故との相当因果関係を認めることはできないし、第1指MP関節側副靱帯断裂の後遺障害も認めることはできない。

健康食品呼吸器機能障害愛知事件 健康食品製造会社(一審被告)、健康食品販売会社(一審被告)、健康食品を購入・摂取した娘(一審原告)、健康食品を購入・摂取した母(一審原告)の訴訟承継人二男 雑誌発行会社発行の雑誌で公表されていた医学博士記載の記事を見て健康食品を購入・摂取した母娘が、閉塞性細気管支炎等の呼吸器機能障害を発症したとして、本件健康食品の製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、同販売会社に対しては同法3条又は不法行為に基づき、医学博士及び雑誌発行会社に対しては不法行為に基づき、損害賠償を求めたことにつき、本件健康食品の製造物責任法上の欠陥を認めて製造会社及び販売会社の賠償責任を認めるなどした第一審に対する控訴審の事案。 ①加工あまめしばの摂取と閉塞性細気管支炎の発症との間には、高度の関連性があると認められる。
②娘及び亡母が本件あまめしばをほぼ同時期に摂取後、ほぼ同時期に閉塞性細気管支炎を発症したこと等からすれば、同人らの閉塞性細気管支炎が、本件あまめしばの摂取とは無関係に、専らシェーグレン症候群によって発症したとか遺伝的要因等によって発症したものとまでは認められない。
③製造会社としては、商品の危険性を調査する前提としてあまめしばの学術名等の特定は不可欠といえ、その特定自体に格別の困難を伴うともいえないから、学術名「サウロプス・アンドロジーニアス」の植物を用いた商品が「あまめしば」として販売されていることを医師が知らなかったからといって直ちに特定困難とはいえず、開発危険の抗弁は認められない。
④娘及び亡母のあまめしば摂取による閉塞性細気管支炎の発症には、同人らの体質、素因が相当程度関与しており、同体質等は個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものといえるとして、4割の素因減額を認めたが、同人らに損害拡大防止義務違反はないとしてその他の減額は否定した。
赤外線ドーム両下肢網状皮斑事件 健康美容機器製造会社、健康美容機器販売会社及びエステティックサロン経営会社 エステティックサロン経営会社(本件経営会社)との間で、同社が経営するフィットネスサロンの会員契約を締結して、同店に設置された赤外線サウナドーム(本件ドーム)を使用し、また、健康美容機器販売会社(本件販売会社)から本件ドームを購入した女性が、本件ドームの使用により両下肢に網状皮斑が生じたのは、本件販売会社及び健康美容機器製造会社(本件製造会社)が製造した本件ドームの設計上及び指示・警告上の欠陥、本件経営会社の本件ドームに係る説明義務及び安全配慮義務違反に起因するとして、本件販売会社に対しては、製造物責任法3条、不法行為及び本件ドームの売買契約の債務不履行に基づき、本件製造会社に対しては、製造物責任法3条及び不法行為に基づき、本件経営会社に対しては、本件女性との会員契約の債務不履行及び不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件販売会社は本件ドームを製造した者ではなく、また、本件ドームには本件販売会社の商標のみが表示されており、製造業者として明示されているものではないが、電化製品には販売業者ではなく製造業者の商標が記載されることが圧倒的に多いことからすれば、本件販売会社の商標は、本件販売会社が本件ドームの製造業者であると誤認させるような表示であると認められるから、本件販売会社は、製造物責任法上の「製造業者等」に該当する。
②網状皮斑の発生要因、本件ドームの特性、本件女性による本件ドームの利用開始時期及び本件ドームの利用箇所はほぼ一致すると認められることなどからすれば、本件の両下肢に生じた網状皮斑は、本件ドームの使用に起因すると認められる。
③本件女性による本件ドームの使用方法は、負荷の高い過剰な態様であったものと認められる一方、そのような使用方法を用いず、また、連続使用もせずに本件ドームを使用した場合には網状皮斑や低温やけど等の異常が身体に生ずる危険性があることを認めるに足りる的確な証拠はないから、本件ドームについて、ドーム内の温度が徐々に上昇し、コース終了まで70℃程度の状態が維持される仕様とされていることをもって通常有すべき安全性を欠くということはできず、本件ドームに設計上の欠陥があるとは認められない。
④本件ドームの取扱説明書には、一日の使用限度時間や限度回数、危険な使用方法や異常が生じた場合の対処方法等の警告が明確に表示されているとはいえない上、使用者の身体に重大な被害を及ぼすような事項については、取扱説明書だけではなく、容易に使用者の目につくような場所にも警告等を表示しなければ十分な指示・警告があったと評価することはできず、また、本件ドームの本体等に警告等の表示があったとは認められないから、本件ドームは、指示・警告において通常有すべき安全性を欠き、製造物責任法上の欠陥があると認められる。
⑤フィットネスサロンのスタッフは本件女性に対して本件ドームの連続した使用及び高温での使用により健康上の被害が生じる危険があるとの説明を行っていないから、本件経営会社には説明義務違反が認められるが、本件女性の相談に対するフィットネスサロンのマネージャーの説明が安全配慮義務に違反するとはいえないとして、同社の説明義務違反のみを認めた。
⑥本件網状皮斑は、本件ドームの使用に起因すること、本件ドームの取扱説明書や本件ドームの本体等に一日の使用限度時間や限度回数、危険な使用方法に対する警告等の十分な表示がなかったことにより本件女性が本件ドームの正しい使用方法を理解できず、長時間かつ高温での使用を継続することになったこと、本件女性がフィットネスサロンに通っていたころに本件網状皮斑の症状が現れはじめたことからすれば、本件ドームの欠陥及び本件経営会社の説明義務違反と本件網状皮斑との間には因果関係があると認められる。
⑦本件女性は通常の使用方法ではない操作方法を用いてフィットネスサロンにおいて本件ドームを使用していたこと、初めて網状皮斑の症状を自覚してから、その後も病院を受診することなく本件ドームの長時間連続使用を継続し、1年以上経って初めて医師に相談したことに照らせば、本件女性の両下肢に現れた網状皮斑の発生及び悪化について本件女性にも過失が認められると言わざるを得ず、本件に現れた一切の諸事情を考慮すると、本件女性の過失割合は4割とするのが相当である。
給湯熱交換器一酸化炭素中毒事件 風呂釜供給業者 風呂釜供給業者(本件供給業者)が供給した風呂釜の給湯熱交換器の閉塞により、被害女性が自宅での入浴中に一酸化炭素中毒に陥り高次脳機能障害を負った事故につき、被害女性及びその母が、本件供給業者に対し、製造物責任法3条及び民法709条に基づき、損害賠償を求めた事案 ①本件供給業者が、一酸化炭素中毒に至る事故を未然に防止するよう本件風呂釜の保守管理に努めるべき注意義務を怠ったことにより、本件風呂釜に起因する一酸化炭素中毒事故を発生させたこと自体については当事者間に争いがないとして、民法709条に基づく損害賠償責任を認めた。
②被害女性は、一酸化炭素中毒に起因する高次脳機能障害の発症に伴う巧緻性低下・筋力低下、神経因性膀胱等の症状とともに同障害による後遺障害の残存がみられることなどから、高次脳機能障害による後遺障害は障害等級3級相当と認めた。
アスベスト粉じん曝露石綿関連疾患罹患事件
国及び石綿含有建材製造販売会社ら42社 建築作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんに曝露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患に罹患した者及びその相続人らが、国は、石綿含有建材の製造販売を禁止するか、建築作業従事者を使用する事業者に対し、建築現場において、集じん機付き電動工具や送気マスク等の使用の義務付け、石綿含有建材の製造販売企業に対する石綿のがん原性や中皮腫への罹患可能性等の当該製品への警告表示の義務付けなど、安衛法等の法令に基づく規制権限を適時適切に行使すべきであったのにこれを怠ったなどとして、国に対して国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めるとともに、石綿含有建材製造販売会社らは、石綿含有建材の製造及び販売を中止する義務及び建築作業従事者に対して石綿が含有されている事実や石綿の危険性等を警告する義務を負っていたにもかかわらずこれを怠ったとして、石綿含有建材製造販売会社らに対して共同不法行為又は製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めた事案。 ①国は、遅くとも昭和56年1月の時点では、事業者に対して、労働者の石綿粉じん発散作業時に防じんマスクを着用させる義務を罰則をもって課すこと、石綿粉じんが肺がんなどの重篤な疾患を生じさせるものである旨明示し石綿粉じん発散作業時に必ず防じんマスクを着用すべきことを明示するよう義務付けること等の規制を行うべき義務を負っていたのであって、これを怠ったことは違法であるなどとして、国の労働関係法規に基づく規制権限不行使につき一部違法性を認めた。
②石綿含有建材につき、適切な管理使用をとることで石綿関連疾患への罹患を予防することが可能である限り、社会的又は世界的に石綿の使用自体を禁止すべきとのコンセンサスが形成されるまでは石綿の建築現場における使用の禁止にまでは踏み切らなかったとしてもやむを得ないというべきであること、建築現場における作業従事者の石綿関連疾患への罹患は国の行っていた管理使用を前提とした規制措置が不十分であったためというべきであって、適切な管理使用を行っていれば被害の発生を相当程度防ぐことができたといえること等からすれば、国の建築基準法に基づく規制権限不行使は違法とはいえない。
③本件製造販売会社らが適切な警告表示をしないまま石綿含有建材を製造、販売した行為については、各行為に関連共同性が認められる場合には、本件製造販売会社らは民法719条1項前所定の共同不法行為に基づく責任を負うことになるところ、本件製造販売会社らが適切な警告表示を怠ったまま石綿含有建材を製造、販売した行為があるとしても、当該行為の中には、現実には、本件曝露者らに対し石綿粉じん曝露の危険性を及ぼし得なかったものが含まれているといわざるを得ないから、民法719条1項前段の解釈としては、本件製造販売会社らの間に同項前段が要求する関連共同性を満たすだけの法的な結びつきを見出すことはできず、また、同条後段を適用又は類推適用するに足りるだけの共同行為者の特定もされていないというほかはなく、本件製造販売会社らは共同不法行為に基づく責任を負わない。
④製造物責任法施行日以降に本件製造販売会社らがした石綿含有建材の製造、販売については、石綿の危険性に応じた適切な回避措置を講じるに足りるだけの十分な警告表示を伴わなかった点において石綿含有建材が通常有すべき安全性を欠いていたといえ、本件製造販売会社らのうち同日以降に石綿含有建材を製造した会社らは、同日以降の製造行為について、製造物責任法6条により適用される民法719条の共同不法行為の要件が満たされる場合には、製造物責任法に基づく責任をも負うことになるところ、本件製造販売会社らは共同不法行為に基づく責任を負わないから、同責任を前提とする製造物責任も認められない。
安定器出火炎上事件 本訴被告:電子点滅器販売会社、電気照明器具部品製造業者
反訴被告:店舗用陳列機器類製造会社
訴外会社販売の電装部品に由来する火災事故が生じたことにつき、訴外会社から店舗用陳列機器類の設計・製作等に関わる事業を譲り受けた設計施工会社(本件設計会社)が、本件火災の原因は電気照明器具部品製造業者(本件製造業者)が製造し、電子点滅器販売会社(本件販売会社)が本件電装部品のホルダーに組み込んで販売した安定器に不具合があったためであるとして、訴外会社に本件ホルダーを継続的に供給していた本件販売会社に対しては、瑕疵担保責任、債務不履行責任又は製造物責任に基づく損害賠償を、本件安定器を製造した本件製造業者に対しては、製造物責任又は不法行為に基づく損害賠償を求めた(本訴)のに対し、本件販売会社が、本件火災の発生を受け本件設計会社との間で本件電装部品の点検作業請負契約を締結したとして、同社に対し、請負契約に基づく請負報酬の支払を求め、または、商法512条に基づく相当の報酬請求権を有するとして報酬の支払を求めた(反訴)ところ、本件設計会社を吸収合併した店舗用陳列機器類製造会社(本件会社)が訴訟を承継した事案。 ①火災現場安定器の内部で確認された特徴は、火災現場安定器に通電中、それ自体に異常が発生し火災に至ったことによると推認することが合理的であるとして、本件火災が本件安定器から出火したと認めた。
②回収品安定器等は、茶コードが白コードの半田部分に接するように取り回されているという独特の構造における絶縁劣化が原因で、白コード半田部分との間で緩やかなトラッキング現象が生じ、本件安定器内部が加熱され、それにより本件安定器内にある可燃物が可燃ガスを発するなどした結果、発火事故等を生じたとみるのが自然であり、火災現場安定器も回収品安定器等と同構造であることなどによれば、火災現場安定器も回収品安定器等と同様の機序により発火するに至ったと認められるとして、短絡を出火原因と認めた。
③は判断せず。
④本件火災原因は、火災現場安定器の茶コードと白コードの半田部分が短絡した等の不具合により火災現場安定器から出火したことにあるところ、このような不具合を有する安定器を組み込んだ本件ホルダーを供給することが本件継続的供給契約における債務の本旨として予定されたところに当たらないことは明らかであるとして、本件販売会社の債務不履行責任を認めた。
⑤は判断せず。
⑥本件販売会社は、本件安定器からの発火を予見し得たにもかかわらず、適切な調査等を尽くさず本件ホルダーを供給し、結果、本件火災に至ったのは明らかであるから、本件会社がこの点を捉えて損害賠償請求をすることは信義則に反するとはいえない。
⑦本件安定器には茶コードと白コードの半田部分の短絡等により発火に至るという欠陥があるから、本件製造業者は製造物責任法3条本文に基づく損害賠償義務を負う。
⑧は判断せず。
⑨本件設計会社が本件販売会社に点検作業を依頼し、同社が同作業を完了したことは認められるものの、本件依頼が点検作業に対して相当の請負代金を支払うことを内容とすることを裏付ける証拠はないとして有償の請負契約の成立を否定し、また、本件設計会社と本件販売会社間では、本件点検作業を無償で実施する旨黙示的に合意していたとして、商法512条に基づく報酬請求権も否定した。
トンカチ槌破片飛散負傷事件 トンカチ槌販売会社及びトンカチ槌製造業者 工事現場でトンカチ槌を用いて作業をしていた被害者が、トンカチ槌の打撃面の角が欠けた際、欠けた鉄片が左眼に入って負傷したため、同工具を販売した販売会社及び同工具の製造業者に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①調査によれば、破損品である本件工具は化学成分及び硬さ値とも規格値を満足し、新品の組織も特に異常はなかったから、本件工具に製造上の欠陥は認められない。
②本件工具は硬いものを打撃するためのものでなく、左官職人がブロック等の加工作業に用いるため設計・製造されたものであり、そのために鏡面の面取りをせず鏡面形状も四角形なのであるから、本件工具に設計上の欠陥はない。
③使用上の注意が記載されたPLラベルの文字が読みにくいことなどによれば、一般消費者が、トンカチ槌は用途により種類が分かれていると抽象的に理解していても、同じ「トンカチ」である以上強い打撃を加えなければ別用途に用いても大丈夫と誤解するおそれは皆無でないから、本件工具のPLシールの表示は一般消費者等が読むことを想定した場合、記載内容及び形状が適切でなかったとして、表示上の欠陥を認めた。
④本件被害者の本件工具の使用形態は本来の用途ではないが、なお通常予見される範囲内のものと認められる上、仮に本件工具に改訂された内容のPLシールがあれば、本件被害者はこれを読んで本件工具の使用を控えるか、安全メガネを装着した可能性があるから、因果関係は否定されないとして、本件工具に製造物責任法2条2項所定の欠陥を認めた。
⑤本件被害者が本件工具使用時に安全メガネをつけなかったこと、PLシールの注意書きに反し本件工具を本来の用途と異なる作業に用いたことから、6割の過失相殺を認めた。
灯油用ポリエチレン缶キャップ不具合事件 プラスチック製品製造販売会社及び同会社の代表取締役 プラスチック製品製造販売会社(本件製造販売会社)が製造した灯油用ポリエチレン缶(本製品)を購入し、石油会社の特約店等に納入した給油所向け販売促進商材販売会社(本件商材販売会社)が、本製品のキャップに欠陥があり、販売した製品をすべて回収せざるを得なくなったとして、本件製造販売会社に対しては製造物責任法3条に基づき、また、同社の代表取締役に対しては任務懈怠又は危険防止義務違反があったとして、会社法429条1項又は不法行為に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件製造販売会社が出荷の際に必要な検査を行い、製品の安全性が公的に認定されたことを証する推奨認定ラベルを貼付した上で、石油会社の特約店等に直接納入するという本製品の納品方法からすると、本製品が手元に来ない本件商材販売会社において買い受けた製品を検査することは予定されていないし、本件製造販売会社において製品の安全性を検査し、これを保証する責任を負っていたものというべきであるから、本件商材販売会社は買主ではあるが、本件製造販売会社から本件商材販売会社までの各売買の当事者間においては、少なくとも本件商材販売会社に商法526条に定める買主の検査義務が課されない旨明示又は黙示的に合意されていたものと認めるのが相当であって、本件製造販売会社について商法526条に基づく免責は認められず、製造物責任法3条の責任を負う。
②本件欠陥は本件製造販売会社の従業員が、本製品の特定の製造ラインにおいて製造機器の調整を行った際に生じ、かつ、本件製造販売会社代表取締役はこれを認識し、従業員に製造機器の調整を指示したものの、それが十分ではなかったために本件欠陥が発生したのであるから、取締役として重大な過失による任務懈怠があり、また、本製品製造に当たっての危険防止義務に反する行為があったことは明らかであって、同代表取締役は不法行為責任を負う。
調理食品回収費用請求事件(2) 加工食品輸入販売業者 中国法人製造の冷凍食品(本件商品)を加工食品輸入販売業者から購入し、他社へ販売していた冷凍食品等製造加工販売業者が、本件商品と同工場で製造されていた冷凍餃子の毒物混入が発覚したため、本件商品の廃棄、回収を余儀なくされたとして、本件輸入業者に対し、瑕疵担保責任,債務不履行及び製造物責任に基づく損害賠償を求めた事案 ①中国法人製造の本件商品は消費者の目から見れば有害物質混入の疑いがあったといえこれを購入する消費者は皆無といえるから、本件商品は取引観念上最終的に消費者の消費に供し得る品質を有しておらず、他社への販売が可能な商品価値を有していなかったとして、本件商品の瑕疵を認めた。
②本件製造業者はホームページ上で本件商品の回収を告知し、その後、直ちに取引先に対しても同方針を連絡していたから、本件製造業者から本件輸入業者への瑕疵の通知は告知翌日には行われたと推認できるとして、本件商品のうち、告知翌日6か月前以降の受領商品については瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権の行使を認めたが、告知翌日6か月前以前の受領商品については、商法526条2項の適用により損害賠償請求権の行使を否定した。
③本件売買契約では、本件商品は取引観念上最終的に消費者の消費に供し得る品質を有し、他社への販売が可能である商品価値を有することが予定されていたにもかかわらず、本件商品はこれを欠くものであったから、本件輸入業者による本件商品の納品は債務の本旨に従ったものとはいえないとして、債務不履行を認めた。
④本件商品の瑕疵は有害物質混入の疑いに起因するものであるが、故意の犯罪行為の可能性がある本件有害物質の混入は、通常想定し得ない異常事態であって不可抗力に準ずるから、本件輸入業者に有毒物質混入防止対策をとるべき具体的な注意義務があったとはいえず、帰責事由が認められないとして、債務不履行による請求を否定した。
⑤本件商品は取引観念上最終的に消費者の消費に供し得る品質がなかったものであるが、本件商品につき現に有害物質が混入していたとは認められないから、製造物責任法3条所定の欠陥は認められず、同法に基づく請求は理由がない。
健康食品呼吸器機能障害愛知事件 不明
(被控訴人:健康食品製造会社(一審被告)、健康食品販売会社(一審被告)、健康食品を購入・摂取した娘(一審原告)、健康食品を購入・摂取した母(一審原告)の訴訟承継人二男)
健康食品を購入・摂取した母娘が、閉塞性細気管支炎等の呼吸器機能障害を発症したとして、本件健康食品の製造会社に対しては製造物責任法3条に基づき、同販売会社に対しては同法3条又は不法行為に基づき、同食品の効用を示した記事を公表した者及び同記事を掲載した雑誌を発行した会社に対しては不法行為に基づき、それぞれ損害賠償を求めたことにつき、本件健康食品の製造物責任法上の欠陥を認めて製造会社及び販売会社の損害賠償責任を認めるなどした第一審、製造会社の控訴を一部認容するなどした控訴審に対する上告審の事案。  
調理食品回収費用請求事件 冷凍食品等製造加工販売業者 中国法人製造の商品を冷凍食品等製造加工販売業者から購入し、同商品を使用した食品を製造販売していた食品製造販売業者が、本件商品と同工場で製造されていた冷凍餃子の毒物混入が発覚したため、本件商品の回収を余儀なくされたとして、本件加工業者に対し、債務不履行、瑕疵担保責任、製造物責任に基づく損害賠償又は委任契約に基づく回収費用償還等を求めた事案。 ①本件商品及び同商品を原料とする本件食品は、毒物混入のおそれがある食品として消費者に購入されない食品であり、かつ本件製造販売業者で事実上販売できない食品といえ、社会通念上食品として市場に流通し得る品質を有していなかったといえるから、本件商品には同商品等に関して締結された本件基本契約所定の保証に関する瑕疵が認められる。
②商法526条は不特定物売買にも適用があり、本件基本契約の規定には同条の適用を前提としている趣旨と解される規定が存在するから、同基本契約に基づく損害賠償請求は同条の適用により一部制限される。
③本件加工業者は中国法人から他社が輸入した本件商品を購入して本件製造販売業者に販売しており、製造物責任法上の「製造業者等」といえないから、製造物責任は認められない。
④本件加工業者が本件商品を回収しようとして、本件商品を使用した本件製造販売業者の商品を回収するよう依頼する書簡を送付したことが認められるものの、これをもって委任ないし準委任契約が成立したとは認められない。
培養土過塩素酸カリウム混入事件(1) 肥料等製造会社 培養土製造業者製造の培養土を購入使用した農業者らに野菜等の生育障害による損害が発生したことに伴い、培養土製造業者に生産物賠償責任保険契約に基づく保険金の支払を行った保険会社が、本件生育障害は本件培養土に配合された肥料等製造会社製造の肥料中に通常混入しない過塩素酸カリウムが混入したためであり、保険代位により本件培養土製造業者の有する製造物責任法3条に基づく損害賠償請求権を取得したとして、肥料等製造会社に対し、損害賠償を求めた事案。 本件保険会社と本件肥料等製造会社間では、本件生育障害の原因が本件肥料製造会社製造の本件肥料中に混入した本来含まれるはずのない過塩素酸カリウムにあることは争いがないから、本件肥料等製造会社は、自らの製造物である本件肥料が用いられた本件培養土を原因として、同培養土の使用者らに生育障害被害を与えるとともに本件培養土製造業者に製造物責任法3条に基づく損害賠償義務を負わせたものといえ、同条により本件培養土製造業者が被った損害を賠償すべき義務がある。
石材用接着剤染み出しタイル剥落事件 土木建築資材販売業者 接着剤製造販売業者が、土木建築資材販売業者に対し、継続的にタイル用接着剤(ボンド)を売り渡したとして、売買契約に基づく代金支払を求めたところ、土木建築資材販売業者が、本件ボンドを使用した石材接着工事やタイル接着工事においてボンドが染み出したりタイルが剥落する事故が起こっており、本件各ボンドには製造物責任法上の欠陥があるとして、接着剤製造販売業者に対する損害賠償請求権との相殺を主張した事案。 ①本件ボンド染み出しは施工業者による施工が不十分だったことに原因する可能性があり、また、本件工事現場で使用された本件徳用石材用ボンドが通常期待される性能を有しないというのであれば、その製造過程において他の徳用石材用ボンドと異なるものであり、かつ、そのために染み出しが生じたことが証明されなければならないと思料されるところ、そのことを認めるに足りる証拠は見当たらないから、本件徳用石材用ボンドに設計上や製造上の欠陥があるということはできず、接着剤製造販売業者に債務不履行があったともいえない。
②接着剤製造販売業者と本件タイル接着工事の施工業者の間に直接の債権関係はなく、接着剤に他の材料を混ぜれば接着力が落ちることは当然である
から、接着剤製造販売業者が本件石材用ボンドの製造者としてその最終使用者に対する関係で接着剤に他の材料を混ぜないように指示・警告する義務はなく、垂れ止め剤を使用した場合に、本件石材用ボンドが通常有すべき安全性を欠くとも認められないから、本件石材用ボンドに指示・警告上の欠陥は認められない上、本件石材用ボンドが一般的に接着力が落ちると断定することは困難であるから、接着剤製造販売業者に債務不履行があったともいえない。
肥料生育障害事件 化成肥料販売会社 韓国産の化成肥料(本件原料)を使用して花き・緑化用肥料(本件肥料)を製造・販売した肥料等製造販売会社が、本件肥料を施肥した植物に生育障害が発生し、損害賠償を余儀なくされたなどとして、本件原料を販売した化成肥料販売会社に対し、主位的に、不完全履行の債務不履行に基づき、予備的に、製造物責任、瑕疵担保責任及び保護義務違反・品質保持義務違反・説明義務違反の債務不履行に基づき損害賠償を求めた事案。 ①本件生育障害の原因は本件原料に混入していた過塩素酸カリウムであるとした。
②本件取引に係る肥料等製造販売会社と化成肥料販売会社との間の契約関係は売買契約であるとした。
③本件売買契約は不特定物売買であるとした。
④本件原料は生育障害を発生させるものであったから債務の本旨に従った履行がされたとはいえないとした。
⑤は判断せず。
⑥不特定売買においては瑕疵のないものを給付する義務とは別に保護義務を観念することはできないから、化成肥料販売会社に保護義務違反は認められないとした。
⑦不特定売買においては瑕疵のないものを給付する義務があるべきところ、本件においてそれとは別に本件原料について品質保証をした事情は認められず、説明義務を生じさせる事情も認められないから、化成肥料販売会社に品質保証義務違反又は説明義務違反は認められないとした。
⑧本件原料の安全性について自ら検査していたといった事情は認められないことなどから、化成肥料販売会社に帰責事由がなかったとはいえないとした。
⑨本件生育障害の原因である過塩素酸カリウムを含んでいるかという点が見本において合意されているとはいえないから、本件取引が見本売買に該当するとして化成肥料販売会社が損害賠償責任を免れるということはできないとした。
⑩本件取引は介入取引ではないとした。
⑪肥料等製造販売会社が本件原料を受領した時に通常の検査により本件原料が本件生育障害をもたらすものであることを発見することは不可能であったとして、商法526条による化成肥料販売会社の免責を否定した。
⑫化成肥料販売会社は製造物責任法2条3項1号の「輸入した者」に当たらないとして、同社の製造物責任を否定した。
⑬肥料等製造販売会社の請求は権利濫用又は信義則によって制限されないとした。
⑭本件生育障害が発生したことについて肥料等製造販売会社の責めに帰すべき事情は認められないとして過失相殺を否定した。
椅子脚部破損腰部骨折精神疾患事件 家具製造販売会社 座っていた椅子の脚部が溶接不具合により折れたため転倒した主婦が、第五腰椎椎弓骨折の傷害を負った結果、歩行困難に陥り、かつ、うつ病に罹患したとして、家具製造販売会社に対し、製造物責任法3条又は民法709条に基づく損害賠償を求めた事案。 本件主婦の第五腰椎椎弓骨折は、もともと安静を主とした治療で足り重度なものでなく、それ自体は治癒したものである上、どの医療機関でも神経学的・理学的な異常所見はなく、神経の圧迫所見も認められていないから、本件主婦の歩行困難状態は、うつ病の影響によるものであり、第五腰椎椎弓骨折を原因とするものとは認め難いとして、因果関係を否定した。
②本件主婦のうつ病は、健康が回復しないことへの不安、育児ができないことへの苛立ちや悲しみ等が複合的原因となり発症したもので、改善が認められず今後の改善の見込みも厳しいとされているから、後遺障害として残存しているとして本件うつ病と本件事故との間の相当因果関係を認めた。
③本件主婦の不安等の各発症要因自体は事故による傷害発生時に多かれ少なかれ見られるもので、本件主婦がそれほど特異・重大なストレスを受けたとはいい難く、また、本件事故による直接の傷害は重いとはいえず、骨折自体は治癒しているから、本件主婦のうつ病残存は同人の心因的要素が大きく寄与したといえるとして、9割の素因減額をした。
空気清浄機発火事件 空気清浄機製造販売会社 空気清浄機製造販売会社が製造した空気清浄機の欠陥により自宅建物が燃えたとして、本件清浄機を購入した夫が、空気清浄機製造販売会社に対して、主位的に製造物責任法3条に基づき、予備的に不法行為に基づき、損害賠償を求めるとともに、本件清浄機を購入した妻が、本件火災により精神的苦痛を被ったとして、空気清浄機製造販売会社に対して、主位的に製造物責任法3条に基づき、予備的に不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案。 損害論のみ)
メッキ装置内ヒーター爆発事件 不明
(一審被告:メッキ装置に使用するヒーターの納入会社)
納入されたヒーターを組み込んだ無電解すずメッキ装置を顧客に納品した無電解すずメッキ装置設計製作会社(本件製作会社)が、製造上の欠陥を原因として本件ヒーターが爆発したことにより、その対応に要した費用及び顧客に対する損害賠償の支払等の損害を受けたとして、同メッキ装置に使用したヒーターの納入会社に対し、製造物責任法3条等に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件ヒーターの製造物責任法上の結果を認めた第一審、原判決を取り消して本件製作会社の請求を棄却した控訴審に対する上告審の事案。  
輸入スポーツ自転車部品脱落頚(けい)部受傷事件 各事件被告:自転車輸入会社 自転車輸入会社が輸入した自転車で出勤していた会社経営者が、同自転車の前輪フロントフォークサスペンション部分の分離及び車輪脱落により顔面から路面に転倒し、頸椎損傷、頸髄損傷等の傷害を負い、重度四肢麻痺を伴う神経系統の後遺障害が残存した事故につき、同経営者とその妻が、本件事故は本件自転車の欠陥により生じたなどとして、本件輸入会社に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求め(第1事件)、同事故につき本件経営者に人身傷害保険契約に基づく保険金を支払った保険会社が、同経営者の製造物責任法3条に基づく損害賠償請求権を支払額の限度で保険代位により取得したなどとして、求償金の支払を求めた(第2事件)事案。 ①本件経営者の転倒態様、受傷状況、インナーチューブ等の損傷状況、サスペンション分離の機序などによれば、本件事故は、本件自転車走行中のサスペンション分離により発生したといえる。
②本件経営者は、本件自転車をその特性に従い通常予想される使用形態で使用していたといえ、購入後の経過期間、保管やメンテナンス状況を考慮しても、本件自転車は走行中にサスペンションが分離した点において通常有すべき安全性を欠いていたとして、製造物責任法上の欠陥を認めた。
③本件自転車に存した欠陥が原因となり本件事故が発生したから、本件自転車の欠陥と本件経営者らに生じた損害との間に因果関係が認められることは明らかである。
④本件自転車の購入から約6年4か月間に一度も点検やサスペンションのメンテナンスを受けなかったことは一定程度の落ち度として評価できるとして、1割の過失相殺を認めた。
携帯電話低温やけど事件 やけどを負った男性(控訴人(一審原告)) 携帯電話製造会社製造の携帯電話をズボン前面ポケット内に入れて使用していた男性が、同携帯電話機の欠陥により左大腿部に熱傷を負ったとして、携帯電話製造会社に対して製造物責任法3条又は不法行為に基づき損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審、携帯電話の欠陥を認めるなどして請求を一部認容した控訴審に対する上告審の事案。  
ふとん乾燥機出火死亡事件 ふとん乾燥機販売会社 自宅で発生した火災により永住資格を有するナイジェリア国籍の夫が死亡したのは、ふとん乾燥機販売会社が輸入したふとん乾燥機の欠陥が原因であるとして、亡夫の妻子が、同社に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件では、適用されるべき法令の内容や当該法令における条理を合理的に推認することは極めて困難であるのに加え、夫の死亡原因となった本件火災が日本で発生したこと、同人の妻子らが日本国籍を有していることなどによれば、亡夫の相続については日本法を適用すべきである。
②本件機械は中国で製造され、訴外会社が輸入したから、本件販売会社は製造物責任法2条3項1号の「製造業者」には当たらないが、同社は、本件機械に製造業者が同社であると誤認させるような会社名及びロゴ等の記載をしたといえるから、同項2号にいう「当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者」に該当する。
③本件火災は本件機械から出火したものであって、妻子らは本件機械を通常の用法に従って使用していたと認められるところ、本件火災を発生させ得る本件機械の内部構造以外の外的要因は窺われないから、本件機械には製造物責任法にいう欠陥が認められるとして、製造物責任を認めた。
外壁用洗浄剤ガラス腐食事件 工業薬品開発製造販売会社 塗装工事業者が、建物の外壁洗浄工事に工業薬品開発製造販売会社の製造販売する外壁用洗浄剤を使用したところ、建物のガラスやサッシが腐食する等の事故が発生したため、その原因は本件製品の欠陥及び本件製造販売会社がその安全性を偽ったことにあるとして、本件製造販売会社に対して、製造物責任又は不法行為(詐欺)に基づき損害賠償を求めた事案。 本件では、塗装工事業者は本件外壁洗浄に本件製品を用い、その結果本件各事故が発生したと認められる。
②本件製品の原料、説明書の記載、成分分析結果、本件製品によるガラス等の腐食及び本件製品使用の際の人体における化学熱傷等によれば、本件製品に含有されている成分の反応によりフッ化水素が発生するのであるから、本件製品はガラスやサッシを腐食させる性質を有し、人体への毒性が認められる。
③本件製品についてはその危険性に照らして適切な指示・警告がされておらず、通常有すべき安全性を欠いていたというべきであり、また、本件各事故の原因は本件製品の指示・警告上の瑕疵にあるのであって、塗装工事業者が本件製品の用法を遵守しなかったことによるのではないから、本件製品には指示・警告上の欠陥があると認められる。
④ないし⑥は判断せず。

シュレッダー破裂難聴など負傷事件 シュレッダー輸入販売会社 シュレッダー輸入販売会社が中国から輸入して販売した家庭用シュレッダーを使用していたところ、当該シュレッダーが大きな音を出して破裂したために負傷して右耳難聴の後遺症を負ったとして、被害男性が、本件業者に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件カバー内に細断くずが溜まり続けないような安全性が確保される必要があるのに、本件シュレッダーは安全装置が働くことなく細断が続き、本件カバーには滞留した細断くずの圧力に耐えるだけの耐久性がなく破裂して本件事故が発生したのであるから、本件シュレッダーには欠陥があるといえ、本件輸入販売会社は製造物責任を負う。
②被害男性が頭部を本件シュレッダーに接近させる動作により右耳がとらえた破裂音が高まって同人の難聴発生に寄与したと推認できる上、被害男性は不自然な動きをした本件シュレッダーの電源を切る、逆転させるなどの対応も可能であったとして、1割の過失相殺を認めた。
培養土過塩素酸カリウム混入事件(2) 肥料等製造会社 肥料等製造会社が製造し培養土製造業者に販売した肥料中に過塩素酸カリウムが混入していたため、同肥料を使用して培養土を製造・販売した培養土製造業者が、同培養土の販売先に対して植物の生育障害による損害を賠償しなければならなくなったとして、肥料等製造会社に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求め、培養土製造業者との間の生産物賠償責任保険契約に基づき損害保険金を支払った保険会社が、培養土製造業者の製造物責任法3条に基づく損害賠償請求権の一部を保険代位により取得したとして、肥料等製造会社に対し、求償を求めた事案。 ①欠損分の栽培管理委託料が損害に当たるとしても、肥料等製造会社には予見できない特別損害であるから、相当因果関係はない旨の被告補助参加人の主張に対して、植物の栽培管理委託を受けた生産者が植物の生育障害を惹起する欠陥のある肥料を使用した結果、生育していた植物を廃棄せざるを得なくなった場合で、栽培管理委託契約の委託者と生産者双方に帰責事由がないときは、委託者又は生産者のいずれかが契約又は法律に基づき栽培管理委託費用の支払債務の危険を負担し、当該危険負担者が栽培管理委託料相当額の損害を被ることは必然であるから、同事態を肥料等製造会社は十分予見可能であったとし、損害との間の相当因果関係を認めた。
②は判断せず。
椅子脚部破損腰部骨折精神疾患事件 家具製造販売会社(一審被告)、椅子の脚部破損で負傷した主婦(一審原告) 家具製造販売会社製造の椅子の脚部が溶接不具合により折れたため転倒した主婦が、家具製造販売会社に対し、第五腰椎椎弓骨折の傷害を負った結果、歩行困難に陥り、かつ、うつ病に罹患したとして、製造物責任法3条又は民法709条に基づく損害賠償を求めたことにつき、請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①現在、本件主婦に残存している歩行困難という後遺障害は、骨折部位の障害によるものとは認められず、むしろ、うつ病の影響によるものと認められるとして、因果関係を否定した。
②本件事故による傷害を契機として、本件主婦が抱くに至った諸感情に加え、本件事故の精神的衝撃等が複合的に原因となって本件うつ病が発症したとして、本件事故との間の相当因果関係を認めた。
③本件主婦のうつ病残存につき、6割の素因減額をした。
肺がん治療薬死亡等事件(大阪) 肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(69歳)の妻及び子ら計4名(一審原告)、肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(77歳)の妻及び子ら計4名(一審原告)、肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(48歳)の妻及び子の計2名(一審原告)、肺がん抗がん剤を服用した患者(一審原告)、肺がん抗がん剤輸入販売会社(一審被告)、国(一審被告) 肺がん抗がん剤輸入販売会社が輸入販売した非小細胞肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に副作用である間質性肺炎を発症して死亡した各患者らの遺族ら及び間質性肺炎等を発症した患者本人が、本件会社に対しては製造物責任法等に基づき、国に対しては適切な規制権限行使を怠ったとして国賠法1条1項に基づき、損害賠償を求めたことにつき、第1版添付文書とともに流通に置かれた本件抗がん剤の指示・警告上の欠陥を認める一方、国の責任を認めなかった第一審に対する控訴審の事案。 ①原判決を引用等して本件抗がん剤の有用性、有効性を認定。
②本件抗がん剤には有用性、有効性が認められるから、本件抗がん剤に設計上の欠陥は認められず、また、本件患者らの担当医を含む肺がん治療医にとっては、第1版添付文書の記載により薬剤性間質性肺炎の一般的副作用の危険性を十分認識できたから、同記載には間質性肺炎が致死的であることについての注意喚起が不足しているとは認められず、第1版及び第3版添付文書とも指示・警告上の欠陥は認められないなどとして本件会社の製造物責任を否定した上、安全性確保措置を怠ったことによる過失を否定するなどして不法行為責任も否定した。
③本件抗がん剤に設計上の瑕疵はなく、本件抗がん剤販売につき不法行為は成立しないから、厚生労働大臣の本件抗がん剤輸入承認行為が国賠法の適用上違法となる余地はないなどとして、国の責任を否定した。
④は判断せず。
肺がん治療薬死亡事件(東京) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(一審被告)、国(一審被告)、肺がん抗がん剤投与後死亡した女性(31歳)の父(一審原告)、肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(67歳)の長女(一審原告) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(本件会社)が輸入販売した肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に死亡した各患者の遺族らが、同社に対しては製造物責任法等に基づく損害賠償を求め、国に対しては適切な規制権限の行使を怠ったとして国賠法に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件抗がん剤の指示・警告上の欠陥を認めるとともに国の違法性を認めて一部遺族らの請求を一部認容するなどした第一審に対する控訴審の事案。 ①患者のうちの2名は、本件抗がん剤投与と死亡との間の因果関係を肯認できるものの、55歳で死亡した患者については、ニューモシスチス肺炎により死亡した蓋然性が最も高い一方、間質性肺炎で死亡したとは認められないから、同人の死亡と本件抗がん剤投与との間には因果関係が認められない。
②本件抗がん剤は血液毒性等の副作用がほぼ見られないものであるといった諸事実によれば、本件抗がん剤投与による間質性肺炎の発症頻度が日本人に高いという副作用の存在ゆえに有用性が否定されることはないとして、設計上の欠陥を否定した。
③「重大な副作用」欄に「間質性肺炎」を記載するに際して致死的事態が生じ得る旨記載しなかった本件添付文書第1版が合理性を欠くとはいえず、また、同添付文書の内容、同添付文書の読者が専門医を前提とすることなどによれば、同記載に指示・警告上の欠陥は認められず、さらに、間質性肺炎を同添付文書の「重大な副作用」欄の1番目に掲げなかったことをもって指示・警告上の欠陥とはいえない上、同添付文書に基づき投与を決定するのは癌専門医等であるから、患者本人や家族が読んだ場合に間質性肺炎が致死的なものとわかるよう記載しなくても指示及び警告上の欠陥はないなどとして、本件各添付文書の指示・警告上の欠陥を否定した。
④本件抗がん剤の効能・効果の対象疾患の表示について遺族ら主張のような適応限定義務は認められず、また、輸入承認時及び輸入承認後において、本件抗がん剤の輸入・販売につき指示・警告上の欠陥はないから、同欠陥の存在を前提に不法行為をいう遺族らの主張は理由がなく、さらに、副作用との関係で、本件抗がん剤投与を入院中に行うべきとはいえないから、同指示をしないことをもって販売指示上の義務違反とはいえないとして、本件会社の不法行為責任を否定した。
⑤欠陥製造物である本件抗がん剤を輸入・販売したという製造物責任又は不法行為責任が本件会社にあることを前提に、国は適切な規制権限を行使しないで輸入承認をし、その後も適切に規制権限を行使しなかったとして国の損害賠償責任をいう遺族らの主張は、前提事実が認められない以上理由がない。
携帯用音楽プレイヤー発火やけど事件 パソコンなど販売会社 携帯用音楽プレイヤーを付属の充電器に接続して充電していたところパンという音を発した後に炎を上げて燃えた。消火しようとした妻が手に2度のやけどを負った。  
培養土過塩素酸カリウム混入事件(3) 肥料等製造会社 培養土製造業者製造の培養土を購入使用した農業者らに苗の生育障害による損害が発生したことに伴い、培養土製造業者に生産物賠償責任保険契約に基づく保険金の支払を行った保険会社が、本件生育障害は本件培養土に配合された肥料等製造会社製造の肥料中に通常混入しない過塩素酸カリウムが混入したためであり、保険代位により本件培養土製造業者の有する製造物責任法3条に基づく損害賠償請求権を取得したとして、肥料等製造会社に対し、損害賠償を求めた事案。 本件肥料を使用して製造された本件培養土により栽培した苗につき、本件肥料中の過塩素酸カリウムの作用により本件育成障害が発生したと推認できるから、生育障害を引き起こすような過塩素酸カリウムが含まれていた本件肥料は肥料として通常有すべき安全性を欠き、「欠陥」(製造物責任法2条1項)があったといえる。
手すり破損事件 手すり輸入販売会社 自宅内に設置した手すり輸入販売会社(本件会社)の輸入販売に係る手すりをつかんだところ、同手すりのブラケット付け根部分が破損して転倒し、第12胸椎(きょうつい)圧迫骨折の傷害を負ったとして、手すり購入使用者が、本件会社に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①本件会社が想定していた本件手すりの使用形態は横付けであるものの、少なくとも本件手すりのパッケージを読んだ使用者等は、使用しにくさを受忍すれば縦付け使用に特段の支障はないと理解する余地が多分に存在し、縦付け使用も合理的に予見できる範囲の使用形態に含まれ通常予見される使用形態の範疇に属すると認められるところ、本件手すりは本件使用者が通常予見される使用形態に則って使用していた際に同手すりのブラケットが破損したものであるから、他に特段の事情のない本件では、本件手すりに欠陥があると認められるとして、製造物責任を認めた。
②本件会社は、横付け専用品である本件手すりを縦付けにするなどした本件使用者の親族に過失があり、被害者側の過失として過失相殺すべきと主張するが、本件使用者と本件親族との間には親族関係があるという外に身分上・生活関係上の一体性があることを基礎づける事実はないとして過失相殺を否定し、また、本件手すりを縦付けにしたがゆえに本件ブラケットが破損したという機序も認められないから、本件会社が主張する過失内容と本件事故発生との間の因果関係も認められないとした。
アスベスト粉じん曝露石綿関連疾患罹患九州事件 国及び石綿含有建材を製造、販売等し続けた企業42社 石綿(アスベスト)粉じんに曝露して石綿関連疾患を発症したとする建築作業従事者及びその相続人らが、石綿粉じん曝露防止のための規制権限等行使を怠るなどした国の行為は違法であるとして、国に対し、国賠法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、石綿含有建材を製造、販売等し続けた企業ら42社らの製造・販売・流通に係る行為は共同不法行為に当たり、また、石綿含有建材は通常有すべき安全性を欠いていたとして、本件企業らに対し、民法719条1項及び製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①労働大臣等による規制権限の不行使が、具体的事情の下、許容限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、当該不行使は国賠法1条1項の適用上違法となるとした。
②国の規制権限不行使が違法となる前提として、特定の要因と疾病との因果関係について医学的知見の集積が必要であるところ、本件では、昭和33年3月頃には石綿粉じん曝露による石綿肺発症、びまん性胸膜肥厚及び良性石綿胸水発症についての、昭和47年頃には肺がん及び中皮腫発症についての医学的知見が集積されたといえるとした。
③特化則改正前日の平成7年3月31日まで、石綿含有建材への警告表示や建築作業現場における警告表示(掲示)に関する規制権限を行使しなかった国の行為は、著しく合理性を欠き国賠法の適用上違法であるとする一方、国が、昭和50年、昭和53年、昭和61年以降の各時点において、石綿の製造等を禁止する規制権限を行使しなかったことが著しく不合理であって国賠法の適用上違法であるとはいえないなどとし、国の違法性を一部認めた。
④旧労基法、安衛法の各規定に基づいて労基法適用労働者以外の建築作業従事者との関係で規制権限を行使すべき義務を国は負わないから、同従事者に対する安衛法に基づく規制権限の不行使が国賠法の適用上違法となることはないとした。
⑤国が、昭和40年改正労災保険法34条の14に基づき、労災保険に特別加入する労基法適用労働者以外の建築作業従事者等に対する関係において特別加入者の災害防止措置を講じる規制権限を行使することは、同条の委任の範囲を超えるから、国はかかる規制権限を行使する義務を負わず、その権限不行使が違法となる余地はないとした。
⑥建基法2条7号ないし9号及びこれに基づく指定、認定により保護される利益は、火災発生により害されることとなる建築物の居住者や所有者、その周辺住民等であり、建築作業従事者の生命、健康までも直接の保護対象とするものではないから、内閣又は建設大臣等が同法2条7号ないし9号に基づき石綿含有建材使用構造又は石綿含有建材を耐火構造等として指定、認定し、又は既に行った指定、認定を取り消さなかったことが国賠法の適用上違法であるとはいえないとした。
⑦建基法2条7号ないし9号は建築物の施工過程における建築作業従事者の生命、健康を保護するものとはいえないから、内閣又は建設大臣等が、施工方法に関する条件を付すことなく同法2条7号ないし9号に基づき、石綿含有建材使用構造又は石綿含有建材を耐火構造等に指定、認定をしたことが、国賠法の適用上違法であるとはいえないとした。
⑧建基法90条の「危害」が、専ら工事現場内の建築作業従事者に固有に生じる安全、衛生上の危害をも含むとは解されず、内閣が、同条に基づいて建築作業従事者に生じる固有の危害を防止するための措置を講じるべき政令制定義務を負うとはいえないから、かかる内容の政令を制定しなかったことが国賠法の適用上違法であるとはいえないとした。
⑨毒劇法にいう「毒物」、「劇物」は、急性毒性を有する化学物質であると解されるところ、石綿は急性毒性物質とはいえず、また、石綿を毒劇法上の「劇物」と定めて同法の規制対象とすることは同法による政令への委任の範囲を超えるから、国には毒劇法に基づいて政令で石綿を「劇物」と定める義務はなく、これに基づく規制権限や監督権限を行使しなかったことが国賠法上違法となる余地はないとした。
⑩認定事実によれば、本件では民法719条1項前段又は後段の適用ないし類推適用の前提を欠くとして、本件企業らの共同不法行為責任を否定した。
⑪本件では、民法719条1項前段又は後段の適用ないし類推適用の前提を欠くから、同適用があることに基づく製造物責任法3条の適用はないとして、本件企業らの製造物責任を否定した。
⑫国の昭和50年10月1日の特化則改正時から平成7年特化則改正の前日である平成7年3月31日までの間の規制権限不行使は国賠法の適用上違法であるから、国は、同期間内に屋内作業場で石綿粉じん曝露作業に従事したことにより石綿関連疾患を発症した労働者に対し国家賠償責任を負うとした。
犬用引き紐(ひも)欠陥犬傷害事件 不明
(被控訴人:犬用引き紐輸入販売会社(一審被告))
フレキシリード(犬の動きに合わせてリードを引き出したり、巻き取ったりすることのできる引き紐)を使用して、飼い犬を散歩させていた際、飼い犬が傷害を負ったことに関し、飼い主が、本件フレキシリードに欠陥があったなどとして、本件フレキシリードの輸入販売会社に対し、損害賠償を求めたことにつき、請求を棄却した第一審、本件フレキシリードの製造物責任法3条にいう「欠陥」を認めた控訴審に対する上告審の事案。  
肺がん治療薬死亡事件(東京) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(被控訴人兼控訴人(一審被告))、国(被控訴人兼控訴人(一審被告)) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(本件会社)が輸入販売した肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に死亡した各患者の遺族らが、同社に対しては製造物責任法等に基づく損害賠償を求め、国に対しては適切な規制権限の行使を怠ったとして国賠法に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件抗がん剤の指示・警告上の欠陥を認めるとともに国の違法性を認めて一部遺族らの請求を一部認容するなどした第一審、本件会社及び国の責任を否定して各請求を棄却した控訴審に対する上告審の事案。  
肺がん治療薬死亡事件(東京) (被控訴人兼控訴人(一審被告)) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(本件会社)が輸入販売した肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に死亡した各患者の遺族らが、同社に対しては製造物責任法等に基づく損害賠償を求め、国に対しては適切な規制権限の行使を怠ったとして国賠法に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件抗がん剤の指示・警告上の欠陥を認めるとともに国の違法性を認めて一部遺族らの請求を一部認容するなどした第一審、本件会社及び国の責任を否定して各請求を棄却した控訴審に対する上告審の事案。  
肺がん治療薬死亡事件(東京) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(被控訴人兼控訴人(一審被告)) 肺がん抗がん剤輸入販売会社(本件会社)が輸入販売した肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に死亡した各患者の遺族らが、同社に対しては製造物責任法等に基づく損害賠償を求め、国に対しては適切な規制権限の行使を怠ったとして国賠法に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件抗がん剤の指示・警告上の欠陥を認めるとともに国の違法性を認めて一部遺族らの請求を一部認容するなどした第一審、本件会社及び国の責任を否定して各請求を棄却した控訴審に対する上告審の事案。 本件では、副作用中に急速に重篤化する間質性肺炎が存在することを前提とした添付文書第3版のような記載がないことをもって、本件添付文書第1版の記載が不適切とはいえないから、本件添付文書第1版の記載が本件輸入承認時点において予見し得る副作用についての記載として適切でないとはいえず、本件抗がん剤に欠陥はない。
防音ブースシックハウス症候群罹患事件 防音処理建築資材販売会社 防音ブース使用者が、同ブースの建材から放散した揮発性有機化合物(VOC)の影響でシックハウス症候群に罹患し、損害を被ったなどとして、本件防音ブースを製造、設置した防音処理建築資材販売会社に対し、瑕疵担保責任、不法行為又は製造物責任法3条に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①本件防音ブース内に存在していたホルムアルデヒド等のVOCにより防音ブース利用者がシックハウス症候群を発症しことについて高度の蓋然性が証明されたとして、本件防音ブース使用とシックハウス症候群罹患との因果関係を認めた。
②は判断せず。
③本件防音ブース内に放散したホルムアルデヒドが直接屋外に放出されるような換気設備を設けず、また、換気の重要性を説明したとまでは認められない防音処理建築資材販売会社の対応は、防音ブース利用者に対する不法行為を構成するとして、同社の不法行為責任を認めた。
④は判断せず。
携帯音楽プレーヤー発火事件 携帯音楽プレーヤー輸入会社 携帯音楽プレーヤーを購入し使用していた者らが、携帯音楽プレーヤーを付属の充電器に接続して充電していたところ、同プレーヤーが炎を上げて燃えるという火災事故が発生し、手に熱傷を負うなどしたため、同事故の原因は携帯音楽プレーヤーの欠陥にあるとして、携帯音楽プレーヤー輸入会社に対し、製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めた事案。 本件音楽プレーヤーのバッテリーには過熱を起こすという通常有すべき安全性を欠いた製造物責任法上の欠陥があったものと認められ、同欠陥が原因で本件事故が発生し、本件音楽プレーヤーの使用者が左手に2度の熱傷を負ったほか、本件音楽プレーヤー及び本件音楽プレーヤーが置いてあったデスクが焼損したものと認められる。
消化具破裂事件 消火器具機械製造販売会社(一審被告) 消火器具機械製造販売会社製造の消火具を購入し、賃借している居室に設置していた本件購入者が、本件消火具の破裂につき製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めたことにつき、請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案 (損害額のみ)
小型折りたたみ自転車前輪フレーム破断転倒事件 自転車等輸出入卸販売業者及び同社代表取締役 オークションで落札した小型折りたたみ自転車で走行中、同車の前輪フレームが突然折れて転倒したと主張する被害者が、同自転車を輸入し引き渡した自転車等輸出入卸販売業者に対しては、製造物責任法3条又は不法行為に基づき、同社の代表取締役に対しては、会社法429条1項に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①段差走行実験時に本件小型折りたたみ自転車の前方チューブ上端に変形が生じ樹脂製の前ホークが破損したことなどが認められるから、同自転車は通常有すべき安全性を欠く欠陥があったといえ、同欠陥は出荷当時既に存在したと推認される上、同自転車の説明書において、段差での使用につき使用者に破損の危険性を具体的に注意喚起していたとはいえず、また、段差での使用をしないよう注意喚起したからといって、本件事故時程度の段差で使用した場合に車体が破損するような強度しか有していなくてよいとはいえないから、本件業者は製造物責任法3条による賠償責任を負う。
②は判断せず。
③本件代表取締役は、本件業者の商品が違法に消費者の生命・身体・財産を侵害することがないよう商品の安全性をチェックする体制を構築・機能させる義務を怠り、代表取締役として本件小型折りたたみ自転車と同種商品の販売行為を継続させた結果、本件事故が生じたから、本件代表取締役には、故意又は重大な過失による義務懈怠が認められ、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
ヘリコプターエンジン出力停止墜落事件 国(一審原告) 自衛隊の対戦車ヘリコプターがホバリング中にエンジン出力を失って7.5mの高さから墜落し、機体下部等を損壊して乗員2名が重傷を負った事故につき、本件事故原因はエンジンの燃料制御装置内コンピュータ・アセンブリに組み込まれたN1ガバナー・サーボ・バルブ・アセンブリに装着されていたサファイアの脱落にあり、同エンジンにはサファイア脱落によるエンジン出力低下という欠陥があったなどとして、国が、同エンジンの製造業者であるヘリコプターエンジン製造業者に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件エンジンの欠陥を認めて請求を一部認容した第一審に対する控訴審の事案。 ①国は製造物責任法3条に基づく損害賠償請求の請求主体となり得る。
本件サファイアが脱落するに至る機序については、組み立て作業の際に、本件サファイアに亀裂が発生し、本件サファイアが脱落したというものである可能性が高いことは、当事者間に争いがない。「欠陥」の意義、法の趣旨が被害者保護にあることなどに照らし、本件における製造物がコンピュータ・アセンブリなどを組み込んだ複雑な構造を有する本件エンジンであることから判断すると、「欠陥」の存在についての主張、立証は、本件エンジンを適正な使用方法で使用していたにもかかわらず、通常予想できない事故が発生したことの主張、立証で足り、それ以上に本件エンジンの中の欠陥の部位やその態様等を特定した上で、事故が発生するに至った科学的機序まで主張立証すべき責任を負うものではないと解するのが相当である。本件事故機は、通常どおり飛行をしていたにもかかわらず、突如、本件エンジンが停止又はこれに近い状態になって落着したのであり、このような事故の発生は通常予想できないことに加え、本件エンジンが停止等するに至ったのは本件コンピュータ・アセンブリ内の本件サファイアの脱落が原因であると判明しており、「欠陥」部位や態様等も特定されているから、本件エンジンには欠陥があると認められる。
③最終製品製造業者である本件製造業者が製造物法4条2号の適用により免責される余地はなく、また、他の製造物の製造業者から設計指示がされたと認められない本件では、完成品である本件エンジンに同号を類推適用することもできない。
④重大損害の発生可能性がある製造物の責任を制限、排除する合意がされた場合、疑義を許さない明確な合意がされたはずであるのに本件では明確な条項はないことなどから、製造物責任法の適用を排除ないし制限する旨の合意は成立していない。
⑤本件特約により製造物責任法の適用を制限する合意が成立したとは認められない。
⑥民法636条の適用又は類推適用は認められない。
⑦契約当事者間であっても製造物責任法の定めた法の適用は受けられ、仮に本件当事者間で製造物責任を制限、排除する合意の効力が認められるとしても、公序良俗違反の可能性等から同合意の成立は認められない。
⑧本件事故機が民間ヘリでも普通に行う飛行動作をしている際にエンジンが停止状態となることなどにつき、国が危険を引き受けていたとは認められない。
⑨製造物責任保険に加入するかの判断は経営判断であり、国は製造物責任保険の加入を禁じたわけではないから、国の本件製造業者に対する請求は信義則違反として許されないとは解されない。
⑩過失相殺は認められない。

化粧水カビ等繁殖事件 化粧品製造会社 化粧品開発販売会社が、製造委託先である化粧品製造会社の製造した化粧水に大腸菌及び真菌(カビ等)が繁殖したなどとして、化粧品製造会社に対し、製造物責任法3条等に基づき、損害賠償を求めた事案。 ①2ないし10か月程度でカビ等が発生する商品は化粧水として通常有すべき安全性を欠いているとして、本件化粧水の「欠陥」を認めた。
②は判断せず。
③本件におけるカビ等の検出は、防腐力試験が未了であること又はコンクに菌反応が認められたことによるものとは認められないから、免責に係る両者間の覚書は適用されないとして、化粧品製造会社の免責を否定した。
肺がん治療薬死亡等事件(大阪) 不明
(被控訴人:肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(69歳)の妻及び子ら計4名(一審原告)、肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(77歳)の妻及び子ら計4名(一審原告)、肺がん抗がん剤投与後死亡した男性(48歳)の妻及び子の計2名(一審原告)、肺がん抗がん剤を服用した患者(一審原告)、肺がん抗がん剤輸入販売会社(一審被告)、国(一審被告))
非小細胞肺がん治療薬(抗がん剤)の投与後に間質性肺炎を発症して死亡した患者らの遺族ら及び間質性肺炎等を発症した患者本人が、同抗がん剤を輸入販売した会社に対しては製造物責任等に基づく損害賠償を求め、国に対しては、適切な規制権限の行使を怠ったとして国家賠償を求めたことにつき、本件抗がん剤の製造物責任法上の欠陥を認める一方、国の国家賠償法上の違法は認めなかった第一審、本件抗がん剤の製造物責任法上の欠陥及び国の責任を否定した控訴審に対する上告審の事案。  
シュレッダー破裂難聴など負傷事件 シュレッダーの破裂により右耳難聴の後遺症を負った男性(一審原告)、シュレッダー輸入販売会社(一審被告) 家庭用シュレッダーが破裂したために右耳難聴の後遺症を負ったとして、シュレッダーを使用していた一審原告が、本件シュレッダーを輸入販売していた一審被告に対し、製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件シュレッダーの欠陥を認めた第一審に対する控訴審の事案。  
ヘリコプターエンジン出力停止墜落事件 国(被控訴人(一審原告)) 陸上自衛隊所属の対戦車ヘリコプターの落着事故につき、国が、本件事故の原因はエンジンの欠陥にあるとして、エンジン製造業者に対し、製造物責任法に基づく損害賠償を求めたことにつき、本件エンジンの欠陥を認めて請求を一部認容した第一審、控訴を棄却した控訴審に対する上告審の事案。  
コンテナ船倉内化学物質発煙事件 化学物質製造業者(一審被告) 公海航行中のパナマ船籍コンテナ船の船倉内において、積荷の一部である化学物質が高熱を発し発煙する事故が発生し、海水の注入等によって船体及び積荷が損傷したため、本船の裸傭船会社、積荷の保険金を支払った保険会社ら18社、損傷貨物の荷受人である金属製機械メーカー又は損傷貨物の損害賠償請求権の譲受人である電送機器メーカーが、本件化学物質を製造した化学物質製造業者(本件製造業者)に対し、本件事故原因は、本件製造業者が本件化学物質につき適切な表示・警告をせず、危険性の内容・程度及び取扱上の注意事項等を周知徹底しなかったことにあるなどとして、製造物責任法3条又は民法709条、715条1項による損害賠償を求めたことにつき、各請求を棄却した第一審に対する控訴審の事案。 ①公海上で発生した本件事故に適用される準拠法は、条理により、本件と最も密接に関連する地の法を準拠法として選択することが相当であるとした上で、日本法を準拠法とした。
②原判決を引用し、本件事故の原因は、本件製造業者製造の本件化学物質が燃料油タンクからの熱を蓄積し、急激な自己加速分解反応を起こして極めて高温となり、本件化学物質の収納容器、本件コンテナ自体、同コンテナに近接する積荷の一部を損傷させ、発煙したことによると推認されるとした。
③本件製造業者は、本件化学物質が他人の財産等を侵害する可能性、危険性を予見できた上、本件化学物質の取扱上の注意事項を最もよく知る者として注意事項についての表示及び警告を尽くすべき責務を怠って本件事故を発生させ、また、本件化学物質についてした表示・警告は買主の過失を招く蓋然性が高いものといえるから、製造物責任を負うとした。
④積荷の保険金を支払った保険会社ら、損傷貨物の損害賠償請求権の譲受人である電送機器メーカー、損傷貨物の荷受人である金属製機械メーカー、本船の裸傭船会社は、それぞれ損害賠償請求権を取得したと認められるとした。
⑤製造物責任に失火責任法は適用されないとした。
⑥準拠法は日本法であるから、パナマ共和国法による消滅時効に係る本件製造業者の主張は採用できないとした。
⑦海難事故により共同海損が発生した場合、被害者は、損害賠償請求権を行使するか、又は、共同海損分担金請求権を行使するかを任意に選択できるなどとして、損益相殺に係る本件製造業者の主張を否定した。
⑧本件事故の直接の原因が、本船の裸傭船会社が創出した異常な船倉内の環境にあるとはいえないから、同社には本件事故に対する寄与も過失責任も認められず、また、買主と本件製造業者が負う債務の関係は不真正連帯債務であるから、買主と本件製造業者の本件事故に対する寄与度に応じた賠償額の限定はできないとして、寄与度減責及び過失相殺に係る本件製造業者の主張を否定した。
手すり破損事件 不明
(一審被告:手すり輸入販売会社)
手すりのブラケットが破損して転倒する事故が起きたとして、手すりを購入し使用していた者が、同手すりの輸入販売会社に対し、製造物責任法3条に基づき損害賠償を求めたことにつき、本件手すりの欠陥を認めるなどした第一審に対する控訴審の事案。  
塩蔵マッシュルーム異臭発生事件 食品等の原料輸入販売業者 中国法人が製造し、食品等の原料輸入販売業者(本件輸入業者)が輸入して訴外会社に販売した塩蔵マッシュルーム中に2、4-ジクロロフェノール等が混入していたため、同塩蔵マッシュルームを原料にマッシュルームスライス等の製品を製造した訴外会社が製品回収をするなどしたことにつき、同社との間で生産物品質保険契約及び事業総合賠償責任保険契約を締結し各保険契約に基づく保険金を支払った脱退保険会社が、訴外会社の本件輸入業者に対する債務不履行、不法行為又は製造物責任に基づく損害賠償請求権を保険代位したとして、本件輸入業者に対し、求償を求め、訴訟係属中に脱退保険会社から保険事業等の譲渡を受けた参加人保険会社が、独立当事者参加した事案。 ①原因調査結果などの認定事実によれば、本件輸入業者が輸入した塩蔵マッシュルームにはフェノールが付着しており、これが本件製品の異臭の原因であったと認められる。
②本件輸入業者はフェノールの付着した塩蔵マッシュルームを販売し、フェノールは臭気の発生原因たるクロロフェノール類の前駆物質と認められ、また、輸入された塩蔵マッシュルームを使用して製造した製品から異臭が発生したことに照らすと、本件輸入業者が販売した塩蔵マッシュルームは、一般的な製造工程で発見除去できない不適切な成分であるフェノールを含有した不適切な食品原料といえるから、本件輸入業者には食品原料として適切でない瑕疵のある塩蔵マッシュルームを販売した債務不履行が認められる。
③本件輸入業者は、食品原料等の輸入販売業者として行うべき安全性確認を実施していたといえることなどによれば、本件輸入業者が本件中国法人製造の塩蔵マッシュルームの栽培産地まで実地調査していないとしても品質管理等について注意義務違反があったとはいえず、通常期待されるべき同注意義務を果たしていたといえるから、同社に帰責事由はなく、債務不履行に基づく請求は理由がない。
④本件塩蔵マッシュルームを原料に使用した食品に異臭を生じさせるような商品は、商品価値が全くないといえる上、異臭を発生させるに足りる分量のクロロフェノール類が付着した食品には人体に対する十分な安全性が担保されているとはいえないから、異臭の発生原因であるクロロフェノール類を生成する前駆物質であるフェノール類が付着した本件中国法人製造の塩蔵マッシュルームには、人体に対する十分な安全性が欠けていたといえ、製造物責任法3条の「欠陥」が認められる。
⑤は判断せず。
電気式床暖房製品出火事件 電気式床暖房製品製造業者 建築工事請負業者が建物新築工事を行い建物を完成させ引き渡した後、建物に設置されていた電気式床暖房製品から火災が発生したとして、電気式床暖房製品製造業者に対して改修費用を負担する旨の合意及び建物所有者の電気式床暖房製品製造業者に対する製造物責任法に基づく損害賠償請求権の弁済による代位等に基づき、改修費用等の支払いを求めた事案。 ①本件製品から炎が上がったこと、火災の調査にあたった製品評価技術基盤機構の担当者は製品の設計不良と判断していること、本件製品と同型の製品から同種の事故が多数発生し、その多くが製品不良と認定されていることから、本件製品には通常有すべき安全性が欠けていて欠陥があり、欠陥から火災が生じたと認めるのが相当である。
②建築工事請負業者と電気式床暖房製品製造業者との間では、火災が本件製品に起因する場合は電気式床暖房製品製造業者が改修費用を負担する合意が成立していると認められる。製品施工時の施工不良は認められず、電気式床暖房製品製造業者は全額を支払う義務がある。
エアバッグ起爆聴力低下事件 本件車両の輸入業者としての地位等を承継した会社 駐車場に停車した本件車両を発進しようとしてエンジンキーを回したところ、外部からの衝撃がなかったのに、運転席フロントエアバッグが突然起爆した事故により音響外傷を負い、両側感音難聴の傷害が発生し聴力が低下したとして、受傷者らが、本件車両の輸入業者の地位を承継した会社に対して製造物責任法3条に基づき損害賠償を求め(甲事件)、また、損害保険会社が、本件受傷者との保険契約に基づき保険金を支払ったことにより、同人の損害賠償請求権を本件保険金の金額を限度として代位取得したとして、同金額の支払を求めた(乙事件)事案。 エアバッグの誤作動による起爆の危険性に関する警告はされておらず、取扱説明書にもそのような危険性の記載はないこと、エアバッグ警告灯点灯の原因としては、通電用端子の接触不良の可能性があると説明されたことから、受傷者らがすぐに整備依頼をしなかったことは、通常想定し難い異常な行動とまでは認め難い。受傷者らが車両整備を怠ったことと損害発生の因果関係を肯定することは困難であること、また、本件事故原因の特定の困難性に鑑みると、本件車両の整備を怠ったことを損害賠償の額を決めるにあたって斟酌することは、本件会社との関係でみると、公平とはいえない。以上によれば、受傷者らの過失を斟酌して過失相殺することは相当ではない。
②本件事故直後から急激に本件受傷者の平均聴力レベルが低下しそのまま固定化していることは、本件事故による音響外傷によるものとして合理的な説明が可能であるので、両側感音難聴の傷害発生やそれによる聴力低下の程度に対して、本件受傷者の従前の聴力の低さが寄与したとまでは認め難く、損害算定について素因減額をすることは相当ではない。

アスベスト粉じん曝露石綿関連疾患罹患大阪事件 国及び石綿含有建材を製造、販売した企業ら 建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露したことにより石綿関連疾患に罹患した者又はその相続人らが、国に対して、建築作業従事者の石綿粉じん曝露による生命、健康の侵害を防止するための規制権限の不行使は違法であるなどと主張して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、石綿含有建材を製造、販売等した企業らに対して、石綿含有建材を製造販売し流通に置いた行為は共同不法行為に当たるとして民法719条1項に基づく損害賠償を、また、それらの企業のうち平成7年7月1日以降に石綿含有建材を製造販売した企業(合計27社)に対しては、これらの企業が製造販売した石綿含有建材は通常有すべき安全性を欠いていたとして製造物責任法3条に基づく損害賠償を求めた事案。 ①国が、労働関係法令に基づき、昭和50年10月1日の特化則改正時以降、事業者に対し、労働者に防じんマスクの使用をさせることを罰則をもって義務付けるとともに、石綿関連疾患の具体的な記載及び石綿粉じん曝露作業時の防じんマスクの着用の必要性の記載を義務付ける規制権限を行使しなかったこと、また、平成7年時点において、クリソタイルの製造等を禁止する規制権限を行使しなかったことは、国賠法1条1項の適用上違法である。
②国が、建築現場において建築作業に従事する労災保険の特別加入者である一人親方等に対する呼吸用保護具の着用等の義務、並びに建築現場の元方責任者に対する前記義務を履行しない一人親方等の建築現場における就労を禁止する義務を罰則をもって定めることは、昭和40年改正労災保険法34条の14の委任の範囲を超えており、同条に基づく規制権限不行使の違法性は認められない。
③建基法の保護の対象は完成した建築物の所有者及びその周辺住民等であり、建築工事に従事する建築作業従事者の生命、健康及び財産を保護対象とするものと解されず、国が、建基法2条7号ないし9号に基づき、既に行った指定、認定の削除等の措置を行わなかったことの違法性は認められない。また、建築作業従事者が石綿粉じんに曝露し石綿関連疾患に罹患することは、建基法90条の危害には含まれないと解されるため、それを防止する措置の技術的基準を定めることは同条2項の委任の範囲を超えるものであって、国の同項に基づく規制権限の不行使の違法性は認められない。
④本件石綿含有建材製造販売企業間には、加害行為の一体性を認めることはできず、他に強い関連共同性を認めるに足りる事情も認められない。また、共同行為者のうちの誰かの行為によって全部の結果が惹起されていることについても、複数の行為者の行為それぞれが、結果発生を惹起するおそれのある権利侵害行為に参加していることに加えて、因果関係を推定し得る加害行為者の範囲が特定され、それ以外に加害行為者となり得る者は存在しないことについても、主張立証されていない。よって、民法719条1項前段及び後段の適用ないし類推適用は認められず、本件企業らの不法行為責任は認められない。
⑤平成7年7月1日以降に石綿含有建材を製造販売した企業らが製造販売した石綿含有建材が各被災者に到達したことは主張立証されておらず、製造物の欠陥と各被災者の権利侵害との間の因果関係を認めるに足りる証拠はない。また、本件においては、民法719条1項前段及び後段の適用ないし類推適用は認められないことから、本件企業らの製造物責任は認められない。
⑥昭和50年特化則施行時以降の安衛法に基づく規制権限不行使及び平成7年時点のクリソタイルを含む石綿の製造等を禁止する規制権限の不行使は、国賠法1条1項の適用上違法であるから、国は、昭和50年10月1日以降に建築現場において石綿粉じん曝露作業又は建築作業に従事し、石綿粉じんに直接又は間接的に曝露した労働者に対して、国賠法1条1項に基づく責任を負う。