旅館賠償保険の解説

 

旅館・旅館宿泊者賠償責任保険

 

1.この保険の契約対象

 旅館業を営む旅館業者、ホテル業者を対象とします。

 

2.被保険者

 被保険者は、旅館・ホテルの宿泊客です。

 

3.この保険の内容

 この保険は、旅館営業に関し、被保険者が所有、使用、管理する施設(注)、または施設における旅館業務の遂行により、宿泊者を含む第三者の身体・生命を害し、または財物を損壊したことにより負担する賠償損害を総的に補償する保険です。

 

(注)「旅館営業に関し、被保険者が所有、使用、管理する施設」とは、旅館が通常備えている施設(宿泊棟、レストラン、厨房、浴場、庭園など)のほか客専用のプール、ボウリング場といった小規模遊園施設を含みます。一般公開のプール、ボウリング場、大遊園地、ゴルフ場等は、同一施設内にあっても対象となりません。旅館が通常備えている施設かどうか判断がつかないものについては事前に保険契約上明確にしておく必要があります。対象外となる施設については、別途、施設・生産物・受託者賠償責任保険で引受けを行います。

 

 

 

4.保険金を支払う損害

 1).施設賠償保険

 旅館施設(エレベーター・エスカレーターを含みます。)の管理および旅館業務の遂行に起因して第三者の身体・生命を害しまたは財物を損壊したことにより負担する賠償損害に対して保険金を支払います。

 

(注)旅館施設の漏水事故も対象です。

 〇 ホテルの火災によって、宿泊客が負傷した。

 〇 客室の手すりが腐食していたため、よりかかった宿泊客が転落、負傷した。

 〇 ホテルのボーイがエレベーターの操作を誤り、宿泊客が扉にはさまれ負傷した。

 

2).生産物危険

旅館施設において販売または提供した飲食物もしくは商品に起因して被保険者の手を離れた後に発生した事故によって第三者の身体・生命を害しまたは財物を損壊したことにより被保険者が負担する賠償損害に対して保険金を支払います。

 〇 夕食に出した料理が腐っていて、それを食べた宿泊客が食中毒になった。

 〇 ホテルの結婚式場で、料理を食べた出席者が食中毒になった。

 〇 ホテルの土産物コーナーで販売した土産物を食べた人が食中毒になった。

 

3).受託物危険

 ① 顧客からの受託物の滅失・き損・汚損・紛失・盗取および顧客の携帯品の紛失・盗取に起因する賠償損害に対して保険金を支払います。

 〇 ホテルのクロークで預った宿泊客の携帯品を盗まれた。

 〇 客室ロックが破損していたため、宿泊客が喫茶室でお茶を飲んでいる間に賊が侵入し、客室内の荷物を盗まれた。

 〇 旅館で預った宿泊客の履物を紛失した。(現金、貴金属は金額、保証書などで確認したものに限られます。)

 〇 客室内設備の金庫内に入れていた宿泊客の時計が盗まれた。(ホテル内の盗難は除きます。日本旅館の場合戸締りの状態によります。但し被害者の盗難等の証明が必要です。)

注)旅館の駐車場施設に駐車中の顧客の車は受託物に含みます(車内の財物は対象外)が、支払限度額が低く設定されていますので、別途自動車管理者賠償責任保険を付保した方がよいと思われます。

 

② 顧客の携帯品については次の事故に起因する賠償損害のみが支払いの対象となります()

○ 施設内における客の財物の盗難

○イ客室内、浴場内の更衣所または洗面所内における客の財物の紛失

(注)これは、旅館・ホテル業者は、顧客がとくに預けた物でなくても顧客の携帯品が旅館側の過失によって盗取された場合には、商法第594条により損害賠償責任が発生するため設けられた規定です。

 

③1事故の定義について(旅館特別約款第11条(2))

事故が、時間および場所を異にして発生した場合であっても、同一の原因から生じた一連の事故は、1事故とします。ただし、盗取の場合は、同一犯人によるものであっても、異なる時期または異なる客室で発生したときは別個の事故として取扱います。

 

5.保険金を支払わない損害

普通保険約款で定める免責、施設、生産物、受託者、エレベーター・エスカレーターの各特別約款で定める免責と基本的に同じですが、異なる部分もありますのでご注意ください(旅館特別約款第1章第2条、第2章第2条、第3章第3条、第4章第4条)。

 

(区 分 注 意 点)

(1) 施設危険施設、エレベーター・エスカレーターの各特別約款と同じです。

ただし、給排水管等からの漏水による財物の水漏れ損害は支払いの対象となります。

(2) 生産物危険 生産物特別約款と同じです。

ただし、旅館営業とは無関係な、たとえば宿泊客または旅館施設利用客以外の者に販売または提供した仕出し弁当等による賠償損害は、免責となります。

(3) 受託物危険 受託者特別約款と同じです。

ただし、受託自動車の車内にある物に対する損害、自動車の使用不能損害を免責としています。

(4) 上記(1)(3)共通次の場合は、免責とします(普通保険約款と同じです。)。

・身体の障害を被った者の労働能力の喪失または減少によって、被害者の所属する企業、その他の団体の被った損失に起因する賠償損害例えば、社員旅行において、ホテルで提供された食事が原因となり、社員が集団食中毒にかかり会社を休んだ場合、そのために会社の被った営業上の損害など

 

7.旅館宿泊者特別約款

保険金を支払う損害

被保険者(=旅館宿泊者)が宿泊の目的をもって旅館に到着した時から退出するまでの間に、被保険者が負担する次の賠償損害に対して保険金を支払います。

旅館敷地内における他人の身体障害または財物損壊について負担する法律上の損害賠償責任

宿泊客が、浴室のお湯を出し放しにして外出したところ、水があふれ階下天井を汚損した。

階段を降りる際、他の宿泊客を突き飛ばしケガをさせた。

旅館敷地内において、被保険者が使用または管理する財物のうち旅館が所有もしくは管理する財物の損壊について負担する法律上の損害賠償責任

宿泊客の子供が、親のいない間に壁に落書をした。

イ.傷害担保特約(原則として付帯します。)

被保険者が宿泊の目的で旅館・ホテルに到着した時から退出するまでの間に、旅館敷地内において、急激かつ偶然な外来の事故によって被った身体傷害に対して、この特約に従い保険金(死亡保険金および医療保険金をいいます。)を支払います。

 

() 死亡保険金

事故の日から180日以内に死亡したときは、保険証券に記載された1名の保険金額の全額

 

() 医療保険金

事故の日から180日を限度として平常の生活または業務に従事することができる程度になおった日までの治療日数に対し、1名につき1日あたり、保険金額の2,000分の1。ただし、生活機能もしくは業務能力の滅失または減少をきたし、かつ、医師の治療を要した場合に限ります。

 

(注1)傷害には、身体外部から有毒ガスまたは有毒物質を偶然かつ一時に吸入、吸収または摂取したときに急激に生ずる中毒症状(継続的に吸入、吸収または摂取した結果生ずる中毒症状を除きます。)を含みます。ただし、細菌性食中毒は含みません。

 

(注2)死亡保険金および医療保険金を対象とし、後遺障害保険金は支払対象とはなりません。

 

(注3)1被保険者に支払う保険金の額は、1名の保険金額を限度とし、1回の事故について、1名の保険金額を旅館の収容人員(定員)数に乗じて算出した金額(1事故保険金額)を限度に保険金を支払います。ただし、被保険者1名ごとの保険金の合計額が1事故保険金額を超えるときは、被保険者1名ごとの保険金の額の前記合計額に対する割合を1事故保険金額に乗じて、被保険者1名ごとに支払う保険金の額を決定します。

 

ウ.構外傷害担保特約(任意付帯とします。)

この特約を、傷害担保特約に付帯することにより、被保険者が宿泊の目的をもって保険証券記載の旅館・ホテルに到着した時から退出するまでの間に、旅館敷地外において、急激かつ偶然な外来の事故により被った身体傷害に対して保険金を支払います。

 

(注)死亡保険金および医療保険金を対象とし、後遺障害保険金は支払対象とはなりません。

 

エ.救急費用担保特約(原則として付帯します。)

被保険者が宿泊の目的で旅館・ホテルに到着した時から退出するまでの間に、旅館・ホテル構内で、傷害を被ったり、疾病にかかり緊急治療および入院を必要とするときの次の費用を支払います。

○ア 病院その他医療施設への緊急搬送費用

○イ 病院その他医療施設での応急手当費用

○ウ 入院加療費用

○エ 入院できない場合に旅館で受けた医師の応急治療費用(医師の診断による治療のための延長宿泊料を含みます。)

ただし、旅館・ホテルが損害賠償責任を負担する場合は、救急費用を支払うことができません(旅館特別約款の対象となります。)

 

注)疾病には、妊娠、出産および流産は含みません。

 

保 険 金 を 支 払 わ な い 損 害:損害賠償責任(旅館宿泊者特別約款第4条)

(1) 被保険者(=旅館宿泊者)の暴行・殴打・心神喪失に起因する損害賠償責任

(2) 被保険者の暴行・殴打に起因する損害賠償責任 

(3) 貨紙幣・有価証券・宝石・貴金属・美術品・骨董品・動物等の損壊による賠償責任損害

(4) 被保険者の職務遂行に直接起因する損害賠償責任

(5) 車両(人力によるものを除きます。)

 

火器の所有・使用・管理に起因する損害賠償責任傷害( 傷害担保特約第2・第3条、構外傷害担保特約第2条)

 (1) 保険契約者・被保険者・保険金を受け取るべき者の故意または重大な過失

(2) 被保険者の自殺行為・犯罪行為または闘争行為

(3) 被保険者が法令に定められた運転資格を持たないで、またはアルコール、麻薬、大麻、あへん、覚せい剤、シンナー等の影響により正常な運転ができないおそれがある状態で自動車または原動機付自転車を運転している間に生じた事故

(4) 被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失

(5) 被保険者の妊娠、出産、早産または流産

(6) 被保険者に対する外科的手術その他の医療処置

(7) 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動、労働争議または騒擾

(8) 地震、噴火、洪水または地震もしくは噴火による津波

(9) 核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性その他有害な特性またはこれらの特性による事故

(10)被保険者が頸部症候群(いわゆる「むちうち症」をいいます。)、

腰痛その他の症状を訴えている場合であっても、それを裏付けるに足りる医学的他覚所見のないもの

 (11)被保険者が危険な運動等(注)を行っている間に生じた事故

(12)構外傷害担保特約では、就業中に被った事故

 

保 険 金 を 支 払 わ な い 損 害:救急費用(救急費用担保・特約第2条)

(1) 保険契約者・被保険者・保険金を受け取るべき者の故意または重大な過失

(2) 被保険者の自殺行為・犯罪行為または闘争行為

(3) 被保険者が法令に定められた運転資格を持たないで、または酒に酔って正常な運転ができない恐れがある状態で自動車または原動機付自転車を運転している間に生じた事故

(4) 被保険者の脳疾患、心神喪失または酒酔い

(5) 戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変または暴動、騒擾または労働争議

(6) 地震、噴火、洪水または地震もしくは噴火による津波

(7) 核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性、爆発性その他有害な特性の作用またはこれらの特性に起因する事故

(8) 被保険者が危険な運動等(注)を行っている間に生じた事故

(9) 被保険者が頸部症候群(いわゆる「むちうち症」をいいます。)、

腰痛その他の症状を訴えている場合であっても、それを裏付けるに足りる医学的他覚所見のないもの

 

(注)山岳登はん、リュージュ、ボブスレー、グライダー操縦、スカイダイビング、スキューバダイビング、外洋におけるヨット操縦、パラセール搭乗、ハングライダー搭乗、飛行船搭乗、その他これらに類する危険な運動